休校明けの授業を円滑に再始動する

緊急事態宣言の解除を受けて、一部の地域では学校が再開されますが、当然ながら再開を以て学校に日常が戻るわけではなく、むしろこれからの課題の方が大きいのではないかと思われます。休校期間の遅れを解消すべく先ずは年間授業日程を組み直すことからでしょうが、カレンダー上で授業計画をスライドさせるだけでは解消できない問題が多々ありそうです。再開後の教育活動をいかに円滑に素早く正常化できるかは、再開前の準備にかか…

知見の共有と実践の浸透をスムーズに

休校が続いたり再開しても分散登校が余儀なくされたりする中、制限の多い教育環境でも生徒の学びを止めないようにと各地の先生方が様々な工夫をなさっています。普段と同じスタイルで授業ができず、止むを得ず代替で投入した方法が期待以上にうまく機能し、「日常が戻った後も応用していきたい」と手応えを得たケースも少なくないようです。 ピンチを迎えて知恵を絞ることで、知の地平は大きく広がるようです。ここで生まれた知見…

休校中の学びをより大きくするために(まとめページ)

緊急事態宣言を受けて休校措置が続く中、教育活動をストップさせないために様々な取り組みがなされています。教科学習指導においても、 zoomをはじめとするコラボレーションツールを活用した双方向授業 YouTubeでの授業動画配信など普段の授業に近づけようとする試み 宿題を与えて自習させ、期限までに提出させる長期休みと同じ手法 といった様々な方法が見られますが、「深く確かな学び」の実現可能性において学校…

休校が続いて、何をやればいいのかわからない?

休校が長引く中、勉強の遅れや受験への不安を抱えつつ「何をやればいいかわからない」と悩む生徒も少なくないようです。学校が与えた課題や自分が立てた計画に沿って勉強を進められている生徒と、「わからない」といって立ち止まる生徒の間には、普段よりも早いペースで学力差が拡大していると思われます。 具体的な学習課題を用意したり、リモートでも学びを進められる環境の整備を図ったりといった、指導者/学校側での取り組み…

リモート学習で「答えが一つに決まらない問題」を扱う

答えが一つに決まらない問題は、生徒が社会に出て多々直面するものであり、教室の中でもそれらへのアプローチを学ばせる必要があるのは明らかです。解内在型の問いがメインだった従来の教科学習では、立場によって賛否が分かれる問題や解法が未確立の問題を扱うのはどちらかと言えばレアでしたが、今後は教室で扱うケースも増えていくはずです。様々な見方で問題の把握を試み、原因や解決策を考えていくことになりますが、そこで欠…

対面以外の環境で実現する対話的な学び

対話的な学びの必要性は広く認識されるようになってきました。学びの中で対話を増やすことの目的は活動性を高めて生徒を退屈させたり居眠りさせたりしないことでないのは言うまでもありません。対話の拡充を図ることで目的とするのは、 などであり、いずれも対話以外に実現の方法はなさそうです。非常事態宣言が延長され休校が続く中、対話的な学びには大きな支障が生じています。休校が解除された後でも分割登校でクラス全体での…

休校中の学びを把握~リモート指導の好適手法の確立へ

緊急事態宣言を受けて、休校措置が取られ対面での授業は行えない状況が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかる見込みが立たない中で、今の状況に暫くは耐えることになりそうです。休校中も生徒の学びを止めさせないよう、生徒が自宅で取り組む課題を与えたり動画を配信したりと様々な努力が重ねられています。環境整備が先行していた学校ではテレビ会議システムを応用した双方向性の実現も図られていますが、…

授業内での活動を通した達成感・充足感

思考力・判断力・表現力を養うために主体的、対話的で深い学びの実現が求められていますが、思考とは、解くべき課題があってはじめて発動し、対話を通じて着想や知識を交換することで拡張・深化が図られるもの。表現力を磨くためにも、考えたところを相手に伝える活動は欠かせません。観察の窓も、生徒を活動させることではじめて開かれます。討論や練習、作業などの活動を通じて多くの生徒が充足感を得ているクラスほど、学力向上…

休校期間中の自学自習をより確かなものにするために

新型コロナウイルスの感染拡大で5月の連休まで対面での教育活動は事実上不可能になりました。この状況下では、生徒一人ひとりがどれだけ主体的・意欲的に学習を進めるかが問われますが、生徒の意欲と力量に任せるだけでは学力差は大きく広がるばかりです。 しっかり取り組んだ生徒は、単元の理解や知識を十分に蓄えるだけでなく、学びのスキルも高めているはずです。その一方、形だけ整えて終わりという生徒や、表面をなぞること…

解いたことで成長ができる問題こそが"良問"

どんな問いを立てるかは、授業デザインの要です。学習目標を認識させるにも、答えを仕上げる中で学びを深く確かなものにするにも、問いは大きな役割を果たします。予習に取り組ませるときも、範囲を指定して「予習しておきなさい」と指示するだけのときと、指定範囲をしっかり勉強すれば答えられる問いが用意され、その答えを作るために教科書や参考書に当たるのとでは、学びの質に大きな違いが生じます。やり終えたときに生徒が得…

