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ひと括りに「理解度の確認」とまとめてしまいがちですが、その方法は発問、小テスト、課題など様々。生徒同士の話し合いを観察するなどの方法もあります。方法それぞれに得手/不得手な領域があり、どれかに偏っているようでは、広く的確な理解確認は難しくなります。
また、授業を進めるときのフェイズ(場面)ごとに、確認を行うことの目的も違います。それぞれの目的に合致した確認方法を正しく選択できるかどうかが、理解確認という指導者行動の効果を左右します。
理解度の確認を「場面✕方法」のマトリクスの中で整理し、少し俯瞰的に考えてみようというのが本シリーズの主旨です。
2014/09/10 公開のシリーズをアップデートしました。
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先生の話をだまって聞いているだけの生徒の表情を、教壇から注視したところで、理解の確認はできません。「わかりましたか」を繰り返しても大した効果はなさそうです。先ずは発問や指示などで「生徒の反応」を引き出し、頭の中(思考)を覗き込む観察の窓を開きましょう。
#01 目的とするところ(理解度の確認はなんのために行うのか)
次のフェイズに進むためのレディネスを確かめ整える
・本時の学びに入ろうとするとき(導入フェイズ)
・新しく学んだことを課題解決に使わせようとするとき
・学びの仕上げに向かわせるとき
確認と教え直しは最小限に、学び直しで互恵関係を
理解確認は、先生方の伝達スキルを磨くための起点
場面と観点に応じた確認方法の適切な使い分けへ
#02 発問による確認(問い掛けて言語化させる「理解の確認」)
新しい概念等を学ばせるときの前提理解を確かめるとき
確認と再記銘はできるだけコンパクトに
説明を進める途中、そこまでの理解を把握するとき
学んだことを使ってみる機会の前にもきちんと確認
まとめの段階など、学んだことを整理・深化させるとき
#03 小テストの活用(覚えたかどうかを確かめることを超えて)
発問による確認の強みは即時性と掘り下げの力
正誤の分布をデータで記録できるのが小テストの強み
小テストは「覚える力」を養うトレーニングの場
小テストの余白で生徒とのコミュニケーション
cf. 小テストをもっと効果的に(全3編)
#04 提出課題の点検で(学習内容の理解以外にも確認すべきこと)
論述答案で確かめるのは、理解の拡充と深化が図れたか
・的確な確認ができるよう、採点基準や設問条件を整える
・論述タスクを課すときの準備指導と事後指導
課題の仕上げは生徒自身で(添削で肩代わりしない)
拡張型調べ学習などのレポート、プレゼンシート
学習のプロセスの各フェイズで、「生徒がそこまでの学びでどれだけの知識と理解を獲得し、生きて働くものになっているか」を常に確かめることはその先の学びにしっかりとした土台を作るのに欠かせません。
本時の学びに入る前には、前回までに学んだことが身につき記憶に残っている(想起できる)かどうかを確かめますが、確認を通して記憶の再記銘/学習内容の最定着を図るという意図もあるはずです。
新しい概念や知識を導入したら、課題に挑ませる前にそこまでの理解を確かめたいところ。失敗からの学び(転んでからの立ち上がる練習)も必要ですが、事前の確認不足という不作為で「返り討ちにあう場面」を不用意に経験させるばかりでは、やがては挑む気持ちも萎えさせます。
ひと通りの学びを終えた時には、アウトプット(思考の結果や過程の言語化)を通じてインプットに不備や不足がないかを確かめますが、確かめたところで学びを終えさせてしまっては、「深く確かな学び」は実現しません。答えの仕上げ、知識の拡充まで、学びを設計しましょう。
理解度の確認は、先生方の授業者としてのスキルアップにも欠かせません。確認を怠っていると「伝えたつもりなのに伝わっていないこと」を見落とし、伝達技術を改善する好機を逃すリスクを抱えます。理解度の確認を丁寧に行うことで、伝達技術の向上を加速させましょう。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一