効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)

高大接続改革と次期学習指導要領への対応の中で様々な新しい教育活動が採り入れられていますが、これまで作り上げてきた教育活動に「足し算」していくだけでは、限りある教育リソースが枯渇するのは火を見るより明らかです。以前から行われていることや新しく取り入れてみたことは一つひとつきちんと効果測定を行い、効果のないもの/費用対効果に劣るものを取り止める「引き算」の発想も必要です。残すものと取り止めるものの選別…

業務の無駄を省く~現場レベルで可能なコストカット

先生方の多忙はもはや限度を超えており、業務の削減と効率化は先送りできない課題の一つです。多忙の原因には、制度改革を必要とする構造的なものと、現場レベルでの仕事の進め方しだいで解消を図りえるものとがあります。構造的な問題の改善を急がなければならないのは当然として、同時に、日々の教育活動に改善の余地がないかを洗い出し、ひとつひとつ片づけていきたいところです。制度改革で構造的な問題に解決の筋道がついても…

校種間連携で図る、授業改善と指導の最適設計

高大接続改革について耳目にする機会は多いですが、小中高の教育活動の異校種間接続についてはそれほどでもないように思います。生徒が小中高で学ぶ12年間にわたり、指導目標や学ばせ方などが連続性を以て段階的にきちんと配列されていることは、その間の教育活動の無駄や矛盾を取り除き、成果を最大化するための絶対要件です。学習指導要領の上で整合性のある学びが設計されていても、それぞれの校種の先生が現場での経験に照ら…

教科学習指導以外でも実現したい校種間連携

授業公開を機に行う小中校教員の意見交換、出前授業、考査問題やレポートの閲覧など、異校種間の連携を通じて授業の改善や指導計画の最適化を図る方法をご紹介してきましたが、もう一歩踏み込めるようなら検討してみたいのが、「考査問題の作成(=到達目標の設定)における協働」と「数年後の状態と照らした分析(コホート研究)」「総合的な学習/探究やキャリア教育の接続」です。いずれも、現場の先生の負荷が小さくありません…

下級学校の取り組みと成果を知る、参観以外の方法

校種間の学びを正しく接続するうえでの問題の一つは、下級学校が取り組んだ教育の成果を上級学校が正しく踏まえきれていないことにあるのではないかと思います。生徒が小中学校で体験してきた/達成してきたことを高校の先生方がこれまで以上に知る機会が必要と考えます。小中学校を訪ねて成果発表会や作品展示を見るたびに「こんなことまで出来るのか」と感心させられます。相互参観や研究協議、出前授業などを通して上級学校での…

異校種の生徒に教えてみることのメリット(出前授業)

授業改善を目的として小中高の校種間連携で行う取り組みには、授業公開+研究協議という形以外にも、別校種に出向いての「出前授業」というのもあります。小学生や中学生に現在の勉強の先にあるものを体験させ、学びへの意欲を高めるというのが本来の目的ですが、普段と違う校種の生徒に教える苦労の中に多くの気づきがあるものです。 2014/05/16 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 出前授業を請け負うことでの…

授業公開と研究協議~指導に込めた意図の共有

校種間での学びの接続に大きな効果が期待できる「異校種間の先生が協働で行う授業研究」ですが、高校にとっては自校の教育活動への理解者と共感者を地域に増やす絶好の機会にもなり得ます。生徒募集の改善のみにならず、目指す教育を実現する土台作りにも繋がる活動ですので、場の創出・提供には積極的に取り組みたいものです。新たに開催を企画するとなると準備段階での負荷も小さくありません。研究授業や教員による相互参観など…

隣の校種での授業を知るのは、学びの接続の大前提

異校種の授業を参観する機会はどのくらいあるでしょうか。育てている生徒が進学後にどんな学びに挑むのかを知ることや、迎え入れた生徒がどんな学びを経験してきたかを知ることは、どんな力を獲得させるべきか、何を前提に指導を設計すべきかの判断の際に欠かせないものです。学習指導要領がこれまでにない大きな変更を受けた以上、お隣の校種で何をしているかは、改めて確認しておく必要があろうかと思います。中高一貫校なら中学…

手段科目としての言語系教科の学びを活かす場

以前の記事でも書きましたが、英語は目的科目から手段科目へと立場を変えていくように思われます。ある程度の基礎(言語材料の理解)を身につけた段階では、他教科を学ぶ中で様々な内容の文章を読んだり、考えたことを表現したりする機会をどんどん作ることが、言語能力の向上を促すはずです。同じ言語系教科である国語も同様かもしれません。所謂「イマージョン・プログラム」(1960年代にカナダで始まった目的言語で他教科を…

学校の教育力を伝える新たなモノサシ

学校の裁量が拡大され、各地で特色ある教育活動が展開されるようになりました。単位制や総合学科は言うまでもなく、普通科でもコース制を取ったり、独自の教育プログラムを整備したりと様々な価値を打ち出そうとしています。それなのに、”外野”からは、やれ普通科は画一的だ、生徒の意欲が高まる内容になっていないといった批判が届きます。そうした批判をうち消せないでいることの背景には、各校が打ち…

