生徒の学力観を更新する、振り返りフェイズの問い

知識や技能は、獲得させただけでは不十分。課題解決などに実際に使わせ(=活用させ)て、生きて働かせる方法を学ばせてこそ、使える道具になります。先生方が、日々の授業に「問い」を用意して臨むのは、活用の機会を整えるためであり、実りある学びへの第一歩です。
しかしながら、せっかく用意した活用機会も、生徒は「獲得した知識・理解を生きて働かせる方法を学ぶためのもの」と認識せずに、「教わったことを覚えるための反復練習」としか捉えていないかもしれません。
新たに手に入れた道具(知識・理解)が、どう頭を使うと生きて働くものになるかを考えながら学んでいるときと、示された手順をただ繰り返し、覚えて再現できたらそれでよしと思っているときでは、学びの質に大きな違いが生じるのは明らかでしょう。

❏ 課題解決=思考力獲得のためのタスク、との認識を作る

問いに答えを導いたり、課題を解決したりすることは、新しく得た知識をどう使うかを学ぶ、「思考の力」を養うことを目的とする営みだと、生徒に言葉だけで伝えても、すんなりと認識に収まるとは限りません。
問題演習や課題解決のこうした意義を捉えていない生徒は、知っていることをきちんと応用できれば解けた問題で答えに至らなかったときも、思考が足りなかったことを自覚せず、「解法を知らなかったから」との誤った/浅い捉え方になりがちです。
解法を一つの知識と捉え、それを知って/学んで覚えれば解ける(=得点できる)ようになるという考え方は、「解法が確立していない問題」や「正解が一つに決まらない問題」への対応力をスポイルします。
上述の「課題解決は思考力獲得のため」という言葉の意味を、表面的なところを超えて、深い所できちんと腹落ちした理解とするには、生徒が体験の中で「なるほどそういうことか」と実感する場が必要です。
そのためのアプローチとして、日々の授業の振り返りの中で、
「本時に獲得した知識・理解(新たに学んだことは)は何か」

「それを学んだことで、どんな思考ができるようになったか」
などを尋ねてみて、生徒に言語化させてみる(振り返りシートに記入させる)のもお奨めです。問われることで、それまで無自覚だったところにも意識が向き、言葉にすることで、認識はより明確になります。

❏ 一定期間の継続で、振り返りを生徒の内に習慣化させる

如上の言語化も、「単発」で行わせるのでは、効果は限定的でしょう。生徒が「課題解決は思考力を鍛える手段」と捉え始め、何を学んだか以上に、それをどう使い、何ができるようになったかに意識を向けられるまで、少なくとも一定期間に亘る繰り返し(習慣づけ)が必要です。
最初のうちは、問われていることにピンとこない生徒がいるはずです。最初からできるなら、わざわざやらせる必要はありません。以下のように学習者としての進歩を段階的に捉えながら、指導を継続しましょう。

  • 初期段階(用語を挙げたり、作業手順を書いたりするのにとどまる、「学んだ=覚えた」段階)
  • 移行段階(何を考えるときに有効な道具か、メタ化ができ始めた、「学習内容が道具になる」段階)
  • 習熟段階(科目固有の「ものの見方」に近づき、初見の事象にも、「展開・拡張ができはじめる」段階)

きちんとできない状態に、有効な働きかけもなく、ただ継続するだけでは、形骸化/自己目的化が進むだけで、指導の意味が失われます。サンプルを示したり、やり方を説明したり、適切なガイドが必要です。
また、生徒が振り返りシートに起こしたものから、好適な記述をピックアップしてクラスでシェアすることで、「学んだことの捉え方」を生徒が相互に学べる場を作っていくことにも注力したいところです。
複数の教科・科目で、このような指導を行えば、それぞれの場面での学びが相補的に働き、習慣化とそのスキルの獲得も加速します。
教科横断的な指導は、必ずしも、同時に/足並みを揃えて行う必要はなく、時期をずらした「重ね塗り」も有効です。学習内容の面で「やりにくい」単元もあり、そこを避けて計画した方が上手くいくはずです。

❏ 学習活動の意義を捉えさせるための「振り返り」も

知識がどのように働いたのかを意識化することで、学んでいる内容への認識が深まり、それがどんな意味をもつのかを捉えられるようになる、というのが前段までの「要約」になろうかと思います。
その状態に到達した生徒は、「学びに向かう姿勢」にも大きな進歩を見せてくれるのではないでしょうか。(すぐに効果がでなくても、記憶があとで再構成され、卒業後に「気づき」を得ることもあろうかと。)
こうした振り返りが、生徒の学びへの向き合い方を改善していく効果は、獲得した知識や理解を課題解決に活用することの意義を理解させるところに限らず、学び全般にも当てはまるものと考えます。
別稿「学習活動の段階的拡充で目指す深く確かな学び」で書いたように学習活動そのものを徐々に多様化・拡充していくときも、「何のための活動か」「それによって何ができるようになるか」を認識している場合と、そうでない場合とでは、学びの深さも違ってきます。
対話協働などの活動についても、必要な場面では、「本時の活動を通じて、どんな気づきがあったか、何ができるようになったか/できるようになりそうか」などを尋ねて、内省と言語化を求めていきましょう。
振り返りシートの記述に、先生が意図したところと重なるものがあまり見られないようなら、その日の授業には、改めるべき点があったのかもしれません。導入フェイズでの言葉選び、準備学習での意識付けなど、思い当たる所に手を入れることで、大きな変化が出ることもあります。



如上の問いに、生徒がどんな振り返りをしてくれるか、事前に想定しておくことも大切かと思います。どんな気づきを持ち、学びをどう捉えて欲しいか、明確にイメージしておくことは、それに沿った授業デザインを実現するときのぶれない軸になるはずです。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一