目標の示し方、導入の工夫

生徒に問いを立てさせる

主体的、対話的な深い学びの実現のカギをにぎるのは、生徒に自ら問いを立てさせることだと思います。先生方の発問や教科書会社が用意した設問が、個々の生徒の興味を十分に刺激するとは限らず、学びは自分事にならない(=学ぶことへの自分の理由を持てない)かもしれません。また、教材を離れ、問いが付与されていないテクストや資料を読む場面では、読み取ったことの中に自ら問いを立てられてこそ、より深い理解が作られますし、…

目標の示し方、導入の工夫

1 学習目標の示し方 Updated! 1.1 学習目標の示し方(序)  (その1)目標を共有することの効能  (その2)目標に立ち返り成果を確認  (その3)学び方の獲得も重要な目標1.2 学習目標が伝わらない?(前編、後編)1.3 解くべき課題は明らかなのに学習目標がわからない? 2 解くべき課題を通した目標理解 2.1 学習目標は解くべき課題で示す ★ ・単元ごとに設定するターゲット設問 ・…

学習目標の示し方 #INDEX

学習活動において、生徒が学習目標を正しく認識していることは、積極的な取り組みの前提であることに加え、生徒の側での情報補完を容易にすることで生徒の理解力を底上げするなどの効果も得ます。また、目標とするところをきちんと把握できていないことには、目標を達成できたとの実感も曖昧になります。達成感はモチベーションの原資ですが、それが希薄になることのデメリットは計り知れません。学習目標をはっきり示すことで苦手…

学習目標の示し方(その3)~学び方の獲得も重要な目標

学習目標という言葉で最初に思い浮かぶのは「単元の内容を理解すること」かもしれませんが、それだけではありません。内容を学ぶことを手段に様々な能力や資質(基礎力、思考力、実践力など)を獲得することも目標です。(cf. カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計する)わからないことがあったときに調べたり、予習復習を進めたりするときの「学習方策」を身につけること、加えて、協働で課題解決に臨む場面でのふるま…

学習目標の示し方(その2)~目標に立ち戻り成果を確認

前稿(その1)でお伝えした通り、学習目標は導入フェイズでしっかりと、生徒が達成検証できる表現を与えて示すのが鉄則ですが、目標を示しっぱなしでは、確かな学びは保証されません。学びを終える前のアウトプットを通して、目標が達成できたかどうか点検させ、不足があればきちんと補うようにさせなければ、「目標を与えただけ」「やらせっぱなし」ということになってしまいます。 アウトプットに用いる課題や問いを、導入フェ…

学習目標の示し方(その1)~目標を共有することの効能

教科学習指導に限ったことではありませんが、生徒に何かを学ばせようとするとき、事前に学習目標を正しく認識させておくことには、 といった好ましい効果が多岐にわたって期待できます。教科学習指導における「目標」には、教科や科目に通底した大きなものもあれば、単元や項目ごとのものもありますし、学びの局面ひとつひとつにも到達を目指すべきものがあるはずです。 それらを生徒にも理解できる表現でしっかりと示し、生徒と…

解くべき課題は明らかなのに学習目標がわからない?

授業で得た理解と知識を用いて解を導くべき課題を導入フェイズで提示しておくと、生徒が学習目標を認識しやすくなるのは、拙稿「目標理解と活用機会を整える授業デザイン」でもお伝えした通りです。 しかしながら、授業評価アンケートの集計データでは、上図にも見て取れる通り、ときとして(先生が)活用機会を整えている度合いと、(生徒が)学習目標を理解している度合いとの間の相関が崩れます。近似線から大きく離れた(ある…

学習目標が伝わらない?(後編)

先生方と違い、生徒や学生は何といっても「新単元を学び始める前」です。単元や項目の目標や意義をどれだけ言葉を尽くして伝えても、意図するところをすべて理解し、受け止めるのは容易ではありません。前稿では、そんな場合に試してみるべき方法として「内容を学び始める前のプレ活動」をご提案いたしました。今回は、それでもうまく行かないときの「次善の策」、終了時に使える一手も含めて考えてみます。 2015/02/24…

学習目標が伝わらない?(前編)

日々の授業に際して「本時の目標」を欠かすことなくきちんと伝えているつもりなのに、あるいはシラバスを通じて示したはずなのに、生徒や学生にアンケートをとってみると、「目標提示」の項目で想定外の低評価…。こんな経験をなさっている先生方も少なくないようです。低評価となったのは、学習目標を先生が伝えていないのではなく、生徒/学生の側に伝わっていなかったということ。「伝えられたものを受け止めるだけの前提」が学…

目標提示と成果確認はセットにして

シラバスや学習の手引きによく見られる「○○について理解する」といった目標の記述は、本時の学びで目指すところを、生徒に正しく伝える機能を十分に備えているでしょうか。これから学ぶ(=まだ勉強したことのない)ことの項目名を挙げられても、何をするのか、何を学ぶのかをイメージできるとは思えません。また、学習が終わった後で「学習目標」に立ち返って/読み直してみてもなお、自分が目標を到達できたのかどうか把握でき…

