主体的・対話的で深い学び~どこまで実現したか #1

現場で頑張る先生方が「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指して様々な工夫を凝らし、日々の授業改善に取り組んでおられる様子に大いに刺激される今日この頃です。このキーフレーズを定義し直し、構成要素ごとに到達段階の指標を書き出せれば、新しい授業観にそった学ばせ方の転換がどこまで進んできているかの検証もできそうです。

2018/06/19 公開の記事をアップデートしました。

❏ 検証の指標は、授業者ではなく学習者の行動と成果

主体的・対話的で深い学びというキーフレーズから修飾要素を取り払ってみると、「学び」という単語が残ります。
当然ながら、「学び」の主語は生徒であり、先生方がどのような授業を行っているかではなく、生徒がどういう行動を取り、そこでどんな成果を得ているかが検証を行うときの観点です。
どんな手順で授業を進めるか、どんなアクティビティを配列するかという「指導者行動にフォーカスした議論」に終始しては、工夫や取り組みの方向性を見失いそうな気がします。
また、「主体的」「対話的」「(学びの)深さ」という個々の構成要素の成否も1か0かではなく、実現度には段階性があるはずです。
こうした整理をすることで、個々の生徒あるいはクラスという集団に対するこれまでの指導の成果と課題が明らかになり、今後の方向性を的確に探り当てていくことができるのではないでしょうか。

❏ 主体性とは、自らの目的意識と方法考案への姿勢

「主体的(に学ぶ)」というのは、授業内の活動性が高い(≒レスポンスよく声を出し、体を動かしている)ということではないはずです。
例えば生徒の学習行動を観察していて、以下のような状況が観察されたら「主体性」を獲得/発揮していると言えるのではないでしょうか。

  1. 生徒一人ひとりが、科目の学びに自分なりの目的や課題を持って参加している
  2. 眼前の課題を解決するのに何をすれば良いか、自ら考案・選択しようとしている

他にも、「先生の指示に従うだけでなく、活動の必要性や意味を理解して自発的に取り組んでいる」といった行動も期待したいところです。

❏ 評価結果を数値化して残すための方法(例)

上記のような評価規準/到達目標を設定できたら、評価結果を数値化して残しておくことも検討していきたいところです。
1. はリフレクションシートに残されたログの解析や授業評価アンケートの集計結果を見ることで、ある程度の把握ができるはずです。
2. は教室の中での観察で捉えることができそうです。毎回の授業で全員を観察して状況を把握するのは無理かもしれませんが、定期考査で区切られた期間に行た評価の結果を累積してみては如何でしょうか。
その姿勢が明確に見えたときの「A」、不足はあれど姿勢が窺えたときの「B」、姿勢が見られないときの「C」が期間中にどう分布するか、個々に/全体で把握すれば、検証指標として十分に機能するはずです。
成果を数値化して記録することは、重ねてきた工夫が辿り着いた効果的な指導法を教科内/校内に伝え、さらなるブラッシュアップに付すにも重要です。(cf. 効果測定は、理解者と賛同者を増やすため

❏ 対話の目的は、発想の拡充と自己の客体化

授業中に元気に発言している/話し合っているからと言って、それだけでは「対話的」に学んでいるとの評価になり得ません。
対話の相手とのやり取りを通じて、知識や経験、考え方などを交換し、自らの思考や発想の限界を拡張できたときにはじめて、対話的な学びが実現したと言えるはずです。

対話が成果を得たかどうかは、対話に参加する前に作らせた「課題に対する仮の答え」と、対話を経て「作り直した答え」との差分で測ることができます。(cf. 最初の答えと作り直した答えの差分=学びの成果
ワークシートに解答欄を2つ設けておけば、両者の比較もできますし、両方を埋めなければならないので、他人の答えにただ乗りする「フリーライダー」ではいられなくなるはずです。
また、協働で課題解決に取り組むとき、パートナーやチームに貢献しようとしているか、場に応じた適切な行動をとれているかも評価の対象であり、観察して記録に残しておきたいところです。

❏ 「学びの場での対話」は話し合いだけではない

ひとことで「対話」と括ってしまいがちですが、その相手は、ペアワークやグループワークでの相手だけではありません。
先生の発問を受けての「思考」(内面での言語化)と「表現」(外在化する思考)も、対話の一つです。
他の生徒の発言に耳を傾け、それまでの自分の考えの上に何かを積み上げられるかどうかも大切です。
書物を読んで、先人が拓いた知に触れてそれに対して問いを立てることも、自らの問いへの答えを求めて文献(教科書や資料集、副教材も含まれます)に当たることもまた、別の形の対話です。
こうした「様々な対話の形」をリストで示しておき、本時/単元の学びで、それぞれを自分はどれくらい体験したか」を尋ねた結果を「対話的な学びの実現度を測る指標」としている事例もありました。
こうした「学びの場での対話」がどんな場面に存在しているか、生徒自身がより良く理解するようになったとしたら、それも指導の成果、対話的な学びに向けた姿勢/考えを育んだことになると思います。
その2に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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