昨日の記事で考察した「教科書・参考書にマークアップさせる方法」に加えて、空所を設けて重要語句などを埋めさせる「サブノート式のプリント」を用いている授業も多いと思います。
こちらの方法であれば、 「重要語句を一文字たりとも自分の手で書いていない」という、マーカーで色を塗るだけの方法が抱える問題の多くは解消できますが、それでもなお、様々な解決すべき課題が残ります。
2014/12/11 公開の記事を再アップデートしました。
❏ 空所を残したサブノート式に仕立ててみると?
前回と同じベース教材を、サブノート式に組み替えたとしたら、こんなイメージになるのではないでしょうか。
すでに印刷されている文字をマークアップする場合と異なり、空所が設けられているので、「何が入るんだろう?」 という問題意識を刺激できるというのがこの方法の利点の一つです。
教科書や参考書をしっかりと熟読して全体像を捉えてから、空所のひとつひとつに埋めるべき語句(ときに文章)を考えさせ、手を動かさせれば、「テクスト(ここでは教科書など)に当たり、必要な情報を拾い上げる」練習にもなり、タスクを終えたときには、一定の理解と必要な知識の獲得が期待できます。
❏ 生徒自身でテクストに当たらせ、空所を埋めさせる
しかしながら、実際の教室で、生徒に自力で空所を埋めることを求めている場面はあまり見かけません。空所を埋め始める前の「教科書などの熟読」もなされていないケースが多いように思います。
先生が説明しながら埋めるべき語句を示していくのでは、せっかく問題意識を刺激したのに、それが主体的な学びに繋がりません。
ときには、生徒が空所の前後に目を通して「空所に何を埋めるか(何が問われているか)」を意識する前に、先生がいきなり説明を始めてしまうことも。これでは、問題意識すら刺激されません。
空所を「問い」として機能させなければ、指定された箇所をマーカーで色を塗るのと大差なしです。先に教科書などをしっかり読ませておかなければ、必要な情報を拾い上げ、集める練習にもならないはずです。
一連の作業(読む、考える、埋める)を、フェイズごとの「目的」を意識しながら進めさせることで、「空所を設けたことでの学び」を実効のあるものにしていきましょう。
サブノート式のプリントを「授業進行の効率化」だけのものにしては、生徒にとっての実のある学びにはなりにくい、ということです。
❏ 埋めるべき空所を増やすほど、着眼点が散漫に
サブノート式のプリントは、多くの知識を効率よく与えようという意図で作られることが多いため、空所は多めになりがちです。
すべての空所が同じ重みになっては、刺激された問題意識も多方に分散し、本時の主眼や単元理解の核となる概念などに意識(疑問や興味)をフォーカスできなくなってしまいます。
これでは、別稿でご提案した「空所を残した板書で行う導入」のような、端的な効果は期待できそうもありません。
本時の主眼を代表しえる「ターゲット設問」をプリントの冒頭/トップなどに置いたり、枠囲みで目立たせたりするなどの一工夫も求められるところです。
❏ 仕組みを理解する「つなぎ」の部分を軽視させない
空所を埋め終えた後は、もともと印字されていた「つなぎ」の部分には視線が注がれなくなるのも、サブノート式が抱える弱点です。
この「つなぎ」こそが、個々の知識を結び付けて単元全体を理解する上で、重要な役割を持っているのではないでしょうか。
これを脇に置いて重要語句だけを取り出して覚えても、その単元をきちんと理解しているか疑問です。
かといって、つなぎの部分まで伏せてしまっては、生徒は何を問われているか想像がつかなくなります。
空所の占める割合は、文章のうち10~15%程度が限界でしょう。
これを超えて、考えたり調べたりする手掛かりが不足すると、「解明したい」という欲求は「わけがわからない、めんどくさい」に取って代わられてしまいかねません。
❏ 空所補充の弱点を補う、記述・論述タイプの課題
こうした穴埋め式プリントが抱える問題を解消するには、獲得した知識を「文章」に再構成させることで、きちんとした理解が形成できたか確認できる課題を用いるのが好適です。
以下のようなターゲット設問(前述)を、プリントの冒頭に印字しておき、次回までの宿題にしてしまうのはとても効果的です。
空所に補った語句を○個以上用い、△について□字で論述せよ。
これで、十分な理解を伴わない断片的な知識を蓄積しただけなのか、きちんと理解して活用できる知識を形成できたのかの判定ができます。
授業終了前の5分間で、答案のまとめ方を考え/ペアで話し合わせてから自宅に持ち帰って仕上げさせると、答案の完成度が高まり、生徒はより強い達成感を持ち、それを原資とする学びへの意欲を膨らませます。
クラス内の学力・学欲差から、全員に論述を課すのが難しい場合でも、ひとつの課題から複線的なハードルを作るという方法もあり得ます。
以下の記事も併せてご高覧いただければ光栄です。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一