学習活動において、生徒が学習目標を正しく認識していることは、積極的な取り組みの前提であることに加え、生徒の側での情報補完を容易にすることで生徒の理解力を底上げするなどの効果も得ます。
また、目標とするところをきちんと把握できていないことには、目標を達成できたとの実感も曖昧になります。達成感はモチベーションの原資ですが、それが希薄になることのデメリットは計り知れません。
学習目標をはっきり示すことで苦手意識の発生を抑えられるとのデータもあります。何をやろうとしているのかわからず、部分理解が全体理解に広がらないことが、その科目に対する自己効力感を引き下げます。
学習を通じて目指しているのは、単元に固有の知識や技能を身につけさせることだけではありません。それらを駆使した問題解決力をはじめとする思考力など、多岐に亘る能力・資質の獲得も目的です。学び方そのものについても、より良いものを身に付けさせる必要があります。
これらについても、到達を目指すべき目標状態を示しておくからこそ、生徒はそれに照らした「振り返り」でメタ認知・適応的学習力を高め、学習者としての自立に向かうことができるのではないでしょうか。
2015/03/06 公開の記事を再アップデートしました。
目標を伝えているかどうかで学習効果が大きく変わる
生徒自身が達成を検証できることが目標提示の要件
学びの本題に入る前に学習目標を正しく認識させる
単元名だけでは、何を学ぶかイメージできない
学んだことを使って解くべき課題で目標提示
獲得を目指すものすべてで「目標に照らした達成検証」
学びの方策、資質・スキル・姿勢にも到達目標
モデルを示して上手にガイド+生徒が工夫を挟む余地
学習方策を獲得したか、きちんと点検&フォロー
生徒に提示した方法の妥当性も確かめて絶えず改善
生徒が学習目標を正しく認識して学びに臨んでいるかどうかは、テストや行動観察だけではとらえられません。授業評価アンケートの結果やリフレクションシートの記述を通して把握に努める必要があります。生徒側の自己認識を確かめる機会の整備にも力を入れていきましょう。
授業に臨むに当たり毎時間の目標をちゃんと伝えているつもり(あるいはシラバスで示したはず)なのに、アンケートをとって調べてみたら、目標提示の項目で思いもよらぬ低評価を受けることもあります。
先生方が目標を伝えていても、学習者側でそれを受け止められるだけの前提が揃っていなかったら、伝えたことは伝わりません。様々な可能性も考慮に入れて、効果的な学習目標の提示を実現しましょう。
学習目標提示における鉄則
言葉で伝えた目標は、これから学ぶ者には理解困難
教える側とこれから学ぶ側との間にある認識ギャップ
認識のギャップを埋めるための「準備学習」
先を見渡すロードマップとしての「単元シラバス」
学びを終えての振り返りで、学習目標を改めて認識
本時の学びの先にあるものを、終了フェイズで示す方法
ジャンル別記事インデックス
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一