板書の技術 #INDEX

科目や単元の内容を学ばせる中で様々な能力・資質を獲得させるには、相応の学習活動(対話的な学びやPBLなど)を授業に組み込む必要があります。(cf. カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計する
これまで以上に充実を図るべき学習活動に十分な授業時間を割くには、活動(思考、対話、協働)の土台となる知識・理解の伝達にもたもたと時間をかけられません。教室でしかできない学びを充実させることに加え、板書などを効果的に用いた知識・理解の伝達の効率化、その技術のさらなる向上を図ることが求められます。
教室が「答えを伝える場」から「答えを作り出しながら答えの作り方を学ぶ場」に変わる中、板書の役割や用法も変わってきます。学びの過程で得たもの(情報等を整理した結果、問いに解を導く手順、課題に取り組んでの気づきなど)を固定し、共有するためのツールとしての板書のあり様をあらためて考えてみました。

#01 深く確かな学びの実現に適切な板書は不可欠

板書の効果的な利用は、確かな学びの土台
音だけで伝えられた情報は「音速」で消えていく
音声による伝達には、板書で補うべき構造的弱点も
加筆や修正ができる「ダイナミズム」は板書の強み
板書案作りを通して伝達技術の向上を図る
板書案を描き出してみるからこそイメージが膨らむ

#02 伝えるべきものを効率的に確実に伝えるために

現在位置を把握させるのも板書の役割
口頭での説明や指示に集中させるためにも
辿り直し/振り返りを前提に消すタイミングを熟慮
思考のプロセスを認識と記憶に刻める板書か

#03 授業展開の各場面での板書とそこで学ばせるもの

導入フェイズで復習したことは黒板の片隅に固定
展開フェイズ:途中の問いや着目点も板書で言語化
振り返りながらの加筆で、学びを深める
情報の整理や構造化のプロセスを見せて学ばせる

#04 板書を辿り直して、学びの振り返り

黒板上に残ったものを活用した、学びの振り返り
振り返りには、生徒自身による言語化という要素を
空白の枠を残しておき、まとめフェイズで埋める
提示したものを書き写すだけの板書にしない
板書は、問い掛けと気づきの言語化とセットに

#05 生徒のノートに残ったときをイメージして

板書はその場限りだが、ノートはあとまで残る
機能と重要度の2軸で考える黒板上の表現
表記のルールを決めたら生徒にも伝えて共有
板書案作りは、継続的な改善の効果的な手段
生徒の工夫や他の先生の発想を、ノート点検で学ぶ

#06 板書を補完するツールとしてのプリント

教材の増加が参照箇所を見失うリスクを招く
学びの記録を集約し、成果と気づきを散逸させない
参照箇所を見失わせない、参照記号の統一付与
穴埋めだけでは知識・理解の断片化を助長する
パワーポイントを使うときのハンドアウト

#07 生徒の学習活動を視点に考える板書のあり様

先回りしては、生徒は学びの過程を経験できない
生徒主体の学びでは、板書はダイナミックに変化
繰り返し使うものは、スライドで作り込んでおく
もう一歩踏み込み、解説動画も効果的に活用
生徒が紙と鉛筆でできることの限界も意識して

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板書の技術、教具の使い方



データ(下表)が示す通り、伝達技術に改善課題を抱える授業では、授業内活動の充実が図れません。学習内容の中でポイントとなる箇所をしっかりと生徒の印象と記憶に刻み付けるには強調の正しい方法の確立も重要な意味を持ちます。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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