板書に残すもの(前編)

黒板に書き残されたものを分類してその割合を観察してみると、教え方の特徴が見えてくることがあります。発問や口頭説明を経て最終的に導かれた「答え」や「結論」だけがノートに残っていたり、書き終えた後に立ち戻る機会がまったくない事柄ばかりが書かれていたりするようなら、授業のデザインそのものを改める必要があるかもしれません。 本稿は2015/10/28に公開した記事を全面リライトしたものです。 ❏ 導き出さ…

到達目標に加えて取り組み方もしっかり提示

どの教科・科目でも学習の目標を生徒と共有しているかどうかは学びの成果を大きく左右します。授業の目的や取り組み方について十分に理解させてから学びの本題に入ることにより、生徒は、学力の向上や自分の進歩といった学びの成果をより確かに実感できるようになります。 ❏ 学習目標の明示は学びが成果を結ぶ大前提 下表は、学習効果のクラス別集計値を目的変数、目標理解の同集計値を説明変数においた回帰分析の結果です。 …

平成30年度全国学力・学習状況調査

昨日、国立教育政策研究所から「平成30年度全国学力・学習状況調査の結果」が発表されました。報告書(概要)を読んでみると、中学校の国語では、 目的に応じて文章を読む際などに、情報を整理して内容を的確に捉えることに課題がある。 文の成分の順序や照応、構成を考えて適切な文を書くことに課題がある。 中学校の数学では、 事象を数学的に解釈し,問題解決の方法を数学的に説明することに課題がある。 数学的な結果を…

選考基準は妥当だったのか~追跡調査に基づく検証

入学試験で志願者の合否を決めるときもあれば、指定校推薦の内部選考もありますし、それ以外にも大会などへの出場メンバーを決めるときや、成果発表会の代表者選考などもあり、学校には生徒の選考を行う機会はかなりの数に上ります。 もし選考基準が妥当なものでなければ、 機会を与えられるべき生徒が選考から漏れてしまう 意欲や資質に欠けるメンバーが含まれ、周囲に悪影響が及ぶ といった、様々な問題が生じることになりま…

英語の授業での学習目標

英語に限ったことではありませんが、学びを通じて目指すべき到達状態をしっかり認識させることは、学びの成果を実感させるためにとても重要なことです。4技能(聞く、話す、読む、書く)のバランスはもちろん大切ですが、ひとつの授業に沢山の活動を盛り込むだけでは、個々の活動の目的がはっきりしなくなり、結果的に生徒が学びの成果を実感しにくい状態を作ってしまいます。一つひとつの活動に明確な目標を持ち、その達成を生徒…

大学入学共通テストにおける問題作成の方向性から

先月の中旬に、大学入試センターから「大学入学共通テスト」における問題作成の方向性等と本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨についてとの発表がありました。 発表資料の冒頭には、 各教科・科目における問題のねらいや実施方法等については、これから11月に実施さ れる試行調査の分析・検証を経て、来年度初頭に正式に公表される予定(攻略) とありますが、現時点での検討状況は把握しておきたいものです。…

授業評価アンケートの集計が終わったら

生徒による授業評価アンケートは、授業改善に向けた課題形成とこれまでの改善行動の効果検証のために行うものですから、集計結果が良かったかどうかよりも、結果が出た後の個人/組織の行動の方が大切です。健康診断を受けて気になる数値があったのに生活改善をしないとエライことになるのと同じかもしれません。 ❏ 生徒は授業を受けて学力の向上を実感しているか 教科学習指導を評価し、妥当性を検証するときは、 成績の伸長…

"主体的・対話的で深い学び"の実現に向けて

主体的・対話的で深い学びをしっかりと根付かせるには、その実現に向けた取り組みの成果を検証する必要があります。様々な方法を試すのが可能性と選択肢を増やすことは間違いありませんが、目標は何かしっかり見定め、取り組みが生徒を目標に近づけているかを確かめないことには、あらぬ方向にさまようリスクを抱えます。先生方がそれぞれ最善と考える方法を試してみて、その成果を互いに比べてみることで、自校の生徒に最もよくマ…

探究活動を支える土台を築く

新学習指導要領への移行に向けて教育課程の見直しが進む中、探究活動をどうプログラムするかはとりわけ大きな課題です。どれほど意欲的にプログラムを設計しても、指導時間の限りもあって、各教科での学習や進路指導と関連付けなしには十分な効果は得られません。 探究型学習のプログラム作りを単体で進めていくのではなく、学校の教育活動全体を見直し、個々の指導場面の目標を達成することが他の教育活動の成果を高める土台とな…

どんな人材を育てようとしているのか

日々の教育活動の中で、常に意識に持ち続けるべきは、「どんな人材を育てようとしているのか」という問いだと思います。学校が教育目標として掲げ、入学してくる生徒たちに約束したことや、分掌、学年、教科という三つの立場での自分のミッションを自覚できていることが、個々の場面でもブレのない指導を実現するのではないでしょうか。どんな人材を育てるかという問いに答えるためには、生徒が生きていくのがどんな時代かの見極め…

