年度初めに生徒に伝えたことに照らした指導の振り返り

年度末のこの時期を逃さずにやっておきたいことの一つに、「新年度を迎えるに当たって生徒に伝えたことが、どこまで生徒の行動や思考に根付いているか」の点検があります。
クラス担任/学年団として、教科担当者として、あるいは部活動の顧問として、1年前の年度初めに当たって生徒に伝えたことがあるはずですが、それらがどこまで生徒の中に形になって根付いたかは、この1年の指導が所期の成果をどこまで得たかを表します。

❏ 伝えた期待に生徒はどこまで答えてくれたか

4月の授業開きには、各科目の学び方などをクラスの生徒に話して聞かせたかと思いますが、3学期の授業でそれらはどこまで生徒の「習慣」になっていたでしょうか。
アタマではわかっていること、意識したときにはできること、意識せずとも自然に行動に発現することでは、根付きの度合いが違います。
クラス担任としても、生徒に期待するところを生活・学習・進路の各領域で伝えたはずですが、どこまで実現していたでしょうか。
もし、先生方が狙っていたところまで根付いていない/実現していないとしたら、…

  • 最初に伝えただけで、その後の繰り返しが足りなかった
  • 伝えた期待を基準とした観察と指導が十分でなかった
  • 伝えたことに照らした振り返りを徹底させなかった

といったところに先生方ご自身が省みるべき点があったのかもしれません。新しい年度の指導では同じ轍を踏まないようにしたいところです。
生徒の実情に照らして、要求/期待が高過ぎたということも「なくはない」かと思いますが、上記3つのどれかに当てはまるところがあれば、指導の改善で達成を図ることが先だと思います。

❏ 生徒自身にも振り返りをさせてみる

年度末を迎えている今、生徒自身にも「年度当初に示されたことを自分はどこまで実現できていたか」を振り返ってみてもらうのも好適です。
振り返った結果に基づき、春休み中に「新しい年度はどう行動するか」を考えれば、進級後にはより自律的な行動や思考を見せてくれるかも。
また、「生徒自身の1年前の決意」も思い出させ、それに照らした振り返りも求めたいところです。
三日坊主とは言わずとも、多忙な学校生活の中で忘れてしまっていたとしたら、成長の機会を逃していたことになるのではないでしょうか。
特に、この4月に最上級生となる現2年生には、しっかりと覚悟を決めて新しい年度を迎えさせたいところ。ここでの働きかけは大切です。

❏ 伝えておくべきことは他になかったか

年度末に「1年前に伝えたことがどこまで実現したか」を振り返ってみると、「これも1年前に伝えておくべきだったかも」と思える部分も出てくるはずです。
時間を巻き戻すことはできませんが、この反省を新年度の指導に活かさなければ、悔いで終わってしまい経年的な改善に繋がりません。
教科担当者として、クラス担任/学年団として1年前に伝えておくべきだったことはなかったか、この機に洗い出しておくことは大切です。
各教科/学年団の先生方が皆さんで、こうした「振り返り」を行い、それぞれの見立てを持ち寄ってみれば、新年度の授業開き/オリエンテーションで何を伝えるべきか、目線をより高いところで合わせることができるのではないでしょうか。

❏ 1年前に伝えたことを改めて書き出してみる

教科・学年で如上の振り返りを行うときは、1年前にどんなことを生徒に伝えたか、改めて書き出してリストにしてみるのが好適です。
書き出してみることで、忘れていたことも思い出しますし、それぞれを伝えたときの「指導に込めた思い」もよみがえります。
伝えた内容にはそれぞれの先生方がアレンジを加えた部分があるかもしれませんが、それらも一度持ち寄ってみると、新年度に伝えるべきことのリストをより良いものにアップデートできるはずです。
また、書き出して持ち寄り、改めて整えたリストに照らして、各授業/各クラスでどこまで指導の狙いが達成されたかを比べてみましょう。
同じような期待を同じように伝えたはずなのに、1年間の指導の成果に違いが生じているのはよくあること。
生じた違いの背景には、「どんな伝え方が効果的なのか」「伝えた後の継続的な指導をどう進めるべきか」といったノウハウが存在するはずであり、それらを共有することが、教科/学年全体の指導をより効果的なものにするのではないでしょうか。
ただでさえ多忙な年度末に、改めて集まり対面で話し合う時間は取りにくいでしょうが、コロナ禍で活用が定着したslackなどを使ってそうした場を設けておられるケースも見られます。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一