学習目標の示し方(その2)~目標に立ち戻り成果を確認

前稿(その1)でお伝えした通り、学習目標は導入フェイズでしっかりと、生徒が達成検証できる表現を与えて示すのが鉄則ですが、目標を示しっぱなしでは、確かな学びは保証されません。
学びを終える前のアウトプットを通して、目標が達成できたかどうか点検させ、不足があればきちんと補うようにさせなければ、「目標を与えただけ」「やらせっぱなし」ということになってしまいます。

アウトプットに用いる課題や問いを、導入フェイズでの目標提示に利用すれば、

・解を導くべき具体的な課題であるため、生徒にとって達成検証が容易

・仕上げで同じ問いに立ち戻るため、学びをきちんと仕上げさせられる

といったメリットがあります。
先生方にとってもそれぞれ別の問いや課題を用意する手間が減ります。生徒個々のニーズに応じた周辺知識の拡張には、ここで作った単元理解の軸をもとに一人ひとりのタスクで取り組ませればよいはずです。

単元導入をどう行うかを考える前に、「学びを通じて、生徒に自力で答えを導いて欲しい問題」をターゲットとして設定しましょう。
ターゲット設問が決まれば導入フェイズの設計は半ば終わったようなもの。授業内のアクティビティやタスクも、ターゲットに照らすことで選択の精度も上がりますし、配列を考える上でも判断が容易になりますので、50分間を通した授業にも一本筋が通るはずです。

2014/12/25 公開の記事を再アップデートしました。

❏ 単元名だけでは、何を学ぶかイメージできない

目標を提示するといっても、授業の冒頭で単元名を伝えてみたところで学びの導入にはあまり役に立たないのは前稿でも申し上げた通りです。
例えば、黒板に「余弦定理」と大書きされても、生徒はまだ何も習っていないだけに何を学ぶかすら、具体的なイメージは浮かびません。
生徒が「達成を目指すべき状態を示すこと」「(それに照らして)達成したかどうか検証ができること」の2つが目標を伝えるときの鉄則であり、如上のやり方はどちらの要件も満たしていません。
ただし、単元名を板書してはいけないということではありません。生徒が後日ノートを見直すときに「見出し」としては使えます。
導入フェイズでは何も書いたり伝えたりせずにおき、ひと通りの学びを終えたタイミングで「今日学んだことにタイトルをつけるとすれば?」 と生徒に尋ね、考えさせてから残して置いたスペースに板書するという方法も、(ちょっと技巧に走り過ぎる感じがしなくはありませんが…)上手くはまればとても効果的だと思います。

❏ 学んだことを使って解くべき課題で目標提示

繰り返しながら、学習目標は「これから学ぶことを使って、生徒自身が答えを導くべき問い」(解決すべき課題)の形で、導入フェイズ/授業の冒頭で見せてしまうのが、最も効果的で汎用性も高い方法です。
問いを示したら、あれこれと単元内容の説明を始めてしまう前に、少し時間を取って、生徒に手持ちの知識や発想の範囲で「仮の答え」を作らせてみましょう。当然ながら未習の内容が答えの核になりますから、きちんとした答えにはなりません。
しかしながら、「現時点での知識や理解だけでは答えられない部分」に気づけば、その不明を解消したいと思いますし、ここはどうなっているんだろうという疑問は少し掘り下げれば興味に転じます。
こうして生まれた不明解消への欲求や掘り下げてみたい興味こそが、生徒一人ひとりにとっての「本時の学びに取り組むことへの自分の理由」になるのではないでしょうか。
学び終えて、改めて答えを作り直してみれば、最初に作った仮の答えとの差分に、本時の学びの成果が表れ、学力の向上や自分の進歩をより明確に認識できるという副次的な効果も期待できます。

別稿でご紹介した「空所を残した板書」も汎用性の高いやりかたです。

本時の学びを通じて、答えられるようになってほしい問いの正解となる文章をベースに、ポイントとなる部分を空けておくだけです。

画像

空所は、埋めることを前提として認識されますので、このような板書をされると、見た者(=生徒)の頭には「どういう語句や文が下線部に補われるのか?」という問題意識が浮かんできます。生徒に限らず、隠されているものは覗きたくなるものです。

ひと通りの学びを終えたら、先回りして空所を埋めずに、「さて、空所に何を埋めた?」と尋ねてみましょう。正しく埋められていれば、本時の目標の最小限のところは達成できたことが生徒自身も確認できます。

❏ 獲得を目指すものすべてで「目標に照らした達成検証」

学習目標は、その日の授業や単元で扱う内容を理解することや、そこで登場する知識を覚えることだけではありません。
各単元の内容を学ぶことを手段に、生徒は様々な能力や資質(21世紀型能力で言えば「基礎力、思考力、応用力」)の獲得を目指します。
また、学期や学年での指導を通して身につけさせたい行動様式(学習方策や学びへの姿勢、学びの場でのふるまい方)なども、教科学習指導を通じて実現すべき目標でしょう。
これらすべてについて、目標を正しく認識させて学びをスタートさせ、学び終えたら、その目標に立ち戻って「成果のたな卸し/達成検証」に取り組ませる「流れ」を授業の中に作り上げて置くことが大切です。

教科固有の知識や技能の獲得だけなら、テストや提出課題などの採点結果でかなり精度よく目標の達成検証ができるはずです。
思考力(問題発見力/問題解決力など)は、資料や課題を与えて、その中に問題を見つけたり、矛盾を探して対処することを求める問いを用意して、目標理解と達成検証の材料にさせましょう。
いずれも、授業を終えるところで「問いの答えを自力できちんと作る」ことを求めれば、「たな卸し」ができますし、不足を補う(さらに調べる、考える)ことを求めれば、学びはより深く確かなものになります。
学習者として自立に向かう中で獲得させたい行動や姿勢もまた、それに相応しい形で目標(=目指すべき到達状態)を示す必要があります。
その手段のひとつが「活動評価ルーブリック」です。観点別に、生徒を主語にしたセンテンスで望ましい/実現すべき行動を段階に記述した評価規準は、到達を目指すべき「目標」そのものでしょう。学びを終えたら、それに立ち戻り、自己評価(達成検証)をさせましょう。
提示された様々な目標に照らして、生徒が自分の取り組みやその成果を評価する中でしか、学習者として自立する、より良い自分になるとための「課題形成」(メタ認知、適応的学習力の獲得)は進みません。

学びを体験するたびに、「できるようになったこと」のたな卸し(目標に照らした達成検証)を行わせることが、一人ひとりの学びをより深く確かなものにし、学習者としての自立に向かわせるということです。
その3に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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