属性情報を取得することで(学校評価アンケート)

学校評価アンケートを行うとき、回答者の属性情報を取得しておけば、様々な解析が行え、教育改善に向けた課題形成の幅が広がります。
例えば、生徒なら、進路希望や所属している部活、各行事への参加状況などで、回答の分布が違うこともしばしば。全体では顕著な特徴がなくても、属性でのクロス集計などで見えてくることも多々あります。
常にアップデートされているデータがほかにあって、アンケートの回答データとIDで関連付けられる状態ならOKですが、そうでない場合、属性を尋ねる項目を設けて、情報をきちんと取得していきましょう。

2016/10/20 公開の記事をアップデートしました。

❏ 力を入れている教育活動ほど、効果測定の必要は大きい

例えば、部活動を推進しようとするならば、積極的に部活動に参加している生徒が、他の生徒(ユウレイ部員や無所属)の生徒に比べ、好ましい資質や姿勢の獲得で優位にあることを示す必要もあるはずです。
部活動を盛んにすることには、競技実績等を高めること以上に、それによって目指している別のゴール(教育的な目的)があるはずです。
目標(試合での勝利など)に向かう中で、効果的な練習を計画したり、チーム内で競合する意見に折り合いをつけて納得解を導いたりする力を獲得できれば、その後の人生をより良く生きることに繋がります。
実際、部活に参加している生徒と無所属の生徒の間で、「立場や意見の異なる人とも適切にコミュニケーションを取れるか」を尋ねた項目で、一定期間を経た回答分布の変化(=指導や体験を通した成長)に有意な差異が観測されたこともあります。
ホームルーム以外に帰属集団(生徒会、部活等)を持っているかどうかで、如上の資質の獲得ペースが異なることは容易に想像がつきますが、それがデータで確認できれば、自信をもって取り組みを推進できます。
部活動や生徒会活動への参加状況といった属性情報を取得しておかないと、こうした検証もできず、「注力に値する教育的価値」を持つことを生徒や校内外の関係者に示すことは難しくなります。

❏ 授業外に設けた学びの場への関わり方でも

上例の部活動に限らず、特色ある教育活動の一環として設けた学びの場や、進路講演、補習や講習などにも同じことが当てはまります。
ある行事に積極的に参加した生徒と、それ以外の生徒(何となく参加、または不参加)を分けたとき、両者の行動や思考に「意図した変化(成長)」の差が生じていないなら、その行事のあり方を改めるべきです。
補習に参加させた生徒には、その後の学習行動の改善、成績不振からの脱却を期待したいところですが、学びに対する姿勢に変化が見て取れないようなら、補習の内容や働きかけが適切でなかったということです。

繰り返しになりますが、ある評価項目で学校全体の回答分布に十分な変化がなくても、ある属性を共有する集団では有意な変化(改善)が見て取れることがあります。
そうした変化を見落とさないためにも、回答者の属性情報の取得(回答させる/他のデータと結びつける)は疎かにできないはずです。

❏ 先生方の「現況の捉え方」も立場によって異なる

学校評価における教職員アンケートも、ある属性(所属する分掌など)を持つ先生方の回答分布が、他の属性の先生方のそれと大きく異なっていることは珍しくありません。むしろ「普通」のようです。
キャリア教育や進路指導について「生徒の志向や資質を活かした指導が行われている」かどうかを尋ねたとき、進路指導部や学年進路の先生方と、それ以外の先生方で全く違う結果が出ることもしばしばです。
進路プロパー/学年進路の先生方からの評価の方が相対的に厳しいものになっていたケースでは、指導が学年主導で進められており、継続性や年度を跨いだ統一性に欠けているようにも見受けられました。
逆に、学年団の先生方からの評価が厳しいケースでは、進路部から発信される情報が不足していたり、指導方針の打ち出しが弱かったりすることに、問題の根っこがあるように感じました。
部活動指導や学校行事に関する評価項目でも、先生方の属性(指導への関与の有無、所属分掌など)による違いが大きく出る傾向があります。
属性に分けた場合のアンケートへの回答分布が大きく異なることは、組織間でのコミュニケーションや目線合わせの不足といった問題の存在を示唆します。こうした問題を検出するにも、属性情報を加えたデータの解析が重要な役割を担うとお考えください。

❏ 保護者や地域の方についても「属性」を意識して

保護者について取得すべき属性情報は以下のようなところでしょうか。

  • 子ども(生徒)が所属する部活動(運動部/文化部/帰宅部)
  • 子ども(生徒)の進路希望(進学/就職/未定)+親としての希望

記名式でアンケートに答えてもらうなら、如上の情報も生徒への調査で把握したものと突き合せれば済む話ですが、無記名式の場合は、用紙に回答欄を設けて答えてもらうしかありません。
中高一貫校の場合は、生徒が内進生か外進生かで、評価項目ごとの集計結果が「別物」のごとく違ったものになることもあります。同じホームルームの生徒の保護者でも、内進/外進の差がしばしば観測されます。
進路希望による違いは、進路に関する学校からの情報量や、進路指導の方針への納得度といった評価項目に強く表れます。{対象×評価観点}ごとに、これまでの指導の強みと弱みを知り、改善に役立てましょう。
あまり多くを尋ねても警戒される/面倒に思われるばかりです。訊く項目は、教育改善に向けた課題形成に必要な事柄に絞ることが肝要です。
地域の方の場合、学校の教育活動との関わり方が「属性」を分けます。
生活圏を共有しているだけの方、学校行事などへの協力者、生徒を送り出す立場の方では、答えられる範囲も、学校への評価も違うはずであり、これらを一緒くたにしては、見えるものも見えません。
どの属性の方が、どんなところに問題意識を持つのかを峻別して捉えた上で、改善課題に優先順位をつけないとリソースはすぐに枯渇します。
なお、地域の方の属性情報は、回答者に選んで答えてもらうより、質問紙を回収したときに、アンケートを担当する先生が書き込んでいく方式を採った方が、揺らぎも小さく抑えられて好適です。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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