教材や課題の難易度は、理解や解決に必要とされる知識の量、思考の深さ、手順の複雑さ、見通しの立てにくさや解法が求める戦略性といった様々な要素の組み合わせで決まりますが、学習者がそれらをどう感じているかを確かめながら、計画的・段階的に調整を図る必要があります。
負荷が急激に高まれば、わからない/できないという失敗体験をあっという間に積み上げてしまい、科目の学びに対する自己効力感を弱めてしまった生徒は学び続ける意欲を失い、進路希望実現への努力を放棄しかねません。他方、ある時期の指導で負荷を緩めてしまえば、後になってよじ登らなければならない段差を大きく残すばかりです。
十分な負荷を掛けてこそ、課題をクリアしようとする工夫の中で生徒は学習方策も身につけますし、クリアできたときの達成感も大きくなり、次の学びに向かうモチベーションの向上も期待できるはずです。
負荷の高め方というテーマで、データを使いながら考えるところをまとめてみました。お時間の許すときにご高覧いただければ幸甚です。
2016/07/24 公開のシリーズをアップデートしました。
負荷耐性の高まりに合わせた調整を
凸凹が小さく、逆行のないように
難易度を生徒がどう感じているかこまめに把握
既習内容の確認と学び直し機会の整備
伸びこぼし/吹きこぼれを生まない対策も並行して
学習目標を理解させることで達成可能性を引き上げる
負荷を上げる前に、学習方策の確立を
参照型副教材を徹底的に使わせる
リカバー可能な小さな失敗で耐性を身につけさせる
成果のたな卸しと次に向けた課題形成
アップデートに際しての追記:
生徒の負荷を高めるときに徹底したいことの一つは、目標理解の徹底です。目指すべき事柄がはっきりと認識できていれば、たとえ最初のトライで失敗しても次にどうすれば良いか考えることができます。
また、教えあい・学び合いを積極的に取り入れることで、苦手意識の発生を抑えられることも知られています。
知識や発想の交換が課題解決に必要なパーツを揃えてくれるのが大きな要因でしょうが、みんなで知恵を出し合えば大抵の問題は解決できると感じる機会を重ねることで、課題解決への協働に喜びを見出すこともコミュニティの成員になるのに必要なことだと思います。
一方で、活動性を高めて苦手意識を抑えるという方法にも限界があります。根本的な対策は生徒一人ひとりの学力、学びの方策を高めていくこと、大きなハードルを迎える前にきちんとレディネスを整えておくことに尽きるのではないでしょうか。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一