散布図と残差から個々の生徒の課題を探る

別稿「入学試験での成績と定期考査のパフォーマンス」で触れた、入試結果と定期考査成績との相関を調べる方法、学び方の転換などに問題を抱える生徒を抽出する「残差」を導出する方法をご紹介します。 ❏ 計算式を設定しておけば、データを取り込むだけ 下図は、ある学校で実際に作成したものですが、12行目以降にクラス、出席番号、生徒氏名を、D列以降に得点が入力されています。入試成績と考査成績のデータシートから、V…

新課程への取組を伝える学校広報

高大接続改革に最初に挑む学年を迎え入れ、新しい学力観に沿った学ばせ方への転換が図られていますが、その次に控えるのは、本丸である新学習指導要領への移行です。2022年から始まる高校の新課程に学校としてどう対応するかを明確に示すことは、生徒募集戦略上の重要な課題です。新課程初年度生がすでに小学校6年生になっていることを考えると、まだ丸3年以上も先のこととのんびり構えているわけにはいきません。中高一貫校…

シンプルさと重ね塗りで、認知を高め、理解を得る

建学の精神や校是、校訓を現代的に読み直し、新たなグランドデザインを描き出しても、それが受験生や保護者の目と意識まで到達しなければ生徒募集の改善にはつながらず、せっかくの教育理念にも賛同や共感をしてくれる人が増えるわけではありません。伝えるものを作り上げたら、今度は伝え方を考える番です。たとえ作りかけの状態であっても、学校の意思を積極的に伝え、レスポンスを拾いながらより良いものを作っていくという発想…

個々の教育活動の位置づけを明確にして構造化

新学習指導要領のもとで学校がどのような教育活動を行うかを考えるときに忘れてはならないことは様々ですが、以下なども重要です。 ❏ 多様な教育活動はときに”ノイズ”としてふるまう 長年にわたって作り上げてきた学校ですから、生徒が過ごす3ヵ年には様々な教育機会が配列されています。その一つひとつが、担当する分掌、学年、教科といった教員組織の思いの詰まったものですし、様々な効果を上げ…

積み上げてきたものを振り返り、その先を描く

2022年に始まる高校の新課程に向けてグランドデザインを描き直すことは、新課程初年度生が中学受験に臨む本年度の重要課題のひとつです。全体構想が決定しなければ、細部の設計に入れません。たとえ魅力ある教育活動が豊富に配列されていたとしても、全体としてちぐはぐなものになれば「学校がどこに進もうとしているか」をわかりにくくし、限りある教育リソースの配分を間違うリスクも招きます。 ❏ 開校から積み上げてきた…

学校が目指すものをグランドデザインで提示する

過日の記事「現小6に示すべき、新課程を見据えた学校の戦略」に書いた通り、新学習指導要領への切り替えは現小6が中3になるときです。生徒募集を通じて入学前の生徒と交わした約束は、その生徒が卒業するまで有効な”契約”ですから、しっかり練り込んで実行可能性を担保した教育計画を作り上げておく必要があります。高等学校でも、2022年を見据えて学校がどんな態勢を取り、新しい時代の教育に転…

機械翻訳がここまで進歩すると…

連休中にスマホを新調したついでに、Google翻訳アプリをインストールしてみました。久しぶりに使ってみると、音声認識の性能も各段に改善されていますし、翻訳の精度も初期のバージョンとは雲泥の差です。 ❏ 英語を学ぶことに新たな意味と動機が必要かも もはや、生活レベルなら十分に実用的であり、英語学習に膨大な時間を投じるよりも、アプリの使い方を覚えた方が合理的という意見がでてきても不可解で…

現小6に示すべき、新課程を見据えた学校の戦略

中学校では平成33年4月に新学習指導要領への切り替えが全学年で一斉に行われ、平成34年度入学生からは年次進行で高校の学習指導要領も変わります。対象になる最初の学年は現小6生ですね。切り替わりは中学3年生を迎えたとき。ちなみに、現小5は中2から、現小4は小学校6年生から新課程で学ぶことになります。 今後の学習指導要領改訂スケジュール 文科省ホームページのPDFが開きます。 とういうことは、今年の生徒…

新テスト対応にも探究活動は土台となる

大学入学共通テストの導入に向けた試行調査では、その試行結果の報告において、「探究の過程等の設定を通じて、知識の理解の質を問う問題や思考力、判断力、表現力を発揮して解く問題を、各科目における全ての分野で重視した」とのこと。“探究の過程等の設定”(…行政文書らしい言い回し!)と言われても、具体的なイメージがわきにくいところですが、添え書きをみると、 などを設定すること(らしい)…

どこに進学させたかよりも、どんな人に育ったか

生徒一人ひとりについて、本人の資質や志向に見合った進路を見つけさせ、それを実現させることは高校の大切な役割ですが、進路先である大学や企業、専門学校にバトンタッチすれば役割を果たしたことになる、というわけではありません。高校は上級学校などに進むためのステップボードではなく、高校で身につけたもの自体が卒業していく生徒にとって大切なものだと思います。高校で身につけたものを土台にその先の学習や研究、活動が…