学びを軸にICT活用を考える#INDEX

ICTの導入が進む中、利用法にも各地で様々な工夫が重ねられ、新しい学ばせ方の可能性が次々と拓かれています。コロナ禍でのオンライン授業を機に、教室での対面授業でのICTの活用に大きく弾みがついたとのお話は方々でお聞きします。
ICTに限ったことではありませんが、すべての教具は「学習活動を膨らませる/充実させるため」に用いるもの。ICTの導入は、これまで余計なところに使っていたエネルギーを節約する「効率化」に寄与するのは言うまでもありませんが、主体的な学び、対話的な学びの実現にも従来の教具とは違ったアプローチを提供してくれるはずです。

2015/10/19 公開のシリーズをアップデートしました。

教科学習指導の中でのICTの使いどころは、発表/プレゼンのツールとしてだけではありません。主体的・対話的で深い学びの実現を図ろうとするなら、「伝達」「調査」「対話」の各フェイズでもICTの強みを生かした活用をしっかりと考える必要があります。

伝達生徒が課題に取り組むための前提となることがらを、効率良く伝えて、知識・理解を形成するフェイズ
調査課題の解決に必要な情報を、その信ぴょう性を確かめたり、矛盾に対処したりしながら集めて、知に編むフェイズ
対話対話の相手を「目の前に今いる相手」以外にも拡張し、問いを交わすことで思考の深化と拡張を図るフェイズ

 

#01「伝達」 必要な知識を効率よく伝達する道具として

起点となるベースの板書はスライドで用意
定着するまで繰り返し言及する事柄もスライドで
作業の手順や注意点も、素早く提示、視野に固定
事後学習での参照機会を確保するためのひと手間

#02「調査」 情報を集めて、構造化し、知に編む力を養う

目的に沿った資料を探させ、情報スキルを養う
サポートデータを見つけさせる
反対意見や別のアプローチを探させる
生徒が辿り着く情報ソースに当たりをつけておく
情報ソースへの正しいアプローチも学ばせたい

#03「対話」 より密で豊かな対話を実現するためのツール

ICTで広がる、互いの成果に触れて得る学び
教室内でリアルタイムで進む学習活動の中でも
教室での教科学習指導以外にも活用の機会
一番大事な「自分との対話」にもICTを活用

新課程にマッチした「学ばせ方」を実現するには、従来の学習指導ではメインパートであった「伝達」はできるだけコンパクトにまとめ、調査や対話のボリュームを膨らませたいところ。言うまでもありませんが、伝達の効率化にICTの上手な活用は欠かせません。
ただし、スライドや板書案を作り込んでおくだけでは、対話的な学びを却って希薄にしてしまうリスクも抱えます。
必要な情報を自ら集め、知に編むプロセスに習熟させることは、与えられたことを覚えるだけの状態を脱し、学習者としての自立に向かわせるのにも必要です。21世紀型能力で「基礎力」の一つに位置づけられる情報スキルを鍛えられるのも、こうした場面を経験させる中です。
PISAが測定する「読解力」(質と信ぴょう性を評価する、矛盾を見つけて対処する)の獲得にも、こうした学習活動は不可欠です。
各単元の内容をより深く学ぶのに必要なことがらを、先生が不用意にすべてお膳立てしてしまうのは、生徒自身が「調査」を経験してその方法を学ぶ貴重な機会を奪ってしまうかもしれません。
また、思考力は解決すべき課題を前に発動し、対話による気づきの交換によって拡張しますが、その対話を「目の前で顔を突き合わせる相手」に限定しないで済むのも、ICTを活用する大きなメリットです。
■関連記事:

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  5. デジタル・トランスフォーメーションと教室での学び
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ICTを上手に使いこなし、意欲的な指導が試みられている授業もあれば、設備の上で全く同じ隣の教室では、従来通りの授業が行われていたりします。ある教室での使い方と他のクラスで見られた使い方を組み合わせれば、もっと大きな効果が得られるのにと感じることもあります。
新しい技術に飛びついて、使っていればそれで良し、というものではありませんが、使っていく中でこそ、面白い使い方やより効率的な利用法を見つけることもあるはず。優れた実践をシェアした上で、先生方の協働でさらに良いものを編み出していきたいところです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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