思考力をはぐくみ評価する(その1)

知識・技能に加えて、思考力・表現力や協働性・多様性・主体性がより強く求められています。それぞれの学力要素を目標水準に引き上げるには、個々の生徒について評価を通じて「現況と目標との差分」 を明らかにするのが第一歩。
何がどのくらい足りていないのか特定できないことには、それを埋める計画も立ちません。

❏ 測定/評価方法の確立にむけて

知識・技能の多くは、テストによってある程度まで正確に測ることができますが、それ以外の学力要素は、測定も評価もいまだ確立されているとは言えず、やっかいな問題を抱えます。
教育方法も大事ですが、その前に、目標を定めた上で、どのように評価するのかを考えるのが先決ではないでしょうか。
高大接続改革でどんなテストが出題されるようになるのか大いに話題になっていますが、最終的な出題サンプルが出てくるのはもう少し先のようです。
先月公開された高大接続システム改革会議の「最終報告」では、問題発見・解決のプロセスを軸におき、そこで働く思考・判断・表現を配置したイメージが示されました。

最終報告書p.74より転載

それぞれをどのような問題で試すことになるのかは、今後の議論を待たなければなりませんが、目の前にいる生徒には「ちょっと待ってね」というワケにはいきません。
同じ報告書で示されている「各教科で重視すべきプロセス」を手掛かりに、思考の場を教室の中に組み込んでいくしかなさそうです。

最終報告書p.73より転載

❏ 考えさせるための問いを作ることから

思考力を育てるためにも、それを測定して評価するためにも、何らかの課題を与えて生徒自身に取り組ませなければなりません。
生徒の代わりに先生が考えて、その結果を伝え、覚えさせるだけでは、だめですよね。
生徒が自力で出来るようにもならなければ、教える側でも、どのくらいまで生徒の身についているか、推測することもできません。
「考えさせるための問い」を生徒に与えることが何より肝要。まずは、そういう問題を用意することが教える側の最初の仕事ということになりそうです。
まずは適切な問いを作ること。この課題を通過しないことには、その先の授業の設計(どんな活動を配列し、どんな資料を読ませるか)に手順を進めることもできません。

❏ 問いのあり方を、先例から学ぶ

考えさせるための問いと言っても、別に真新しいものではありません。探してみると、様々な場面で既に登場していることに気づきます。
それらを拾い上げ、共有していくことで手札は増やしていけるはずです。 例えば、こんな問題ならすでにどこかで見たことがあろうかと。

紙の上に点が3つ印字されているだけの状態を見せておき、
「鉛筆、コンパス、目盛りのない定規だけを使って、3点A、B、Cからの距離の和がもっとも小さくなる点を描きなさい」「作図ができたら、その方法が正しいことを証明しなさい」

初見のエッセイを用意しておき、
「本文を読み、あとに続くア~ウの各文中の空所にそれぞれ15語程度の英語を補って筆者が最もよく賛同すると思われる英文を完成させなさい」

バリエーションとして、2つの英文を使って、
「英文A、Bそれぞれの筆者がともに賛同し得る内容となるよう、以下の文中の空所に50語以上の英文を書きなさい」「グループで討論して、2つの英文の筆者がともに納得できる解決策・妥協案を示しなさい」

自然界の現象(例えば、鍾乳石の生成)を画像などで示しておき、
「この現象を、教科書、資料集を参考に、化学式を用いて説明しなさい」とした上で、 ついでに、
「石が生成されるのを防ぎたい場所にはどのような対策を講じれば良いか、グループで討論して最適と思われる方法を提案しなさい」

2番目以降の問題では、どこまで視野が広げられたか(例えば相手の反論を予想する、考えた方法のコスパや副作用まで考えるなど)で、思考や判断がどこまで及んだかも見て取れるかもしれません。
国語や地歴公民では、拙稿「生徒に問いを立てさせる」や「問題意識を刺激する(学びのウォーミングアップ)」でご紹介している方法などもありそうです。

❏ 決まった流れを毎回繰り返す必要はない

すべての時間でこうした場面を用意するのは、時間的制約などで非現実的かもしれません。
知識の不足は必要に応じて補えば良いという考えもありますが、決定的に足りないと調べる手掛かりさえ失います。また手順への習熟が足りないと余計なところで時間を無駄にし、思考に欠けられる十分なエネルギーと時間を投じられません。
学期単位で指導計画を見渡して、要衝となるところで組み込んでいくというのも落としどころの一つではないでしょうか。
少なくとも、「聞いて、覚えて、答案上に再現して」というサイクルに終始するより、主体的・能動的な関わりが持てる分、定着も期待できますし、なにより生徒の興味を刺激します。
わかることが増えれば、取り組みも楽しくなるし、「意欲的に学ぶ姿勢」を作れば、学力も引き上げられ、同時に「学ぶ方法」も身につけていってくれるはず。
一定期間の中で目指すべき到達目標に対して、それぞれに応じた活動・学習を毎回の授業に均等に配置する必要はありません。むしろピンボケになる心配だってあります。
次の定期考査をマイルストーンとして、その期間に何をどう配列していくか、高所から俯瞰する姿勢こそが、指導計画・授業立案を行う上でのポイントです。
その2に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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思考力と表現力を養うにはExcerpt: 1 学力の三要素、高大接続改革に向けて1.1 学力の三要素とは~もう一度考えてみました 1.1 高大接続改革に向けて今できる準備 1.2 高大接続改革に向けて今できる準備(その2) 1.3 評価方法の再整備~高大接続答申から 2 思考力をはぐくみ評価する2.0 思考力をはぐくみ評価する(序) 2.1 思考力をはぐくみ評価する(その1) 2.2 思考力をはぐくみ評価する(その2) 2.3 思考力をはぐくみ評価する(その3) 2.4 思考力をはぐくみ評価する(その4) 3 ...
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