理解を確かめてから次のフェイズに進む

生徒の理解を確かめるのは、学びを先に進められる状態を確かなものにするためです。「その場で」と「言葉にさせて」の2つを鉄則に、対話で行う理解確認を徹底していきましょう。
前段の理解に不足や欠落が見いだされた場合は、機を逸することなく、その解消を図る必要がありますが、教え直しで「絆創膏を貼る」ことよりも、教科書やノートの該当箇所を参照させたり、生徒同士の教え合いを促したりすることで、学び方を学ばせることを優先しましょう。

2015/05/13 公開の記事を再アップデートしました。

❏ 新しい概念を導入するときと、課題に挑ませる前

理解を確認するのは、ワンステップずつ足場を固めて、次に進むための前提/レディネスを整えるためです。
別稿「理解度の確認~場面と方法」で書いた通り、導入、展開、まとめの各フェイズで、それぞれ確かめておくべきことがあるはずです。
本時の学びに入る前には、以前に学んだことを理解しているかどうかを確かめる中で、不足があれば補ってから先に進む必要があるはずです。
新しい概念や知識を導入したときも、先に話しを進める前に、そこまでの理解を確かめないと、わかっていないことの上に不明を積み重ねるだけになってしまいます。
また、ひと通りのことを学び終え、それを使って解決する課題に挑ませる前にも、そこまでの理解の確認が必要です。
理解が不十分なまま課題に挑ませても、生徒は返り討ちに合うばかり。次の学びに向かうモチベーションを維持できなくなります。
課題に挑ませ、その出来栄えを確認しても、学びはまだ終わりません。やりっぱなしにさせないよう、しっかりと仕上げに取り組ませることが肝要です。cf. 確認した結果に基づいてきちんと学びを仕上げさせる

❏ 既習内容の確認は、問い掛けて教科書を開かせる

導入フェイズでの既習内容の理解確認では、先生が教え直すというやり方は「帯に短したすきに長し」です。
本時の学びに不可欠な部分に絞って、一つひとつ問い掛けながら、学んだときのノートや教科書のページを開かせるようにしましょう。

本時の内容を理解する上で不可欠な事柄は黒板の片隅に書き出しておけば、消すまでの間、常に生徒の視野に固定しておくことができます。
理解の核となるような事柄に、誤解や不明が残っていては一大事です。生徒自身に言語化させることで、理解の確認を確実に行いましょう。
不足を補わせるには、生徒同士での教え合いも積極的に活用したいところ。教える側に回った生徒も、言語化を通じて理解の深化が図れます。

❏ アウトプットを通じてインプットの不備を探る

ひと通りの学びを終えた時には、課題に挑ませたり、次に進んだりする前に、アウトプットを通じてインプットに不備や不足がないかを確かめることが肝要です。
理解したことを言葉にさせてみないと、本当のところがわかっているかどうかは把握できません。生徒もわかった気になっているだけで、理解できていないことに気付けないことすらあります。
理解を確認する場面でも、振り返りのためのアウトプットは必要ということであり、その機会を作るのは指導者の仕事です。
また、確認のために発した問いに正しい答えが返ってきても、素通りしないようにしましょう。きちんとわかっている保証はありません。
たまたまの正解ときちんと理解しての正解とを見極めるには、さらに問いを重ねて思考のプロセスを言語化させることが重要です。

❏ 昔ながらの小テストでは、理解の確認に不十分

理解の確認を目的に小テストを多用しているケースでは、いくつか注意しておくべきことがあります。
ひとつめは、小テストで確かめられるのは「覚えているかどうか」に限られがちであるということ。理解していなくても覚えてさえいれば、正解を答えられ、丸がもらえる状態では、理解の確認になりません。
ふたつめは、小テストを行うタイミングや採点の手順によっては、「確認までのタイムラグが大きくり過ぎる」ことです。
今学ばせたことが、直後の学びの土台になる以上、次の授業でテストを行い、その採点を終えてようやく把握するのでは後手に回り過ぎです。
生徒が個々にタブレットを持っているなら、アンケートフォームを利用した、オンライン小テストに切り替え、自動採点の結果で、理解の分布をその場で確かめられるようにしたいところです。
正解を覚えてしまえば、理解できていなくても正解できることも大きな問題です。場合によっては「覚えることが勉強」という間違った学習観を作り上げてしまうリスクもありそうです。

❏ 活動させて「観察の窓」を開く

生徒の表情を覗き込むだけでは、わかっているかどうか把握することはできません。頭の中で理解していること/考えていることを、言葉にさせてみる/アウトプットさせてみることが大切です。
一人を指名して発言(=理解したことの言語化)させても、他の生徒については何もわかりません。わかっていないかもしれないし、わかった気になってしまっているかもしれません。
クラス全体での理解を確かめるには、ペアなどで互いに説明をさせる場面を作るのが好適です。聞き耳を立てながら教室を回れば生徒がどこまで理解・思考できているか、より広範に把握できます。
問いを与えて、その答えをノートやワークシートに書き込ませることでも、手元を覗いてみれば理解と思考の様子を観察することができます。
授業内の活動性を高めるのは、思考の拡張を図ると同時に、その時の生徒の頭の中を覗き込むための「観察の窓」を開くためにも不可欠です。

◆ 改善のための必須タスク:

説明が長く続いてしまうことはありませんか。こまめに発問を行い生徒自身に理解したことを言葉にさせることが大切です。正解を尋ねる質問と理由や根拠を尋ねる質問とのバランスにも留意してください。また、小テストだけでは不明の把握が遅れ、土台が固まらないまま先に進むリスクを抱えます。観察と発問の充実が先決です。

◆ さらなる改善を目指して:

教えたことが理解できているかを確認するには、教えたときと異なる文脈に当てはめて正しくアウトプットできるかどうか確かめる必要があります。こうした確認は獲得した知識の活用機会となり、達成できれば次の学びへの動機づけにもなります。要所では、問いを予め示しておき生徒同士で答えを確認させてみるのも好適です。



新しい学ばせ方や指導法を試すときは、理解の確認に特に力を入れる必要があります。たとえ教室が盛り上がっていたとしても、それがきちんと学びの成果に繋がっている保証はありません。こまめな確認を経て、修正を重ねながら進めることが大切です。
教え方を工夫する前と同じ小テストや課題を与えてみたり、生徒側での認識をミニアンケートで探ってみると、正答率や得点率の変化でその工夫がどの程度の効果をもたらしたかを探ることができます。

講義座学系の授業評価項目/質問文一覧に戻る
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一