【シミュレーションを通じた学習法ガイダンス】
新学期には、新入生に対して様々なオリエンテーションやホームルーム合宿などが計画されているかと思います。進級した生徒に対しても新たに学び始める科目の授業開きでは学習法のガイダンスが行われます。
いずれも生徒に対して「こんな行動を取って欲しい、こんな意識をもって日々を過ごしてほしい」というメッセージを伝える大切な場です。
しかしながら、期待を伝える前には、生徒がこれまでに経験してきたことの中で何を獲得し、何ができるようになっているかをしっかりと把握する必要もあります。既に通過しているところにゴールを置いたり、手が届かないところに目標を掲げたりしないようにしたいものです。
2015/03/31 公開の記事を再アップデートしました。
❏ ファーストコンタクトでは観察に主眼を
生徒が新たに学ぶ科目では、授業開き(初回の授業、ガイダンス)などで「先生方が生徒に期待する学び方」が提示されるのが普通です。
生徒同士の人間関係の形成や生活指導を兼ねて、新生活への切替をより効果的に行うべく、オリエンテーション合宿などを行う学校も少なくありません。
これから学ぶ科目について、それぞれを担当する先生方から「どんな心構えで学びに向き合って欲しいか」を伝える貴重な機会ですが、教える側が期待することを一方的に伝えるのは好ましくありません。
新入生は、高校での学びを知りませんから、実際の場面を想定し、考えながら自分なりにアレンジするのは困難。予復習の方法にしろ、ノートの使い方にしろ、先生の指示をそのまま実行するのが普通です。
やり方を指示され、その通りの行動を取り始めたら、生徒がどんな学習方策/学び方を身につけているか、観察の機会を持てなくなります。
高校に入学してくる生徒は、小・中学校の9年間で、様々な授業を受ける中、自分なりの学びのスタイルを身につけています。それらを観察、正確に把握しないことには、生徒の特性に合わせた教え方・学ばせ方のアジャスト(授業の進め方に織り込むこと)はできません。
教え方と学び方のマッチングは学習効果を最大化する上でのカギです。
具体的な予習・復習の方法などを説明する前に、まずは生徒が、課題にどう取り組むか/指示にどう反応できるかを観察することが肝要です。
❏ 模擬授業を挟み、予習と復習のシミュレーション
授業開き(学習オリエンテーション)では、学習法を伝えようとする場面では、何も説明せず、教材だけ提示し、「10分後に、この範囲の授業をします。それまでに予習を完了しなさい」と指示してみましょう。
生徒は、その指示に面食らうかも知れませんが、入学までに身につけたもので高校の学習にどう向き合えるかを観察する機会が生まれます。
教材は、教科書の中で、生徒の興味を刺激しそうな箇所をピックアップすればOK。新たに用意する必要はありません。該当箇所を読み、中学で学んだことを土台に答えを考えるべき問いだけ与えておきましょう。
生徒が予習している様子を観察していると、いっこうに辞書を開こうとしない生徒もいるでしょうし、やたらとアンダーラインは引くくせに、気づきを文字に起こすそぶりを見せない生徒もいるかもしれません。
何か書き込んでいる生徒がいたら、手元を覗き込んでみましょう。頭の中でどんな思考がめぐらされているか、窺い知るチャンス。生徒の思考様式を把握しておくことは、授業デザインに方向を与えます。
こうした観察を通じて、目の前にいる生徒が「何を身につけ」「高校の授業に適応するのに何を補う必要があるか」を捉えることは、指導計画に沿って授業を進める上でどんなアレンジ/調整が必要かを探るために欠かせないステップです。しっかり踏んでいきたいところです。
❏ 生徒が中高の学びのギャップを感じ取ったところで
予定した「予習時間」が経過し、生徒の準備があらかた整ったら、指導計画に沿った(+観察を経た調整を加えて)「授業」を始めましょう。
既習内容の確認のための発問から始まり、予習で作った答えを発言させてシェアする場面、生徒同士の話し合いなど、本格的に授業が始まってから生徒が体験する「学びの場」を見せていくことで、中学の学びと高校からの学びの違い(+共通点)に気づかせていくのが目的です。
ここでの「授業」がひと通り終わり、自分が身につけてきたやり方だけでは、高校の学びに対応しきれないと感じた生徒は、「さて、どうしたものか」と考えを巡らせ始めているはずです。
この段階に至ってから、「こういうやり方もある」「成績が大きく伸びた先輩たちはこんなふうにやっていた」と、好適な方法を例示すれば、最初から一方的に「ああしろ、こうしろ」と言われた場合より、気づき/学びは、はるかに大きくなるものです。
ちなみに、入学までに身につけた方法で、予習と授業に上手く対処できた生徒に、わざわざ別の方法を強いる必要はないはずです。「角を矯める」ことでの悪影響の方が大きいのではないでしょうか。
❏ どんな学習方法を提示すべきか
この仕事をしていて現場で頑張る先生方から割とよくご相談をいただくことに、「生徒に奨めるのはどんな勉強方法がいいのでしょうか」というものがありますが、授業準備や事後学習でやるべきことは、先生方がどのような授業をデザインするかで異なります。
巷には勉強法(ノート術やら暗記法やら)に関する書籍があふれていますが、そこ書かれていることは、それ自体がどれほど魅力的で効果的に見えるものであろうと、先生方が工夫して作り上げる「教室での学ばせ方」とマッチしなければ、期待するような効果は得られません。
学力観がパフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへと切り替わる中、教室での学ばせ方は大きく変わってきていますし、それに応じて好ましい予習・復習のあり方も大きく変化しています。
こうした変化を見落としたり失念したりして、先生方ご自身が中高生だったときの成功体験を伝えたところで、今の生徒にとって益あるものになる保証はありませんよね。
ノートの取らせ方にしても、既に整理された知識をしっかりと頭に叩き込むのに向いたものと、情報を整理し知識に編む方法を学ばせることを目的としたものとでは、自ずと違ったものになります。先生方がどんな板書をするかによっても、最適なノートスタイルは変わります。
思考の過程や気づきを記録に残し、それをベースに深く広い学びを実現しようとするには、きれいに仕上げた板書/ノートよりも、加筆とリライトの痕跡が残るものの方が好ましいのではないでしょうか。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
