予習・復習、課題のあり方

学修時間を延ばすには(大学編)(その3)

平均学習時間との間で有意な正の相関が確認される項目には、「わからないことがあったとき、自らその解消に努めているか」もあります。確かに、わからないことがあって解消しなければならなければ、方々を調べてみたり、誰かに聞いてみたりしているうちに、自ずと一定の時間を学習活動に投じますので、両項目間に相関が生じるのも当然です。 2014/08/21 公開の記事をアップデートしました。 ❏ まずは解消すべき不明…

学修時間を延ばすには(大学編)(その2)

前稿の後半で触れた「ちゃんと課題は与えているのに学習時間が伸びないケース」では、点検してみるべきことが幾つかあります。その最たるものは、学生にとって「課題の達成可能性が担保されていたか」です。課題を解決するのに必要な知識や理解、発想、あるいは参照手段への習熟などが授業の中で十分に整えられていなければ、課題に挑もうとしても、あるいは指示に応えようとしても、躓くばかりです。課題に挑んでも「できない自分…

学修時間を延ばすには(大学編)(その1)

授業準備(予習)や、復習を含めた事後学習に投じる時間(所謂「授業外学習時間」)の十分な確保は、中高のみならず、大学でも長らく課題とされてきました。特に関心が高まったのは、平成24年に中央教育審議会が「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」という答申をまとめた頃でしょうか。学生による授業評価アンケートで授業1回あたりの平均学習時間を尋ねる項目を追加する大学も多く見られました。以来10年余…

家庭学習の質と量(深く確かな学びの実現のために)

生徒の家庭学習時間を定期的に調査している学校は少なくありません。中には、平均学習時間について数値で「指導目標」を設定している学校も見かけますが、学年平均を算出するだけだったり、データが指導の改善に有効活用されていないケースも散見されます。「学習時間調査」の目的と方法について、改めてきちんと考えてみる必要がありそうです。 ❏ 目標時間を達成したかどうかで成績などに違いはあるか 当然ながら、授業外の学…

予習・復習で何をさせるか~目的に応じたタスクの選定

予習は、授業準備を通じて前回までの授業で学ばせたことを実地に練習させる機会です。せっかく学び方や取り組み方を学ばせたのに生徒自身に行わせず、いつまでも先生が肩代わりしているようでは、生徒はその方法に習熟する機会を得られません。復習にも様々な目的がありますが、当然ながら、「忘れないように習ったことを繰り返す」ことだけがその目的ではありません。より広く視野を持ち、適切な指示と指導ができているか常に振り…

予復習のデザインに加えて、履行率を高める工夫を

前々稿、前稿で予習と復習でどんなタスクに取り組ませるかを考えましたが、もう一つ重要なことは「いかに履行率を高めるか」です。どんなに明確な目的をもって予復習のタスクをデザインしても、履行してくれないことには効果は得られず、却って様々な弊害を招きます。 2015/04/16 に公開した記事を再アップデートしました。 ❏ 小テスト頼みで予復習の履行率を上げようとしても 学習内容の定着機会として小テストを…

復習の目的と課すべきタスクの考え方

予習は「授業で学んだ方法を試して身につける場」と捉えて生徒に課すべきタスクを選択する必要がありますが、復習もまた、単に「習ったことを忘れないように反復する」というだけの場面ではないはずです。 といったところにも復習という活動の目的があります。 2015/04/15 に公開した記事をアップデートしました。 ❏ 習ったことを忘れないようにするには反復+活用 記憶は、記銘、保持、想起という3つの過程から…

予習の目的と課すべきタスクの考え方

新学期の授業開きで生徒に求めた予習や復習への取り組み方を、生徒はどのくらい身につけているでしょうか。また、その指示に従った生徒は学力と学習意欲を(期待通りに)向上させているでしょうか。ノートチェックや小テストで履行を促したところで、「取り組んだことの成果」を生徒が実感できなければ、教える側の思いを押し付けただけになってしまいます。 2015/04/14 に公開した記事を再アップデートしました。 ❏…

頑張りをきちんと評価する~学びの意欲向上のために

いつになく頑張った/上手く行ったと自分では思っていたときに、誰もそれと気づいてくれなかったり、評価してもらうどころか、あら探しやダメ出しをされたりでは、次に向けて頑張る気持ちも萎えそうです。褒めれば伸びるというものでもないと思いますが、正当な評価は生徒の自己肯定感を刺激し、同時に与えられる的確な助言は次の機会に向けた課題形成に繋がり、さらなる頑張りとその結果としてのより良いパフォーマンスを引き出し…

宿題を課すときに(再考)

先週末から、朝日新聞で「宿題が終わらない」と題する連載がありました。新課程への移行による学習観の変化や、一人一台の端末が普及したことなどで、新たなタイプの宿題が増えたことが、生徒一人ひとりの学びに様々な形で、好ましくない影響を及ぼしている様子が窺えます。 連載「宿題が終わらない」:朝日新聞デジタル (asahi.com) ❏ 新しい学力観に応じたタスクを加えるだけでは… 各単元の学習内容を学ぶこと…

過去問演習への取り組ませ方(指導計画への組み込み)

