適正負荷(用語解説)

学習の場では、課題が容易すぎれば不足している力に気づく機会を失わせ、逆に難しすぎれば挑戦する意欲そのものを奪いかねません。学びを前進させるには、少し背伸びさせる(≒クリアするのに努力と工夫を必要とする)程度の負荷が掛かっていることが求められます。
生徒による授業評価アンケートのデータを解析してみると、「ちょうどよい」では負荷の不足が疑われ、「少し難しい」と半々になるくらいの難易度水準が、学習効果を最大化することが推定されます。

難易度の設定は負荷の感じ方を確かめながらから転載。


生徒が備える学習方策や目的意識、準備の程度などによって「負荷への耐性」(どのくらいまでの難易度なら、工夫しながら取り組みを続けられるか、課題解決や目標達成から脱落しにくいか)は変わります。
与える課題の選択のみならず、課題の段階化や支援手段の整備、加えて学習に向かうレディネスを整えさせることなど、複合的に対策を講じることで、本当の意味での「適正な負荷」を実現しましょう。

正解を導けたとしても、課題が易しすぎた場合、「できたことを確認」するだけに止まります。不足している理解などに気づかないと、学びは先に進みません。工夫と努力を求める課題を与えることで、自分の理解の穴や思考の不足が見え、学び直しや学習方策の改善が促されます。

導き出した解を、評価/採点の基準に照らしたり、周囲の生徒の成果と比較してみたりする中で、自分の発想や手持ちの知識の不足などに気づき、それをどう補っていくかを考えるところに、より深い学びが実現しますし、そこで必要な学びのスキルも獲得できます。cf. 相互啓発
一方、負荷が大きすぎる(≒難しすぎる)課題では、生徒は途中で手が止まり、学びをあきらめてしまったりします。指示へのレスポンスなどを見極めながら、問いの分割や土台の追加などで、先に進めるよう学びを支えていくこともまた、指導者としての大切な役割です。
同じタスクでも、協働や対話の要素を加えて取り組ませると、集団知の活用、気づきの交換によって、課題の達成可能性が高められます。そうした「支援の手札」をどれだけ揃えて教室に臨めるかが問われます。

1.学習方策の獲得や目的意識の強さを捉えて、難易度を調整する

学習方策や目的意識に応じた負荷をしっかり掛けるでは、科目の学び方を生徒がどのくらい身につけているか、学ぶことへの自分の理由をどれだけ強く持っているかによって、「適正な負荷」の位置が変わることをお伝えしました。学習行動の観察や、アンケートなどを用いてそれらの把握するところが、難易度の調整を進めるときの起点です。

2.課題に挑む準備にしっかり取り組ませることが前提要件

十分な準備をさせることで「適正な負荷」を実現では、生徒に十分な準備と仕上げを求め、実行させることが、課題に前向きに取り組ませる前提条件とお伝えしました。準備した生徒は、多少ハードルが上がっても「難しいけど面白い」と感じる一方で、準備不足の生徒はお手上げ、自らチャレンジするのを諦め、正解が示されるのを待つようになります。

3.難易度の調整の基本は、「問い」の分割と積み上げ

知識活用機会としての課題付与と難易度調整では、付与した知識・理解に生きて働く場を与えているかどうかで、難易度調整の成否が左右されることをデータで示しました。負荷調整の最も有力な手札である「問いの分割」も、問いが用意されていなければ使いようがありません。生徒が出した答えにさらに問いを上乗せすれば、思考の深化も図れます。

4.教え合い・学び合いの活用などでハードルを下げる

前掲の活動性が苦手意識を抑制する機能とその限界では、対話と協働の要素が多い(=活動性が高い)授業ほど、科目への苦手意識が生じにくいことを示しました。また、本時の学びで目指していることをしっかり認識させることも、生徒の理解力を底上げします。課題の難度を下げる前に、学びやすさ/達成可能性を高める工夫を先行させるべきです。

5.振り返りを経たリトライで、達成感と成功体験を付与

確認した結果に基づいてきちんと学びを仕上げさせるでは、課題に挑ませて理解度などを確かめた後にどう「学びの仕上げ」に取り組ませるかが重要とお伝えしました。確認したところで学びを終えさせては「できなかった」ことを印象に刻むばかりです。振り返りで洗い出した学びの不足を補い、「できた」との体験に切り替えさせることが肝要です。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一