マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その6)

中高一貫校では、中学と高校、前期課程と後期課程との間で、過剰なギャップや大きすぎる重なりが見つかることが少なくありません。このあたりにも注意が必要です。

❏ 上下左右と見比べながら、修正案を書き込んでいく

シラバスに記載されたことと付箋に書き出して、模造紙の上に張り出していくことで、「あれっ?」と思う機会も少なくないはずです。
学年ごとに、また科目ごとに起草してきたものを、付箋で分解し、模造紙の上に再構成してみることが、問題点を見つけ出す好機となります。
修正すべき点が見つかったら、付箋の位置を動かしたり、修正案を書き込んだ付箋を新たに作って模造紙に貼り込んだりしながら、学習指導のロードマップの「あるべき姿」を探していきましょう。

❏ 科目と教科をまたいで、点検の視野を広げる

朱書き用のシラバスを、各教科に常備して、改めるべき点に気づくごとに書き込みをして、次年度での更新作業に漏れが生じないようにしている学校があります。
こうした学校でも、学年や科目の境界をまたいだ問題にはなかなか気付かないことがあります。如上の「分解と再構成」の機会は、やはりどこかで持つべきだと思います。
また、同時に履修している科目(たとえば、英語表現ⅠとコミュニケーションⅠ、物理基礎と化学基礎)での要求が、互いの成果を踏まえて活かすようなものになっているかも検討してみることも必要です。
それぞれの科目で行っていることが、互いにヒントになって新しい発想が生まれることもあるはずです。
さらに進めるならば、英語と国語、数学と理科など、教科の枠を超えて整合性が取れているかにも関心を向けたいところです。
如上のワークショップを全教科が同じ場所で一緒に行うのは現実的ではありません。出来上がったものを一定期間保存しておき、互いに見られるようにしておくぐらいが「落としどころ」だと思います。



話が脇にそれるようで恐縮ですが、疫学の話におつきあいください。
19世紀半ばにロンドンでコレラが大流行したとき、まだコレラ菌は見つかっておらず、当然ながら感染経路も治療法も明らかにされていませんでした。
しかし、ジョン・スノウ医師は、ある水道会社と契約している地域と、それ以外の地域とでコレラの発生率が違うことに気づき、罹患率の高い地域の水道の使用を停止することで流行の鎮静化に成功しました。
どうやら水道に原因があると当たりを付けたことで、後々のコレラ菌発見(と治療法の確立)に繋がっていきます。
この話を指導法・学習方法に置き換えてみると、各学年で行ってきた取組を比較する中で、高い成果を上げた学年で特徴的に行われたことをまずは共有・継承することが重要だと思います。
なぜ、その取り組みが成果を上げ得るのか、メカニズムを明らかにしていくことも並行しつつ、さらなるブラッシュアップを重ね、優れた指導法を校内に確立していくことができるのではないでしょうか。
アイザック・ニュートンが書簡に残したとされる「巨人の肩の上に立つ」という言葉は、先人が積み重ねたものの上にこそ、新たな発見があることを意味します。
指導法の改善・確立に向かうときも、過年度の成果と反省こそが「巨人の肩」ではないでしょうか。
予想外に長い連載になっていますが、もう暫くおつきあいください。
その7に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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