受験期に限らず、大学入試の過去問を授業内外の課題に採り入れることは、「今やっている勉強がどう問われるか/どんな場面に繋がるのか」を生徒に知らしめる効果的な方法です。学びに方向性を持てるようになるなど、生徒にとっても小さからぬメリットがあろうかと思います。しかしながら、大切なのは過去問の使い方、取り組ませ方です。単純に過去問演習を増やし、出題の形式に慣れさせ、解法を知っている問題を増やすだけでは、演…

年末に行わせる「4月からの学びの振り返り」

期末試験の時期を迎えました。答案返却日には、生徒はここまでの期間に重ねてきた学びの成果を、点数というひとつの指標に照らして確認することになります。考査が終わった解放感もあるでしょうが、ここできちんと振り返りをさせることが先の歩みを大きくさせます。思ったほど成績が振るわなかった生徒もいるでしょう。「まあ、仕方ないよね」と開き直られても一歩も前に進みませんし、悪い点数を前に落ち込んでいるだけでも同じで…

宿題をやってこない生徒への対応

宿題をやってこない生徒への対応に頭を悩ませている先生方は少なくないと思います。何の指導もしなければ、生徒の行動を改めさせることもできません。かといって、その場で叱ってみたところで貴重な授業時間を費やす割りに効果は限定的。クラスの空気が重たくなるだけかも…。こうしたジレンマを打ち破るカギは、宿題を、その日の授業を進める上で必要な準備として課したものと、それ以外の目的(既に学んだことの深化や知識の拡張…

教科間で行う、課題量の把握と調整 #INDEX

生徒にどのような授業外学習の課題(予習・復習、宿題など)を与えるかで、生徒の学び方が大きく変わります。教室での対面で行う学習活動でやることと、生徒が個々に取り組む学習活動でカバーすることの線引きを曖昧にしては新しい学力観が求める「学ばせ方」も実現しません。当然ながら、各教科の指導に当たる先生方は、生徒の学力を伸ばすために様々な課題を用意しますが、熱意が行き過ぎて、課題の総量が生徒のこなせる範囲を超…

教科間で行う、課題量の把握と調整(その3)

生徒が抱える課題の総量を適正範囲に収めるように調整するにしても、家庭学習にどのくらい時間を投じさせるべきなのか、合理的に導かれた目安値がないと、増やすか減らすかの判断もつきません。3年間あるいは6年間を見通した学習指導計画において「この時期にはこのくらいの時間を家庭学習に充てさせる」という目安をきちんとした根拠に基づいて決めたいところ。受験学年で単元進行と入試対策を並行することが多い理社に十分な時…

教科間で行う、課題量の把握と調整(その2)

教科間で調整を行いつつ、課題(予復習、宿題など)の総量を適切な範囲にキープするには、いくつかの数字を把握しておく必要があります。ひとつは「生徒一人ひとりが授業外の学習に充てている実際の時間」。一般的には「家庭学習時間」と呼ばれますが、放課後の自習室で勉強をする時間や通学の電車・バスで参考書を広げる時間なども含めるべきですので、呼称は「授業外学習時間」の方が適切かもしれません。これに加えて、各教科の…

教科間で行う、課題量の把握と調整(その1)

家庭学習にきちんと取り組ませるため、各教科が与える課題量を学年内で把握し、調整を図っている学校があります。こなしきれない量の課題(予習・復習、宿題)を生徒が抱えて履行率が下がる/仕上げが不十分になることがないように、逆に、やるべきことが見つからずに個々で取り組む学習活動が不十分になることがないように、というのがその意図するところです。 ある科目を担当する先生の「生徒の学力を伸ばそうとの熱意と善意」…

新しい学力観にそった授業と家庭学習の再設計

新課程への移行で学力観が新しいものに更新されていく中、家庭学習にも「学ばせ方の変化」に応じた新しい形が求められるようになるのは、既に以下の拙稿などでもお伝えしてきた通りです。 単純に授業外学習時間の延伸を図れば良いということではありません。宿題・課題の増量といった昔からの対策には、自ずと限界があると思われます。荷物を増やしても学びが膨らむとは限らないことを念頭に、「その宿題、本当に必要ですか?」 …

夏休みの過ごさせ方を振り返って、来期の指導設計を

昨日のブログで、「自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?」と題して、夏休み中の宿題の代表格(?)である自由研究、課題研究について考えてみました。各教科で課した宿題・課題も含めて、所期の成果が得られたかどうか、2学期の初めにはきちんと検証をしたいもの。夏休み中の講習・補習も同様です。夏の間に行った指導/取り組ませた課題の成果を検証しないことには、2学期からの指導の起点を正しく定めることもできま…

自由研究/課題研究は狙い通りの成果を得たか?

まだ夏休みが始まっていないのに「何、このタイトル?」と思われた方が多いのではないかと拝察いたしますが、ひと月後に初めてこの問いを思い浮かべたのでは時すでに遅し、与えた課題の効果を検証する準備が十分に整っていない可能性が高いのではないかと考えます。 1学期の終業式を迎えて、夏休み中に取り組むべきタスクはすべて生徒に提示されているはず。生徒の時間(加えて、場合によっては教材等の購入費などの金銭)を投じ…