学修時間を延ばすには(大学偏)(その3)

平均学習時間との間で有意な正の相関が確認される項目には、「わからないことがあったとき、自らその解消に努めているか」もあります。
確かに、わからないことがあって解消しなければならなければ、方々を調べてみたり、誰かに聞いてみたりしているうちに、自ずと一定の時間を学習活動に投じますので、両項目間に相関が生じるのも当然です。

2014/08/21 公開の記事をアップデートしました。

❏ まずは解消すべき不明の所在に気づかせる

まずは「わからないことがあったとき」という条件を満たさないことには、冒頭の質問項目への肯定的な回答は増えません。
先生が丁寧に説明してくれるおかげで、不明をひとつも残さずに学び終えることができたというのは、一見すると好ましいことのように思えますが、掘り下げたところには不明や疑問が残っているかも。
聞いたことを鵜呑みにして覚えるだけでは、学習者としても、研究者としてならなおさら、心許ないことこの上もありません。
まずは、学んだことを用いて答えを考えるべき問いを、先生方からきちんと投げ掛けることです。答えを考える中で、残されていた不明の所在にも気づくでしょうし、新たな興味も見つけていくはずです。
別稿「隠されているものは覗きたくなる」でも書いた通り、授業中に限らず、「問われて初めて不明の所在を知る」のはよくあること。
説明を尽くす/答えを示す前に、相手が考える機会を、問いを投げ掛けたり、課題を与えたりすることで確保しましょう。それが、授業外学習などの「個々に取り組む学習」に向かわせるきっかけになります。

❏ テストやレポートなどの「外圧」的アプローチは…

前々稿(その1)でも書いた通り、課題を与えるだけでは、学生一人ひとりの学習時間が伸びる保証はありません。
テストもないし、発表も控えていない、討論に参加したりする必要もない、という状況に比べれば、多少なりとも学習に向かう姿勢は見て取れるようになるでしょうが、あくまでも「外圧」に押されてのこと。
学期末のテストは、その直前になるまで外的動機づけとしては働きにくく、小テストも、平常点に組み入れられるとしても、テストが終わってしまえばそれまでです。その場での不明を放置し、何らのアクションも取らないとしても決定的なデメリットは生じません。
レポートも、適正な評価が伴わないとコピー&ペーストでその場をしのぐだけの学生も現れます。「不明の解消」という本来の目的が「義務の消化」にすり替わってしまえば、学ぶことへの自分の理由が生まれることもなく、学習者としての自立には近づけないように思います。
前述の通り、問いを投げ掛けることで、学生の疑問を刺激し、その解消に向けた内発的な動機を持たせる方が、好ましい結果に結びつきます。

❏ それぞれが考えたことを持ち寄る場を作る

先生方からの問い掛けにより、その所在に気づいた不明の解消に取り組んだ成果を、教室で発表したり、持ち寄って周囲と議論したりする場を持つことで、取り組みへの意欲をさらに高めることが可能です。

各自が調べてきたことを発表(+質疑応答や相互評価)

不明解消という行動も、そこで完結させてしまうより、「発表」という当座のゴールを据えてあげた方が、より意欲的な取り組みが期待できます。試合が予定されていないと、練習に身が入らないのと同じです。
頑張って調べても、何の評価もフィードバックも得られないのでは、つまらないでしょうし、高い評価を受ければ、その快体験は次に向けたモチベーションの原資にもなるはずです。
ルーブリックなどで評価基準を用意して、学生同士に相互評価をさせたり、発表内容についての質疑応答をさせたりするようにしたことで、授業外学習への取り組みが劇的に改善したという報告も耳にします。

調べてきたことを持ち寄って行うグループ協議

予め指定された課題図書などに目を通して、各自が調べてきたことをもとに、グループで討論させるのも、効果的です。
自分が調べたり、考えたりしたことが、チームのディスカッションに方向性やブレイクスルーを与えた瞬間を経験したら、次もまた頑張ろうという気持ちになろうというものです。
課題解決に多くの人間が関わるほど、得られる達成感も大きくなる傾向があり、学習の場にも集団達成という概念を持ちこむのは効果的です。
周りが皆、それぞれに頑張って準備してきているのに、自分だけ何もせずに教室に来てしまい、傍観者でしかいられない時間を過ごすのは結構キツイはず。周囲の視線も刺さります。
たとえ、その場での活動が評定に組み込まれる「評価」の対象になっていなかったとしても、同じ轍は踏めないと思うのではないでしょうか。
また、調べてくる箇所を分けて、それぞれに担当を割り振るのも一つの手です。自分がサボれば、チームの足を引っ張ってしまいます。

何の支援もせずに、「各自で頑張れ」では、課題が手に余る学生は追い込まれてしまいますので、調べるべき資料をきちんと整えてあげたり、参照すべき情報の所在を示したりしておくことはマストです。
先生方の配慮によって、課題の達成可能性はある程度まで担保できますし、学生同士でも話し合ったり、知恵を出し合ったりするはず。そうした工夫の中で学生が学んでいくものも小さくないと思います。
その4に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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学ぶ理由/自立した学習者Excerpt: 1 学び続けられる生徒を育てる1.1 教室は、興味が生まれる瞬間を体験して学ばせる場 1.2 5教科7科目に挑ませることの意味 1.3 学び続けられる生徒を育てる 1.4 次に進んだときの学習をイメージ 2 生徒に考えさせる学習行動・授業規律2.1 指示を的確にこなす生徒~それだけで良いのか? 2.2 生徒に考えさせる授業規律 3 興味関心・学ぶことへの自分の理由3.1 学ぶことへの自分の理由 3.2 興味関心と自ら学ぶ姿勢とのギャップ 4 学習成果を実感させるために4.0...
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