月: 2022年4月

探究型学習を使った進路指導 #INDEX

探究型学習を通して、深めてみたいと思える興味や、自ら関わりを持ちたいと思える社会の課題を見つけ、それを起点にして具体的な進路希望を作っていく生徒がいます。あるテーマを広く調べ、考察を深めていく中で、上級学校に進んで本格的に学んでみたいと思えることを見つける可能性は低くないはずです。別稿「カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ」にも書いた通り、職業をターゲットにして逆算的に作ったルートに乗…

社会が取り組む課題を軸にした学部・学科研究

この記事を最初に起こしたのは2014年の秋です。その直前、お誘いをいただいて、「都立高校生のための多摩地区国公立大学合同説明会」というイベントを参観する機会を得ました。土曜日の午後ということもあって、会場は300人を超える国公立大学を目指す都立高校生で熱気に溢れていたのを覚えています。各大学とも「志願者を増やす絶好のチャンス」とばかりに様々な趣向を凝らす中、東京農工大学のプレゼンは際立って興味深い…

探究型学習を使った進路指導(その5)

探究型学習を通じて自らの進路希望を作るに至ったA君が、本シリーズの冒頭で登場しましたが、同じプログラムを同じように経験しながら、自分のあり方・生き方と結びつくものを見つけられないまま活動を終える生徒だっています。安易にテーマを設定した、調べ学習を行うところで終わった、探究してみたことの先に広がる学問の世界を覗き見ることができなかったなど、様々な要因でゴール(課題解決に取り組む体験を通し、自己の生き…

探究型学習を使った進路指導(その4)

探究型学習に取り組む経験は、進路意識の形成にも大きな役割を果たします。その最初の難関である「探究テーマの設定」における指導の前半フェイズについて、考えるところをまとめたのが前稿です。テーマ選択を念頭におき、アンテナを高く張った状態で、様々な情報に当たらせて、日々気になったことを書き溜めていき、そのメモの整理・分類を経て、潜在的な興味と関心の所在を探らせるという手順です。しかしながら、メモの分類を終…

探究型学習を使った進路指導(その3)

探究型学習に取り組ませるとき、研究のテーマを決めさせるまでの「準備段階での指導」が大切であるというのが、前稿の主旨です。目指すところ(=課題の解決に取り組む体験を通して、自己の生き方・あり方を見出すこと)をしっかり伝えた上で、正しい準備の工程を踏ませなければ、テーマの候補を挙げさせたところで、ダメ出しをせざるを得なくなるケースもしばしばだと思います。せっかく考えたことを差し戻されては生徒も面白かろ…

探究型学習を使った進路指導(その2)

探究型学習に、これまで行われてきたキャリア教育の代替として十分な機能が期待できるのは、前稿で申し上げた通りですが、最初のフェイズである「探究のテーマ選び」の段階できちんとした指導を行わないと、探究活動と進路指導を一体のものとして運用できません。自分の生き方・あり方を見つけ出せるようなテーマを生徒一人ひとりが設定できてこそ、探究活動は進路意識を形成する機会になり得ます。前稿でご紹介した、探究活動が進…

探究型学習を使った進路指導(その1)

探究型学習を通して、興味を持てる学問・研究や社会の取り組みを見つけ、そこから具体的な進路希望を作っていく生徒がいます。テーマに沿って広く調べ、考察を深めていく中で、学んでみたいこと、研究してみたいことを見つける可能性は低くないはずです。別稿「カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ」にも書いた通り、職業をターゲットにして逆算的に作ったルートに乗せる指導に限界が見える中、キャリア教育を補完す…

探究活動の舞台としての地域連携

これまで(=新課程への移行前)に教育活動の一環として「地域連携」に力を入れてきた学校では、新たに始まる「総合的な探究の時間」でも引き続き「地域課題」に取り組ませることが多いかと思います。長きに亘り築いてきた地域との関係は大いに生かすべきであろうと思いますし、学校が教育目標として「地域課題に向き合える人材の育成」を掲げてきたのであれば、急に旗を降ろすわけにはいかないはずです。地域課題の解決を「ターゲ…