その宿題、本当に必要ですか? #INDEX

宿題や課題は、生徒の力を伸ばそうという先生方の気持ちの現れであるため、ときとしてあれもこれもと与えてしまい、膨張の一途を辿りがちです。こなしきれないほどの宿題には、生徒から「仕上げきることの喜び」を学習する機会を奪うなど様々なリスクがありそうです。知識の拡張は、生徒の興味や進路希望によって必要となる範囲が異なるはずなのに、最大限の網をかけて全員に課しては、効果を上回る弊害を招きます。定着を図ること…

その宿題、本当に必要ですか?(その3)

シリーズタイトルとした「その宿題、本当に必要ですか?」は、宿題を指定する側が常に自問しなければならない問いだと思います。生徒が学習に振り向けられる時間は有限であり、その貴重なリソースを最大限に活かすには、より効果的な課題を選び出して行く必要があるはずです。日々の授業で生徒に課している宿題・課題の一つひとつには、履行を通じて達成すべき目標状態(=やらせる目的)があるはずですが、その目的はどのくらい達…

その宿題、本当に必要ですか?(その2)

宿題や課題を通して、授業で学んだことを課題解決に使ってみることは達成感を原資に次の学びへのモチベーションを高める効果に加え、課題に向き合って答えを仕上げる中で、不明の解消や興味の掘り下げも図られますので、学びを深く確かなものにします。前稿で挙げた3タイプの宿題のうち、「授業内容繰り返し型(記憶再現タイプ)」や「主教材と別に進める知識拡充型」に偏ってしまっては、如上の効果が最も期待できる「知識活用・…

その宿題、本当に必要ですか?(その1)

先生方の多忙はすでに広く認知された社会問題ですが、生徒の忙しさもかなりのところまで来ているように感じます。こなしきれないほどの宿題を与えても、ひとつひとつの課題にじっくり向き合えなくなってしまっては本末転倒。仕上げ切らないことを常態化させてしまっては一大事です。教材でかばんを膨らませても、学びが膨らむとは限りません。生徒に取り組ませているものを一度たな卸しして、必要性を判断した上で断捨離を試みる必…

LHRで授業評価を行うことのメリット

生徒による授業評価アンケートには、授業毎に教科担当の先生が教室で用紙を配って実施するパターンと、ロングホームルーム(LHR)内でクラス担任の先生の指導のもと全授業について一度に実施するパターンとがありますが、どちらが良いかとのご相談を受けることがあります。結論から言えば、LHR内での実施の方がメリットが多いと思います。大学のように学生ごとに履修科目がバラバラ、ホームルームが実質的に機能していない場…

活動性と学びの成果を繋ぐ鍵~課題を通じた目標理解

別稿でも書いた通り、授業時間内における学習者の活動性は以前と比べて高まっていますが、せっかくの活動が学びの成果につながっているかと言えば、必ずしもそうとは言えないケースも見受けられます。様々なアクテビティが授業時間内に配列され、生徒も反応よく活動していても、学びの目的であるコンピテンシーの増大という結果が伴わなければ、授業内の活動は自己目的化してしまっている可能性があります。 対話を通した「気づき…

単元ごとに設定するターゲット設問

習ったことを使ってみる機会を整えることは、学びを深く確かなものにするには欠かせません。ターゲットとなる設問を導入フェイズで見せておけば、何を学ぶかをしっかり理解させることができますし、学び終えてその問いに立ち戻って答えを仕上げさせれば、「わかった」だけのところで学びが止まってしまうことも防げます。課題を与えて解決の方法を考えさせたり、必要な情報を集めて知に編む工程を経験させたりする中で、学習方策の…

リモート学習の可能性と十分な成果を得るための前提要件

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、昨日から多くの学校で休校措置が取られました。所用があって駅前の商業施設を訪ねたところ、フードコートで楽しそうに談笑している高校生やカラオケ店に入っていく中学生らしきグループを見かけましたが、大丈夫なんでしょうか。 休校という非常態勢をとった意味が伝わっていないような気がするような、しないような…。ここで愚痴っても始まりませんが。 それはさておき、自宅学習の課…

負荷の高め方 #INDEX

教材や課題の難易度は、理解や解決に必要とされる知識の量、思考の深さ、手順の複雑さ、見通しの立てにくさや解法が求める戦略性といった様々な要素の組み合わせで決まりますが、学習者がそれらをどう感じているかを確かめながら、計画的・段階的に調整を図る必要があります。負荷が急激に高まれば、わからない/できないという失敗体験をあっという間に積み上げてしまい、科目の学びに対する自己効力感を弱めてしまった生徒は学び…

負荷の高め方(その3)

事前指導で獲得させる学習方策と失敗への耐性 適正な負荷をしっかりとかけ続けるることは、生徒の学力を最大限に伸ばす上で欠かせませんし、乗り越えるのがそうそう容易でないハードルに挑む中でこそ、生徒の側での学び方への工夫も生まれ、結果的に学習方策の獲得も進みます。中長期の指導に亘って適正な負荷を維持するには、生徒が感じる課題の難度や得意/苦手の意識の変化などを常に把握しておく必要があることは申し上げるま…