履修科目選択と進路希望調査(志望理由の確認)

11月も半ばを迎え、高校2年生は3年時の履修科目選択に頭を悩ませている頃かと思います。1年生も2年での文理選択が迫ります。
履修科目/文理を選択させるに当たり、生徒の希望を調査するだけでは指導が完結しないのは言うまでもありません。生徒一人ひとりの状況を確認し、より好ましい選択に向かわせる必要があります。
何となくの選択では、その先に一人ひとりの志向や資質に見合った未来が待っている可能性は下がるばかりだと思います。選択に、しっかりとした理由を持たせる(=選択の結果に向き合わせる)ことが重要です。
どんな進路を思い浮かべているかを訊いてみないと、苦手科目を避けるだけの消去法の選択になっているかもしれませんし、入試の仕組みを知らないままでは、いざ出願というときに困ったことになります。

❏ どんな進路を想定した上で行った選択か

履修科目や文理を選択させるにあたり、進路希望調査票のようなものを用意して、生徒に記入させるとき、進路希望(志望の学部、学科さらには大学名など)も一緒に回答させていると思います。
ただ回収するだけで、中身を十分にチェックしないと、進路の希望と履修科目の選択がちぐはぐな生徒が混じっているかもしれません。
その段階で修正させる必要があるのは当然ですが、受験の仕組みがこれだけ複雑になってくると、生徒の進路希望のすべてについて入試科目まで先生が把握しておくのは容易ではありません。
生徒に調査票を記入させるときに、現時点で希望している進路(想定している受験校)を挙げさせた上で、履修が必要になる(=受験科目となる)科目も調べさせ、併記させるようにしているケースがあります。
進路希望調査を機に、それまでにも取り組ませてきた学部・学科研究を仕上げさせる好機になっているとのお話を伺いました。
ただし、生徒が自分で調べた結果には、見落としや誤解もあり得ますので、調査票の記入内容は先生方の目でもしっかり点検しましょう。

❏ その進路を選ぼうとしているのはなぜか(志望理由)

希望進路とマッチした履修科目を選択できていたとしても、その希望が明確な理由に基づくものでなかったり、十分な材料を集め熟慮した結果のものでなかったとしたら、何にもなりません。
希望している大学・学部の一つひとつについて、志望の理由もしっかりと言葉にさせて確かめていきましょう。
どんな体験を起点に、どんなことを調べ、何を考えてきた結果として思い描いている進路(未来)なのか、選択に至る工程を振り返り、文字に起こしてみることは、生徒にとっても自分の将来に向き合う好機です。
履修科目/文理の選択の時点で選んだものは、最終的に選択する進路とは違ったものになっても構いませんが、その時点での自分の考えを言語化して「外」に置いてみると、その先の内省もぐんと深まります。
上手く表現しきれないところには、考えを深め切れていないことや調べ尽くしていないことが隠れているのではないでしょうか。
調査票に書かれたものを挟んで、先生方との対話(面談)を重ねていけば、「より良い選択」「より確かな選択の理由」に近づけるはずです。

❏ 結論を固めさせる前に、しっかり対話を重ねる

進路希望調査に限りませんが、何かを尋ねてそれを文字に起こさせる/言葉にさせると、それが当人の意識の中で固定してしまい、その後の思考の範囲を狭めてしまうリスクがあります。
進路希望と結びつけた履修科目調査を行うときには、提出→面談→再提出→確定というような循環的な流れを設定しておくのが好適です。
すでに調査票を提出させてしまったケース(すでに11月の後半に入りましたので、けっこうあるかも)でも、最終確定までに面談を経た再提出などの「選択のやり直し」の機会を与えてみてはいかがでしょうか。
提出した内容を「既定のもの」と生徒が認識してしまうと、その後の選択肢は狭まり、より良い未来との出会いが遠ざかりかねません。
視野をさらに押し広げさせるべく、学部学科や大学についてもう一度調べさせたり、進路行事や探究活動の中で残してきたリフレクション・ログを読み直させてみたり、選択に見落としはないか確認させましょう。
履修科目の希望調査を終えるときに「ゼロ学期の始まりに志望理由を言葉にする」という宿題を与え、取り組ませていくのも好適です。
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現高2までは、これまでに培ってきた進路指導のノウハウで十分な成果が得られるかと思いますが、新課程組(現高1)にも同じ方法で大丈夫とは限りません。大学入学共通テストの科目選択もなかなか複雑です。
今期の履修科目選択指導を通じて、2025年度以降に目を向けた指導の改善課題を特定できるか、それを次年度以降の指導にしっかりと反映させられるかは、出口成果に大きな影響を与えるはずです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一