もうじき新学期です。「授業開き」やオリエンテーションでは、予習や復習の方法、家庭学習の時間についてもお話しをされているかと。
家庭学習について、昔からよく言われるのは、「学年+2時間」とか「平日は2時間以上、休日は4時間以上」といったもので、そう伝えているのは、今もよく見聞きします。
確かにこれだけ勉強すれば、成績も伸びるでしょうし、進路希望の実現にも近づけると思いますが、あくまでも「実のある学びを、きちんと実現/習慣化できれば」のお話です。
やるべきこともないのに、「机の前に2時間座ってそれで良し」というわけでないのは言うまでもありません。
❏ 投資量や結果量ではなく、成果を指標にするべきでは?
学習時間については、様々な目標が掲げられます。
- 授業以外に何時間の勉強をしたか
- その中で、問題をいくつ解けたか/何ページ進んだか
- それによって、どれだけ成績が伸びたか
最初の「何時間勉強したか」は【投資量】であり、2番目の「何問解いたか」は【結果量】、そして3番目は言ってみれば【成果】ですね。
このうち、最も大切なのは、当然ながら3番目。各単元での学習目標を達成するという「所期の成果」を積み上げられるか、なのは明白です。
もし、所期の成果が得られているなら、たとえ学習時間が目標値に達していなくても、どんどんほかのことにチャレンジすべきでしょう。
社会人が勤務時間内の生産性を高めて、きっちり余暇を楽しむことが豊かな生活に繋がるのと同じことではないでしょうか。
投資量としての家庭学習時間を、直接的な目標にさせることに、そもそも無理があるのかもしれません。
❏ 家庭学習の習慣形成は、与える課題のコントロールで
適切な課題量(予習・復習を含む)を与え、それを生徒一人ひとりの持ち時間の中に配列させることから、家庭学習の習慣を作っていくのが好適と考えます。
家庭学習の習慣形成には、「毎日2時間」というお題目を掲げるより、どのような課題を与えるか、タスク管理のスキルをどうやって身につけさせるかを考えることの方が先決のような気がします。
もちろん、どの程度の課題を与えるべきかは重要な検討事項です。
各科目を担当する先生方が、それぞれの思い入れからガンガン宿題を与えていたら、生徒の持ち時間はあっというまに底をつきます。
逆に、他の科目の宿題で生徒が目いっぱいになっているからと言って、手控えが過ぎると進路希望の実現から遠ざけてしまうことにもなりかねませんよね。
しっかりと適量を見計らい、与えるべきものをきちんと与えることが大切です。
家庭学習時間調査は、生徒の勤勉さを測るものではなく、適切な質と量の課題が、十分な指導の下で与えられているかどうかを確かめるために行うものと考える必要がありそうです。
50分の授業が週に6コマ(5日間)あれば、それだけで一週間あたり1,500分(25時間)になります。これに部活動などの課外活動が毎日90分あれば、5日で450分(7.5時間)。合計で32時間30分です。
サラリーマンの法定労働時間は、原則として週40時間。そこから如上の32.5時間を引くと、残りは7.5時間です。
この計算で行けば、生徒に要求して良い授業外学習時間の上限は、平日1.5時間か、平日1時間+週末2日に2.5時間かと。超過した分は、いわば「残業」といったところでしょうか。
高校生の学習を労働と同列にしてもはじまりませんが、これを超えてなお、こなしきれないようであれば、「やらないことを常態化させるリスク」の方をしっかり考えてあげる必要がありそうです。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一