先端研究で得られた知見を活かして授業改善

先週、「授業に集中してる? 生徒の脳、活動量をセンサーで計測」という記事を朝日新聞で見つけました。東京大学と横須賀の三浦学苑高校が協働で行なっている実証実験です。脳の司令塔と言われる前頭前野の活動量を調べるセンサーを生徒のおでこに付けて、授業中に生徒の脳がどれだけ活発に働いているかをリアルタイムに把握するとのことです。 ❏ 脳の活動量がリアルタイムに測定できることの恩恵 先生の話を聞いているとき、…

高校の普通科見直し議論に覚える違和感

記事に起こすタイミングを少々逸してしまいましたが、政府の教育再生実行会議が高校生の7割が通う普通科の改革を求めているそうで…。教育内容が画一的で生徒の意欲が高まる内容になっていない、との批判からスタートした議論のようですが、高校現場がこれまでに重ねてきた取り組みをきちんと理解した上での議論なのか大いに疑問を感じます。 ❏ そんなに早く、人のタイプを分けても良いの? 高校普通科を、重視…

補習・講習は、一つひとつの設置目的を明確に

五月の連休が終わると、夏休みに設置する補習や講習を一覧にまとめて生徒に伝える時期を迎えます。先生方の学校でも、新学期が始まると間もなく講座開設の準備に取り掛かることになるのではないでしょうか。生徒一人ひとりが抱える学習上の課題を解決する場として、内容や対象を明確にして、講座群を整備するとともに、各講座に用意された学びを必要とする生徒が確実に受講できるようにしたいものです。合理的に配置された講座群と…

シラバスを熟読・活用させることの効果

大学での授業評価アンケートの集計結果を分析したところ、「シラバスを熟読している学生ほど、科目の到達目標を達成できる見込みが高まると同時に、学習したことへの興味が膨らみ、発展的な内容を学ぶことへの意欲が向上する」という傾向が見て取れました。高校でのシラバスは、”講座選びのカタログ”としての大学シラバスとは性格が異なる面がありますので、同じことがそのまま当てはまるとは限りません…

学びにおけるインプット(input)とインテイク(intake)

新しい学力観に沿った学ばせ方の転換を図ろうとするとき、学びのプロセスを「インプット」と「インテイク」に分けてみると、様々な着想が得られたり、見落としていたものに気づきやすくなったりします。ともに知識や情報を外から内に入れることには変わりませんが、専ら外からの働きかけで行われる「入力」と、不明を見出したり、興味を持ったりしたときに、自ら求めて行う「取り込み」とは別のものです。 ❏ インプットとインテ…

間違え直しや再テストはどこまで成果をあげたか

年度末を迎えて、そろそろ来年度の授業の進め方を具体的にイメージし始める時期でしょうか。使用教材などは既に決まっていると思いますので、ここから先の検討は「それらをどう使うか」に絞られますが、その中でもちょっと立ち止まって考えてみたいことは、小テストの不合格者や定期考査の成績不振者への事後指導をどう行うかです。 ❏ 失敗を繰り返させないための指導の効果はどこまで? 副教材をベースに小テストを行いながら…

ゴールを決めて最短距離?#INDEX

社会の変化が加速する時代にあって、様々な研究者が予測していたことが現実に近づいていることを実感します。曰く、 2011年に米国の小学校に入学した子供の65%は大学卒業時に今はない職業に就くだろう。(ニューヨーク市立大学キャシー・デビットソン教授) 今後10~20年程度で、米国の総雇用者の47%の仕事が自動化される可能性が高い。(オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン教授) 将来の夢を早くから…

ゴールを決めて最短距離?(その2)

知らないことや経験したことのないことが山ほどあり、認知の網を十分に張れていない高校生に、脇見や寄り道をせずに「10年後、自分が何をやっているか」を考えてまっすぐゴールを目指せ、というのはあまりにも酷。選択肢を見せる前に正解を選べと言っているようなものです。前稿で繰り返し使った「偶然との出会い」を生徒が持てるよう、社会との関わりや、学ぶべきことの所在を探れる機会の整備こそ先決です。職業調べや学部・学…

ゴールを決めて最短距離?(その1)

将来なりたい仕事を見つけ、そのためにはどんな学部・学科で学ぶのが最善かを逆算して考えるという、広く行われてきた進路決定の方法は今後ますます難しくなるように思います。ゴールとして目指していた仕事が10年、20年先にも存続している保証はありません。ゴールだけを見つめてそこに到達する努力を続けたあげく、辿り着いてみたら目指していたものは既に価値を失い、存在しなくなっていることだって十分にあり得ます。最短…

非言語情報を言語化する(続き)

大学入学共通テストで求められる読解力は、これまで教室で養われてきたものとはちょっと違うものになりそうです。読み取りの対象は文章として提示された(言語化された)ものだけでなく、表やグラフで示されたデータ、図表でモデル化された考え方、風刺画などに描き出されたメッセージや思想などをどれだけ取り込めるかが問われます。読み取ったことをもとに考えるにも、そこで考えたことを第三者に伝えるべく表現するにも、非言語…