生徒が納得できる本時/単元の学習目標

学習指導に限らず、あらゆる指導には場面ごとに「到達を目指すこと=目標」がありますが、先生方が指導計画の中で設定している、本時/単元/学期/年間の学習目標は「生徒が納得して、その達成にむけた意欲を持てるもの」になっているでしょうか。先生方は、学習指導要領に規定された「教科の目標」(あるいは生徒が目標とする大学群の出題内容など)を起点に、単元や各授業の個別目標を導き出しますが、学びの過程、あるいは入り…

生徒に伝える期待(=先生方の指導目標)を明確に

新年度も近づいています。オリエンテーションや授業開きに向けた準備も進んでいることと思います。その場では、生徒に守るべきルールや履行を心掛けて欲しい行動を明確且つ具体的に伝えることも大切です。伝えるためには、その内容が確固たる土台を持ち、的確な表現を与えられている必要があるのは言うまでもありません。根っこに立ち返り、生徒にどんな成長を遂げて欲しいか、どんな生徒を育てるのか、教育活動を通して目指すゴー…

解くべき課題で「何のために学んでいるか」を伝える

単元内容が明示され、何を学び、何を身につけるべきかが示されたとしても、その前段階として、「何のために学ぶのか」という問いに生徒が答えを見いだせないことには、「学ぶことへの自分の理由」は生まれてこないのではないでしょうか。自分の理由がなければ、所詮は他人事。身を入れて学ぶ気にならなかったとしても、生徒を責めるわけには行かないような気がします。何のために学ぶのかという如上の問いには、「学ぶことがどのよ…

達成すべき目標やポイントをはっきり示す

学習を通じて到達すべき状態を生徒に理解させておくことは、授業のわかりやすさを大きく高めます。目指していることに照らし、生徒が一つひとつの説明や指示の意味をより良く理解できるようになるからです。目標に到達できたときの達成感もより明確になるため、次の学びに向けたモチベーションを向上させる働きも強まりますし、生徒の苦手意識を抑制する効果も確認されています。 2015/05/14 公開の記事を再アップデー…

学習目標は解くべき課題で示す

日々の授業や各単元の学習に明確な到達目標を設定し、生徒としっかり共有できているかどうかで学びの成否はほとんど決まってしまいます。学習目標の提示には様々な方法が試されていますが、単元名や指導案で見かけるような「〇〇について理解を深める」といった表現で「本時の学習を通じて達成すべきこと」を生徒は十分に把握できるでしょうか。まだ学んでいないことだけに、何を学び、どこまでわかれば/できれば良いのか、生徒に…

問題意識を刺激する(学びのウォーミングアップ)

教科学習指導の目標の一つは問題解決力の養成です。先生方は、その土台(生きて働くべき知識・理解)を獲得させるべく、授業を行います。しかしながら、生徒の問題意識が十分に刺激されず、希薄なままでは、先生方がどれほど熱く語り、知識を伝えようとしても、「打てども響かず」「吹けども踊らず」ということになりかねません。生徒の問題意識を十分に刺激し、生徒一人ひとりが「学ぶことへの自分の理由」を持てるよう、効果的な…

論点(イシュー)を使った単元導入

学習目標を生徒に把握させるのに最も手早く確実で、且つ広範に使える方法は、別稿でお伝えした通り、「学び終えて解を導くべき課題を導入フェイズで与えること」ですが、単元の内容やその日の授業の目的によっては、賛否の分かれる問題(=論点、イシュー)から入る「ディスカッション型の導入」も効果的です。 2018/08/07 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 賛否を違える意見に触れることで やり方には幾つ…

学ぶことへの自分の理由を持たせる~新単元等の導入指導

どの教科、科目、単元でも言えることですが、生徒が「それらを学ぶことへの自分の理由」を持っていないことには、「深く確かな学び」を実現するための必須要素である「主体的な学び」は期待できません。能動的・積極的な学びには、目的意識と学びの方策の2つが必要です。目的意識をもって学びに取り組んでいるか、学習方策の獲得はどこまで進んでいるかによって、取り組みもその成果も違ったものになります。新年度に始まる新たな…

授業開き/オリエンテーション#INDEX

春休みが終わればいよいよ新年度の始まりです。オリエンテーションもあれば、それぞれの学年で教科・科目ごとの授業開きもあります。最初のコンタクトで何を伝えるかが、1年間の指導の成否を大きく左右します。新入生に限らず、新2年生、新3年生に対しても、しっかりと導入指導を行いましょう。こちらからどんなメッセージを伝えるかも大事ですが、生徒の行動様式や意識の在り方をできるだけ早く把握し、事前に想定していた指導…

授業開き/オリエンテーション(その4)

【スタートに立った生徒に伝えていること】 新年度を迎えての授業開きやオリエンテーションでは、新しく学ぶ科目の目的や学び方に加え、生活や進路に対する心構えや生徒に期待されるところが先生方から熱いメッセージとして伝えられます。こうした場を参観していると、それぞれの先生方の思いや考え方に触れ、聞いているこちらも生徒と一緒に様々な刺激を受けます。新入生を迎える場面での最初の指導とその前後の進め方を考えてき…