授業評価アンケートの結果の見方、活かし方(その1)

授業評価アンケートの実施後、しばらくしてお手元に届く集計結果には様々な数値が記載されていますが、その見方を良く知ることは評価結果を授業改善に活かすために欠かせません。
下のイラストは、当オフィスが監修、株式会社ディーシーアイが開発・運用している「授業評価&生徒意識アンケート」の個人票(授業評価集計)ですが、これを例に、集計結果として出力されたデータを見るときのポイントを考えてみたいと思います。

 

❏ まずは、学力向上感の換算得点をチェック

まずは、オモテ面中段にあるⅠ~Ⅶの各項目の集計値などが表示されている以下の箇所から見て行きましょう。特に、Ⅶ学習効果「学力の向上や自分の進歩の実感」の評価結果(破線枠内)に注目です。

 

授業改善を進める上で、真っ先にチェックすべき最も重要な数値は、別稿「授業評価アンケートにおける目的変数は学力向上感」で申し上げた通り、質問7番目の【学習効果】の換算得点です。「授業を受けて学力の向上や自分の進歩を実感できるか」という質問に五択で答えてもらった結果を、以下の方法で得点に換算してあります。

得点換算の方法

 

❏ 必達目標は75ポイント、相対的な位置も確認

必達目標は、「肯定的な回答の割合が概ね9割」となる75ポイントですが、グラフの下に添えた表の2行目にある「得点」はこの値に届いているでしょうか。
また、校内での先生別の集計値の分布を示した、オモテ面下部にある以下のヒストグラムに照らし、ご自身の相対的な位置もご確認ください。


今回の集計結果が該当する階級は、オレンジ色でマークアップしてありますが、もしこれが75ポイントの位置を示す縦の破線や分布のピークとなっている階級よりも左側にあるようなら、校内の優良実践に倣ってキャッチアップを急ぐ必要があります。
 ※改善に向かう手順については、本シリーズ内で後述いたします。

❏ 前回からの変化で、改善行動の効果を把握

前掲の「得点」の直下には、「前回」の集計値と、前回から今回にいたる「変化」の2つの数値が表示されています。ここでも先ずⅦ学習効果の数値を点検しましょう。


前回比較の変化量は、当期の授業改善への取り組みがどの程度の成果を得たかを示唆しますので、プラスが大きな値になっているようなら一定以上の改善成果があったと言えます。
何が奏功して改善に繋がったのか、振り返って要因の言語化をきちんと行っておきましょう。当期の改善成果を確かなものにして次期に繋ぐためにも、効果的な改善策を教科内/校内で共有するにも必要です。
その一方、Ⅶ学習効果の得点が、前回の結果で75ポイントを下回りながら、今回の「変化」に表示されているのがマイナスの値になっていたとしたら、「キャッチアップが必要な状況下で適切な改善行動がとれなかった」ということになります。
改善に向けて立てた作戦を徹底できたか、作戦そのものは合理的なものであったか(=別のアプローチを考える必要はないか)をひとつひとつ点検してみる必要があります。

❏ 担当するクラスや科目が変わった場合

年度が切り替わって受け持ちのクラス・科目が変更になっている場合、前回比較の結果をもって、改善/後退を単純に判定することはできませんが、それでも前回比較には注目が必要です。
授業評価アンケートの結果は、担当クラスの生徒が備える学習者としての特性と、先生の教え方のマッチングの度合いを示します。
もし、Ⅶ学習効果の得点に大きな後退があったり、75ポイントに届かなかった場合には、生徒の特性に合わせた教え方・学ばせ方のアジャストがうまくできなかった可能性を疑ってみるべきだと思います。
次稿(その2)に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一