キャリアは選ぶものではなく重ねるもの

進学先や就職先を決めるのは、ここから先、自分がどの道を進んでいくのか(=進路)を選択することです。同時に2つ以上の道を歩くことはできませんから、他の選択肢に後ろ髪を引かれる思いがあっても一つを選ぶしかないのが通常です。この意味では「進路選択」というよく使われる言葉の成り立ちは十分に合理的なものだと思います。これとは対照的に、「キャリア」は選ぶものではなく、積み重ねるものです。ある時点で選択した道を…

教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計

中学に続き、高校も新課程に移行した今、これまでと同じように教えていては、学ばせること(学習内容)は減らさず、様々な能力(21世紀型能力でいうところの「基礎力、思考力、実践力」)をより高い次元で獲得させていくという要求には応えきれません。教室を離れた生徒が個人でできることと、教室でしかできないことの線引きをこれまで以上に明確にした上で、後者に重点をおいた授業デザインへの転換が求められます。 2020…

総合的な探究の時間

新課程への移行で、高校での「総合的な探究の時間」が本格的に始まります。先行実施も行われ、各地の学校で進められてきたプログラム開発や指導法研究は、小さからぬ成果を既に収めています。先行実施で得られた知見を活かして、プログラムのブラッシュアップを図るフェイズを迎えています。個々の先生方が工夫を凝らした実践から優れた成果を得た指導例を抽出し、それを共有した上で先生方の協働でさらに磨き上げていく体制の確立…

探究を軸に各教科の学びをつなぐ

各教科の学習を重ねる中で、生徒は様々な能力・資質を身につけていきます。教科固有の知識や技能、考え方を獲得しながら、「汎用スキル」 と呼ばれるものや「学習方策」 なども形成が進んでいくはずです。ある科目で獲得した思考様式もまた、当然ながら教科の枠を越えて様々な場面で利用されますが、それらを統合し、実戦的なものに高める機会として、総合的な探究の時間に期待されるものは小さくありません。総合的な探究の時間…

生徒募集を通じて入学前の生徒と交わした約束

より良い教育活動の実現を目指すと、学校行事のあり方や指導計画にも毎年手を加えていくことになりますが、生徒募集活動を通じて入学前の生徒や保護者と交わした約束からも軸足を外さないようにしたいもの。個々の指導の最適化を図ろうとする中で、上位にある学校の教育目的や各組織の指導目標との整合性には十分な注意が払われていると思いますが、それと同じように、生徒募集の段階で学校が生徒・保護者と交わした約束も違えては…

自ら学び続けられる生徒を育てる

科学の進歩や社会の変化で、新しい知識がどんどん生み出され、古いものは更新されていきます。学び続けていかなければ、正しい判断を重ねていく(=よりよく生きる)ことを、古い知識・常識が妨げます。卒業後にも自ら学び続けていけるように生徒を育てる/導くことは、各教科に固有の知識・技能を身につけさせたり、進路希望を実現させたりすることに劣らず、最優先して取り組むべきことだと思います。誰の周囲にも解決すべき問題…

主体的、対話的な深い学びへ~授業評価アンケート

高校でも新課程での指導が始まります。活動の配列/授業デザイン(=学ばせ方)のみならず、評価(=効果測定)の方法も、新しい学力観に沿ったものに切り替えていく必要があるのは言うまでもありません。既に十分な準備がなされているはずですが、新年度を迎えて、これまで準備してきたことを実際の教室で試して、想定通りにうまく機能するか点検をしながら、必要な修正を重ねていくフェイズに移りました。 新しい学力観の下での…

授業評価アンケートの分析に用いる様々な手法

授業評価アンケートでは、授業を受けた生徒が得ている学力向上の実感などを目的変数に様々な分析を行うことで、より良い授業の実現に向けて、どこから力を入れていくべきかを特定します。経年的にデータを追うことで、前回までの分析で特定された改善課題がどこまで解消されてきているかの「改善行動の成果検証」もまた忘れずに行うべきことがらの一つです。分析には様々な手法があり、状況に応じて使い分けますが、比較的良く用い…

一人一台端末を使ってアンケートを行うときの注意点

新型コロナ対応が拍車をかけ、一人一台端末の環境整備(外部リンク)が急速に進みました。教室でできることは大きく増え、コミュニケーション・ツールとしてのICTは大いに活用していきたいところです。新年度を迎えるにあたり、各地の学校での端末活用をお尋ねしてみたところ、意欲的な取り組みの数々が(新しい環境への多少の戸惑いとともに)見られます。今後、各校の実践に学べることが沢山ありそうです。学習(教科、進路、…