より良い教育活動の実現を目指すと、学校行事のあり方や指導計画にも毎年手を加えていくことになりますが、生徒募集活動を通じて入学前の生徒や保護者と交わした約束からも軸足を外さないようにしたいもの。
個々の指導の最適化を図ろうとする中で、上位にある学校の教育目的や各組織の指導目標との整合性には十分な注意が払われていると思いますが、それと同じように、生徒募集の段階で学校が生徒・保護者と交わした約束も違えてはならないものだと思います。
2018/02/28 に公開の記事を再アップデートしました。
❏ 生徒募集活動で謳った価値を実現する責任
特色ある教育活動を構成する様々な行事群を学校説明会で紹介したら、当然ながら生徒や保護者は、自分もその価値を存分に享受できると期待して入学してきます。
在校生による成果発表会を見て、「私もやってみたい」と思って学校を選んだのに、実際に入学してみたら、学校や学年の方針がコロッと変わっていて、別の行事に切り替えられていたらがっかりです。
行事そのものはあるにはあるけど、すっかり形骸化していて、先生方も指導に熱が入っていなかったとしても同じことです。
ある価値を打ち出して、それに対する期待をもって学校を選んでもらった以上、その期待に応える責任が学校にはあるはずです。
❏ 入学前に生徒が目にした広報資材に改めて目を通す
新2年生、新3年生に対する指導計画でも、その学年の生徒に学校を選んでもらうときに打ち出していた価値を、きちんと実現できるものになっているかの点検は必要だと思います。
新年度の指導計画を最終チェックするときには、当時の学校説明会で使用したスライドや配布した資料をもう一度取り出して、見直してみても良いのではないでしょうか。
生徒募集活動で謳ったことは、生徒・保護者と交わした約束であり、その有効期間は、入学してから卒業するまでの3ヵ年、6ヵ年です。
学年や分掌などの組織の長だけでなく、個々の授業を担当する教科教員も含めた、全教職員が「入学前の生徒と交わした約束」に十分な認識と理解を持つ必要があると考えます。
❏ 担当者が代わっても、きちんと引き継ぐべきもの
同じことは進級時についても言えます。前年度の指導で生徒に伝えてきたことは、たとえ担当者が変わっても「そんなことは知らん」というわけにはいかないはずです。
生徒に何を伝え、何を求めてきたかは、4月に着任した方も含めて指導に当たるすべての先生がきちんと知った上で、指導の一貫性を保つ必要があります。
年度の切り替わりには引き継ぎが行われますが、これまで重点的に指導してきたこと/生徒に強く求めてきたことが、何かの形できちんと明文化されているでしょうか。
主要な指導機会で生徒に伝えたこと、LHRの実施計画の中で目標にしてきたことなどをまとめた書面があれば、目線合わせにも使えますし、実際の指導がはじまった後も、必要に応じて参照することができます。
もちろん、前年度の指導の誤りはきちんと修正すべきであり、歪みを取り、立て直すべきところにはしっかり手を入れなければなりませんが、誤りや歪みがどこに生じていたかを知るにも、前年度の指導をきちんと把握・理解しておく必要があります。
❏ 価値を実現できるだけの準備が整っているか
別稿「新年度を迎えるに当たり~まとめページ(2024年度版)」では、これまでに時間をかけて練り上げてきた新しい指導計画を仕上げるときの注意点に触れた記事をリストアップしました。
いよいよ新学期を迎える今、最終チェックをしっかり行いましょう。
学校説明会や学校案内、ホームページ等で謳ってきた「改革」を実現するだけのリソースが、現場レベルできちんと整っているかも今のうちに見直しておけば、対策が後手に回るのを防げるはずです。
繰り返しになりますが、新たな年度の指導に臨むのは、これまで学校が謳ってきたこと/外に対して約束してきたことを、教職員全体で共有・再確認する機会を持ってからです。
新しい時代を見据えて、学校はこう変わります/新しい手法を採り入れますと宣言していたのに、もし教科担当者までそれが伝わっていなかったら、実際の授業を受けてみてがっかりするのは期待して学校を選んでくれた生徒や保護者ではないでしょうか。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一