学修時間を延ばすには(大学偏)(その2)

前稿の後半で触れた「ちゃんと課題は与えているのに学習時間が伸びないケース」では、点検してみるべきことが幾つかあります。その最たるものは、学生にとって「課題の達成可能性が担保されていたか」です。
課題を解決するのに必要な知識や理解、発想、あるいは参照手段への習熟などが授業の中で十分に整えられていなければ、課題に挑もうとしても、あるいは指示に応えようとしても、躓くばかりです。
課題に挑んでも「できない自分」を突き付けられるばかりでは、その内に心が折れて課題を放り出してしまうのも無理からぬところかと。これでは与えた課題量とそれに取り組んだ時間が比例しなくなります。
学生に与える課題を決めたら、それを達成できるだけの土台を教室内での指導で整えていく必要があるということです。

2014/08/20 公開の記事をアップデートしました。

❏ 課題の達成可能性を担保していたか?

授業は、学び始める時点で持っている力と、学び終えたときに身につけているべき力の差分を埋めるために学生に課す一連の活動であるはず。
後者は授業の到達目標にほかなりませんが、具体的には「授業を終えて学生が解を導くべき課題が求めている諸要件」と言い換えられます。
教科書に記載された事柄(=読めばわかること)と、課題の解決に求められる事柄との差分は、授業を通じて埋めなければなりません。

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学生が備える既得知識と教科書等で与えられる「赤い円」をはみ出す部分が、授業を終えて課題に挑む/次の授業の準備に取り組むことを学生に求める前に、先生方が埋めてあげなければならない部分になります。
学生が自力で調べて知識や理解を拡充すべき部分もあれば、学生同士で話し合う中などで膨らませるべき気づきや発想もあろうかと思います。
すべてを「先生の説明/講義」でカバーしているようでは、学生の学習方策の獲得も進みませんし、協働で課題解決に取り組む場でのふるまい方(≒協働性)を高める機会も奪ってしまうことにもなりかねません。

❏ 授業を始める前に学生が備えているものを正しく把握

課題を解決するのに求められる力の獲得を、授業内外の学習活動を通して図ったとしても、もう一つの問題が残ります。
授業前に学生が実際に備えているもの(既得知識+学習方策)と、授業の起点として先生方が想定したものが一致しているかどうかです。
きちんと学生の反応を追っていれば、ズレが生じていてもすぐに気づいて修正できますが、一方通行の講義では反応を探る機会を失います。
私語なく真面目に聴いている様子だったのに肝心なことが伝わっていないことに愕然とするシーンは、こうした流れの中で生まれます。
対策は、授業開始に当たって、学生側でのレディネスを確認すること以外にありません。既習事項に関する「知識や理解」だけでなく、授業のテーマや課題そのものに対する問題意識、あるいはそのベースにある直接/間接の経験の有無も、合わせて確かめてみるべきものです。
ここでは、導入フェイズで行うプレディスカッションなどを通じた確認と補完が、有効な手段の一つになろうかと思います。

❏ 課題の読み合わせで、履行のための土台を整える

達成可能性を高め、せっかく与えた課題も、学生が手を付けてくれないことには意味をなしません。授業を終えるとき/学生を教室から送り出す前に「課題の読み合わせ」を行ってみるのも効果的です。
その日の授業で学んだことを使って解決するタイプの宿題を課すなら、教室の中で、宿題の読み合わせを行いながら、本時の学習内容の振り返りをさせましょう。
ポイントとなる箇所を辿り直してみたり、参照箇所の確認をしたりすることで、「こうやればいいのか」「できそうな気がする」と思わせることができれば、勝算と展望を得て履行への意欲も大きく向上します。
方針を立てて取り組む必要がある、やや高度な思考を求める課題なら、学生同士で話し合う時間を取り、発想を拡充させるのも効果的です。
次回への準備として指示をした事柄については、目指すべき「ゴール」の形を、答えを導くべき具体的な問いの形でイメージさせた上で、不明点が生じたときに参照すべき情報源などを確認させていきましょう。
参照すべき情報がインターネット上にあるなら、そのURLをプリントやスライドにQRコードなどで提示しておけば、学生はスマホを使ってその場で参照し、「なるほど、ここを参照すれば良いのか」と、教室を出た後にやるべきことに見通しを立てられます。
いざ課題に取り組もうとしても、躓いたときに手掛かりとすべきものがなければ「諦める」という選択肢しか残りません。教室を出る前のウォーミングアップには、そうしたリスクを抑制する効果も期待できます。
前段の「プレディスカッション」もそうですが、次に学生に取り組ませることが何を必要としているかを常に意識し、それらをしっかり整えさせていけるような「授業の流れ」を設計していくことが大切です。
その3に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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学ぶ理由/自立した学習者Excerpt: 1 学び続けられる生徒を育てる1.1 教室は、興味が生まれる瞬間を体験して学ばせる場 1.2 5教科7科目に挑ませることの意味 1.3 学び続けられる生徒を育てる 1.4 次に進んだときの学習をイメージ 2 生徒に考えさせる学習行動・授業規律2.1 指示を的確にこなす生徒~それだけで良いのか? 2.2 生徒に考えさせる授業規律 3 興味関心・学ぶことへの自分の理由3.1 学ぶことへの自分の理由 3.2 興味関心と自ら学ぶ姿勢とのギャップ 4 学習成果を実感させるために4.0...
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