授業開き/オリエンテーション(その3)

【指導に臨む前の目線合わせと、効果検証への備え】

授業開きや学習オリエンテーションに臨むに当たり、「ここから始まる指導を通じて、生徒をどんな状態に到達させるのか」を改めて明確にしておく必要があるのは言うまでもありません。
授業開きを起点とする一連の指導を通して目指すところが曖昧なままでは、生徒の学習行動を観察・評価する基準も持てないはずです。
きちんと目線合わせを行い、先生方の間で指導にばらつきが出ないようにするとともに、指導期間を通して着実に成果を積み上げられるよう、継続的な評価(効果測定)を重ねていくための準備を整えましょう。
年度末に行った「前年の指導の振り返り」で得られた「反省と課題」もしっかり織り込みたいところです。

2015/04/02 公開の記事を再アップデートしました。

❏ 指導手順を考える前に、目指すものをきちんと言語化

普段の授業も含め、どんな指導でも同じですが、指導の方法をあれこれ考える前に「目標」とするところを明確にするのが先決。次は目標達成の検証方法を考えるべきであり、指導の方法を考えるのはその後です。
指導の目的/目指すべき到達状態を予め明確にしておかないと、学習法の確立に向かわせるフェイズで重要な「行動観察」に、確固たる観点を設けることすらできないはずです。
達成検証(=評価)の方法さえ確立していれば、先生方がそれぞれ最善と思う方法で指導を行った結果を比べることができ、その時点で最大の効果を上げた方法はどれかを、特定・共有することができます。

目指すものを言語化するというのは、観点毎に「評価規準」を書き出すことにほかなりません。生徒を主語にセンテンスの形にしようとして、手が止まるようなら、目指すところが明確になっていないのでしょう。この状態に止まっていては、教員間の目線合わせもおぼつきません。

❏ 授業開きに臨む前に、発想の交換と目線合わせ

授業開き/オリエンテーションに臨む前には、学年団と学年教科担当の先生方が集まって、「目標とするところ」や「指導に臨む方針」の確認とすり合わせを、確実に行っておきましょう。
新年度を迎えて生徒に期待すること/目指させることを、生活、学習、進路の三領域について、それぞれ考えるところを付箋に書き出して持ち寄ってみるのは如何でしょうか。学級担任も教科学習に関心を持つべきですし、教科担当は学年の生徒指導も知らなければなりません。
先生方がそれぞれに持つ発想や経験を互いに交換すれば、自分の視野に閉じてしまったときにありがちな、生徒の変化を見落としたり、注意が向かなかったりといったリスクも低減できます。
他の先生が書き出したものを見て、「ああ、そうか。そういうところも見る必要があるのか」と気づいてから指導と観察に臨む場合と、そうでない場合とで、結果はずいぶんと違ったものになりそうです。
目指すところを観点別の評価規準として書き出し終えれば、どんな材料と手順で指導を展開すれば上手く行くか、より具体的に想像を働かせることができるはず。オリエンテーションの進め方や個々のフェイズでの指導のあり方も、より創造的に考えられるようになるはずです。

❏ 評価の基準を定め、指導の効果をしっかり測定

領域・観点毎の段階的評価規準(ルーブリック)を整えておくことのメリットは、方針の確定と共有を確実にすることに止まりません。
評価を行った結果の分布に基づき、オリエンテーションでの模擬予習やその直後の状態と、一定期間の指導を経た状態を比較してみると、そこに現れた「差分」に、一連の指導がどのような効果を得たかを客観的に読み取ることができます。
日々の授業を進めていく中でも、その規準に照らして観察・評価を続ければ、指導の効果を確かめつつアプローチをアレンジしたり、学習方法の確立が遅れている(=補完指導が必要な)生徒を特定して、効果的な声掛けや支援ができたりと、メリットは小さくありません。
これに対して、観点別の評価規準を書き出す工程を端折ってしまうと、生徒観察は恣意的・感覚的なものになりがちです。「今年の生徒はよく頑張っているね」「例年より大人しいかな」 では、あまりに漠然としており、次の指導を具体的に思い描くのは難しそうです。
学年や教科の立場で、先生方がそれぞれ最善と思う方法で指導に当たっても、その効果を比較できなければ、好適実践の所在すら特定できず、優れた指導法を抽出して共有・継承を図ることもできません。
これでは、先に進む保証のない試行錯誤を毎年繰り返しかねません。先生方には次の年度もありますが、生徒がある学年を経験するのは一度きり(二度あると困ります)、着実に「昨年度より今年の指導の方が優れている」という状態を積み重ねたいところです。

❏ 効果測定にアンケートやリフレクション・ログも活用

授業開きやオリエンテーションを起点とする、「好ましい学習行動の獲得」に向けた指導の効果測定には、先生方の目を通して行った行動評価の結果が第一の材料になります。
期待を満たしたのをA評価、近いけど届いてなければB評価、まだまだ遠いのがC評価、期待を超えた成果やパフォーマンス、行動が観測出来たらS評価ですが、その分布の変化は指導の効果を端的に表します。
これに加えて、「この科目の学び方が身についてきたと思うか」などの文言でアンケートを行って、生徒の自己認識を確かめることも、有意な情報を与えてくれるはずです。(自己認識は尋ねないとわかりません)
同じ生徒でも、科目によってアンケートへの答えは異なるでしょうし、同じ科目でも、担当する先生の間で回答分布に違いがあるはずです。アンケートの集計は、優良実践が抽出できる形で行うべきです。

また、ポートフォリオの導入と活用が進んでいるなら、様々な場面(模試や考査の振り返りや学習合宿を終えたときなど)で生徒が残したリフレクションログからも、指導の成果を伺い知ることができます。

生徒の感想に目を通しながら「期待する変化・成長を窺わせる記述」を探し、その出現頻度をカウントしてみると、ある程度の定量的データが取れます。元来、点検のために読まなければならないものだけに、増える手間は(頭の中で)「正」の字を書くことだけですみそうです。



本日の記事は、シリーズタイトルの「授業開き/オリエンテーション」での、臨む前と終えた後のことに焦点を置きました。どんな指導でも、効果は「その場で何を伝え、何をさせるか」だけでは決まりません。
事前の準備への臨み方と、その後も継続して進める「指導と評価の一体化」が、効果を左右します。全体の流れをデザインしていきましょう。
その4に続く(未更新)

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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新年度を迎えるに当たり~まとめページ(2022年度版)Excerpt: 先生方に置かれましては、新入生を迎え入れる準備、次年度の計画の最終的な詰め、異動等に伴う引継ぎなど、定常期と異なる業務も加わり、いつにも増してのご多忙と拝察いたします。多忙な時だからこそ、やるべきことをきちんとリストアップして、優先順位の高いものからしっかり/漏れなく進めたいところです。これまでに公開してきた新学期にまつわる拙稿の中から、優先順位が高そうなものをピックアップしてみました。春休みがあけて生徒を迎えるまでの進め方を考える際に少しでもお役に立てば光栄です。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2022-02-25 05:51:51