新型コロナに翻弄されて2年が経ちますが、その間に学校行事や体験学習、進路関連行事などは様々な制約を受け、縮小・中止されたり、代替策が取られたりしたかと思います。その影響は当然のことながら生徒の成長やコミュニティの形成にも及んでいるはずです。
学校評価アンケートや授業評価アンケートなどのデータには、進路意識の形成の遅れ(指導計画の遅延)や、生徒が協働で課題解決に取り組む方法と楽しさを学びきれていない様子などが見て取れます。
これまでの2年間で積み上げることが出来てきたものは、コロナ禍前とは多少なりとも違ったものになっており、来年度以降の指導計画を従来と同じように進めては、「前提条件」の相違で指導が狙い通りの成果を結ばなかったり、遅れが生じている部分がそのままになりかねません。
この2年間で生じた後れを解消したり、指導計画を不足が生じていることを前提にしたものに修正したりといった対処が欠かせない局面です。年度末までが勝負時であるのは言うまでもありません。
❏ これまでの体験の欠落は、今後の指導の前提を変える
コロナ禍が学校に影響を及ぼし始めたのは、2020年の2月末です。それ以前に立てていた指導計画(生活、学習、進路)の中で、学年・学期ごとに目指していた段階的な到達状況があるはずですが、それらと照らして生徒の現況は如何でしょうか。
例えば、日々の授業や学校行事、生徒会活動の中で学んでいくべき「協働で課題解決に取り組む場面で取るべき行動や姿勢やその楽しさ」などの獲得状況に、過年度生と比較した場合の遅れがあるかもしれません。
進路意識形成でも、体験的な学びの場が削られたことで、調べたり情報を集めたりする部分や、体験を通した内省に取り組む部分に不足が生じていることも少なくないようです。
仮に、見た目の上では同じ体験を積ませていたとしても、時短や分散登校の影響を受け、内省を重ねさせる指導が十分に出来ていないこともあるでしょうし、面談での掘り下げが足りていないこともあるはずです。
計画立案時に想定/設定した、領域・観点ごとの段階的到達目標に照らして、現況を評価して、不足があればそれを補う修正計画を起こす必要があるということです。
❏ 学習機会の再設定よりも、効率的な補完策を
コロナ下で欠落してしまった/縮小せざるを得なかった指導機会や体験をこの先のカレンダーの中に再設定しようと思っても、卒業までの期間が延びるわけではないので、枠に収まらなくなるのは自明です。
今後に予定されている指導機会を利用して、ここまでに生じた不足を補うしかありません。一つの機会に複数の目的を持たせる、無駄な重複を避けて効率よく全体を構成するという発想で臨むのが好適です。
それぞれの指導/学習場面(行事なども含みます)に臨ませる準備を、当初予定よりも「少し後ろに下がったところ」から始めることや、体験を終えた後の振り返りにじっくりと取り組ませて、より深く内省させることなどでも、ある程度のところまで不足を取り返せると思います。
❏ 受験学年を迎える準備と覚悟が十分か、しっかり点検
受験学年となる現高2生には、生徒が互いの頑張りを支え合う集団作りや、志望理由を言葉にしてみることを通して志望希望の固め直しなどの指導も必要かもしれません。
別稿「受験期は、またとない成長の好機」でも書いた通り、不安を抱えたり、しんどい思いをしても、諦めることなく頑張り続けることで生徒は大きな成長のチャンスを得ます。
そういう1年間を送れるかどうかは、このゼロ学期と新年度当初の指導に大きくかかっています。諦めない心は諦めたくないものを見つけた人にしか宿りません。
❏ わかりやすく合理的な指導方針を改めて打ち出す
また、感染状況の変化に合わせて、様々な対処が取られる中、指導方針が一貫性を欠く/わかりにくいと感じている生徒や保護者が増えているようにも見受けられる部分があります。
目指しているものを改めてしっかりと伝え、生徒、保護者、先生方の間でしっかり共有し直す必要もあるのではないでしょうか。保護者会や三者面談が従来通りにできなかった場合は特にです。
必要に迫られやむなく行った様々な「変更」が「ノイズ」となり、学校/先生方の意図するところをわかりにくくしている可能性があることを想定して、手を打つ機会を逃さないようにしましょう。
教育目標や指導方針をちゃんと伝えることは、個々の指導の評価を左右するとともに、そこで得られる効果も大きく変えます。
❏ 過年度学年との間に生じた差異を探るデータ
冒頭でも触れましたが、学校評価アンケートや生徒意識調査、あるいは進路希望調査などの集計結果にも、過年度学年との差異が見てとれることがあります。
以前と同じ内容でアンケートなどの調査を行っているなら、データを突き合わせてみましょう。単年度の結果だけ見ているのでは捉えきれない変化が随所に存在しているはずです。
学年ごとにクラス別集計値の箱ひげ図を作り、並べてみるだけでもどのくらいの差が生じているかは直観的に捉えられるはずです。
中には、コロナ禍の不利を跳ね返して、従来とそん色のない成果を得ているクラス(上側のひげに含まれるなど)も見つかると思います。そこでの実践を共有することで、ピンチにどう対処すべきか学べるところがあるのではないでしょうか。
大前提は、こうした解析ができるよう、定期的にしっかり調査をして、データをきちんと管理しておくことであるのは言うまでもありません。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一