2020年対応型の"予・復習と授業のサイクル"

新しいことを学ぶ授業に備えて下調べをする予習と、習ったことをしっかり覚えるための復習という学習サイクルは、正確な理解と再生という従来型のニーズを満たすには十分だったとしても、高大接続改革で求められる”教育の強靭化”に応じるには見直しが必要になります。
思考力・判断力・表現力を高めるには、対話による学びの深まりを作る必要があり、授業もおのずと対話の場面を作らなければなりません。
しかしながら、対話の盛り上がりや集団としての調和で終わってしまっては、個人のうちに学びの成果を固定できず、コンピテンシーの増大という目的から離れていくばかりです。
対話で膨らんだ学びや気づきをしっかり自分のものにする場としての復習という位置づけに代えていくことが必要です。

また、教えてもらえることをきちんと理解できる準備を整えるだけの予習では、自ら問題点を見つけ、それを解決しようとする姿勢も育めません。教科書を読んで、生徒自らが問いを立てられるようになってはじめて、学習者としての自立に近づいたと言えるのではないでしょうか。
予習に取り組ませる中で、「教えてもらう前に自分で考えてみる/課題の解決に挑もうとする姿勢と方法」を学ばせるには、予習を習慣化しなければなりませんが、予習がきちんとできない状態の生徒に、ただ「頑張れ」というのでは、あまりに乱暴だと思います。

次回の予習ができる状態を作って授業を終える

予習→授業→復習のサイクルを組み直す
予習ができる状態にして教室を離れさせる
次回予告は、授業の導入フェイズと同じ機能を持つ
自力でできるようになるにつれて徐々に手を放す
授業のサイクルそのものを変えてしまうという手も

復習は間隔をおいた”重ね塗り”で(その1)

授業終了時に用意したアウトプットが最初の機会
家に持ち帰っての仕上げで2回目の再記銘と理解の深化
次回の授業では、持ち寄った答案の吟味で更なる学び
cf. 新しい学びの中で「覚える力」が持つ意義

復習は間隔をおいた”重ね塗り”で(その2)

単元を終えるときに作るプレゼンテーション
新しい単元を学ぶときの復習を通じて
次のタームで学ぶことの関連項目を考査の出題範囲に
数か月前の単元に、定期的に立ち戻る

学ばせ方の転換で、家庭学習の充実が求められる

課題の履行率を高く保つ前提条件は具体的な課題付与
履行を妨げる要因を切り分けて、ひとつ一つ解消する
終業時に行う”仮のアウトプット”
チームへの貢献という要素を組み込む

“アクティブ・ラーニング”で学習時間が減る?

能動的に学ぶようになれば、学習時間も伸びるはず…
集団としての調和で終わっていないか
課題が解決されて、それ以上の探索の必要がなくなった?
対話の相手が生徒同士に限られることも問題か

■関連記事:

原因から考える家庭学習時間の延伸策(全4編)

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

この記事へのトラックバック

5分間アウトプットの費用対効果Excerpt: 学力の向上や自分の成長や進歩を実感するには、学習を通じて達成すべきこと(=学習目標)の把握教え合い・学び合い、対話を通じた学びの深まりという2つの要素に加えて、習ったことを課題解決に活用する機会が欠かせません。学習目標の把握には「解くべき課題」が必要であり、活動を自己目的化しないためには「目標の認識」が不可欠という因果関係から、これら3項目は強固な相関で結ばれます。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2017-12-07 08:09:44
予習・復習、課題のあり方Excerpt: 1 予習・復習で何をさせるか1.0 予習・復習で何をさせるか(序) 1.1 予習・復習で何をさせるか(その1) 1.2 予習・復習で何をさせるか(その2) 1.3 予習・復習で何をさせるか(その3) 1.4 予習・復習で何をさせるか(その4) 2 与えるべき課題はどんなもの2.0 与えるべき課題はどんなもの(序) 2.1 与えるべき課題はどんなもの?(その1) 2.2 与えるべき課題はどんなもの?(その2) 2.3 与えるべき課題はどんなもの?(その3) 3 過去問演...
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2017-12-26 07:31:40
学ばせ方の転換で、家庭学習の充実が求められるExcerpt: 2020年対応型の"予・復習と授業のサイクル"で書いた通り、新しい学力観に沿って、学ばせ方や授業デザインの転換を図る中で、当然ながら、予習や復習、授業外課題の位置づけや取り組ませ方も変わってきます。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2017-12-26 08:00:49
学習時間の目標値と達成管理の方法 #INDEXExcerpt: 高大接続改革を機に、新しい学力観にそった教え方の転換を図る必要があります。どの学校でも、指導計画の見直しや授業デザインの研究も意欲的に進められているものと拝察しますが、同時に、学ばせ方の転換で家庭学習の充実が求められる ことも、しっかり念頭に置くべきです。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2018-01-19 06:55:24
予習・復習で何をさせるか(その1)Excerpt: 新学期の授業開きで生徒に求めた予習や復習への取り組み方を、生徒はどのくらい身につけているでしょうか。また、その指示に従った生徒は学力と学習意欲を向上させているでしょうか。ノートチェックや小テストで履行を促したところで、「取り組んだことの成果」を生徒が実感できなければ、教える側の思いを押し付けただけになってしまいます。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2018-10-24 06:17:51
知識の獲得は個人の活動を通じてExcerpt: 授業デザインを考えるとき、生徒が個人の活動でも取り組めるものと、集団の中での協働でしか学ばせられないものとを区別しておかないと、扱うべき学習内容を限られた授業時間と指導回数の中に納めきれなくなってしまいそうです。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2018-11-26 07:36:42
記憶に格納する知識、外部参照する知識(その2)Excerpt: 脱ゆとり路線を維持しつつ、主体的、対話的で深い学びを実現し、思考力・判断力・表現力とともに主体性・多様性・協働性を獲得させるという課題に、これ以上授業時間を増やす余地がないという状況下で挑むには、何をどこで学ばせるのかを戦略的に判断する必要があります。無駄を省く(効率を高める/重なりをうまく利用する)授業の外に持ち出す(家庭学習)やるべきことに軽重をつける(取捨選択)といった対策を組み合わせることになりますが、その際の前提のひとつが、記憶に格納する知識と外部参照する知識の線引きです。 ...
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2018-11-29 07:51:31
学習指導、進路指導、探究活動で作るスパイラルExcerpt: 学習指導と進路指導という二本柱をしっかり立てれば成立したのがこれまでの指導計画でしたが、次期学習指導で加わる探究活動を組み合わせるとなると、単純にもう一本の柱を立てれば済む話ではありません。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2018-12-10 06:49:51
大学入学共通テストの試行調査の結果から(まとめ)Excerpt: 共通一次やセンター試験の出題には、できるだけ高校現場の邪魔をしないようにとの配慮が感じられましたが、2年後に迫る新テストは一転して、大学の教育の在り方のイメージのもと「これからの高校教育はこうあるべき」との方向性を明確に示そうとしています。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2019-01-29 07:08:55