思考力と表現力を養うには
結論を出さずに終える授業
授業の終わりは「今日の授業の内容をまとめて」というのが定番のスタイルかもしれませんが、ちょっと発想を変えて、問いに答えを出さずに次の授業につなぐというやり方はいかがでしょうか。授業を「復習→導入→展開→演習→まとめ」という固定的な構成で考える必要はありません。結論を与えてしまうことで学びや思考を締め括らず、問いをオープンにしたままま授業を終えることが、生徒に考え続けさせることにつながることだってあ…
生徒に問いを立てさせる(続編)
前稿(本編)では、問いを立てることは教材に深く関わることであり、問いを立てることで学びは深く、広いものになると申し上げました。ジャンルやタイプを問わず、どんな文章/テクストでも、問いを立てながら読むことで書き手との対話が生まれます。グラフや図表のデータ、画像などの言語以外の方法で表現されたものも同じです。このようにメリットの多い「問いを立てる」というタスクには、教室で早いうちから取り組ませるべきだ…
PISAが測ろうとしている「創造的思考力」
大きな問いに挑ませるとき~問いの分割と準備の学習
与えられた問題が大きすぎて、どこから手を付けていいものやら見当もつかないときがあります。そのまま何の手立ても打たず、問題の加工もせずに教室に持ち込んで生徒に挑ませたとしたら、生徒の手と頭は止まったまま、貴重な時間を失います。下手をすれば「わからない、できない、手に負えない」という印象だけを残すことにもなりかねません。別稿「入試問題を授業の教材に使うときに」でも申し上げましたが、こうした場合、いくつ…
出題研究を通して"問い方"を学ぶ
アイデアを膨らませ、まとめる方法への習熟
対話が思考を育み、深い学びを実現する(まとめ)
新課程への移行を機に、「新しい学力観に沿った学ばせ方への転換」が急ピッチで進んできました。これまでの取り組みとその成果を検証して次フェイズに向けた新たな課題形成を図る動きも、各地に見られます。学校広報においても、これまで/これからの取り組みをただ並べて見せるだけの場合と、きちんと効果測定を行い、その中に見出された新たな課題に具体的な戦略を描いて取り組む姿勢をしっかりと伝えている場合とでは、学校に向…
正しい選択を重ねられる生徒に育てる
どんな場面でも生徒を指導をするときに最終的に目指すのは、「正しい選択を重ねられる生徒に育てる」ことだと思います。これは進路指導に限らず、生活や学習の場面についても言えることだと考えます。正しい選択が行えるようになるには、幾つかの要件を満たす必要がありますが、そのうち最たるものは以下のようなところでしょうか。 1では、必要な情報は何かを特定し、それを効果的に集める力(土台となるのは「読んだり、聞いた…
評価スキルの獲得とメタ認知の向上~思考・表現力を養う
高校教育でも、その先の大学教育や社会生活でも、思考、判断、表現の力が今後ますます重視されていくことには間違いなさそうです。思考力や表現力(加えて判断力)を効果的に鍛えるには、振り返りの正しい方法、言い換えれば評価スキルを身に付け、メタ認知を高めていくことが「前提要件」ということになります。これらは、「勉強を好きにさせる学ばせ方」にも通じるアプローチだと思います。 2018/02/19 公開のまとめ…
論述問題対策の前段階~要約の練習(後編)
答えが一つに決まらない問題や、多量の文章や資料を読ませて、そこで理解したことを元に思考させ、その結果を論述させる問題が増えてくる中、その前段階である要約についても、しっかりと力をつけさせておく必要があるのは、前稿で申し上げた通りです。要約力の向上には、先生方による添削も重要でしょうが、いつまでも隣にいてあげることもできません。生徒自らが、より良い要約にするには何が必要かを見つけ出せるようにしてあげ…
論述問題対策の前段階~要約の練習(前編)
新課程への移行で、思考力、表現力、判断力の重要性が高まりました。読んで理解したことを元に思考を展開し、その結果に他者の理解と共感を得られるよう適切な表現を与える力を育み、評価する手段として「論述問題」を課すシーンも、以前に増して多くなっているかと思います。読んだり話し合ったりして集めた様々な材料(情報、知識、気づき)を土台に、自分の考えを展開する前に、しっかり行わせたいのが、それらの材料を筋道を立…
教わって知ったことvs気づいてわかったこと
授業のスタイルは実に様々ですが、個々の授業を特徴づけるパラメータの一つに「問い掛けの多さ」があります。教わったことを一つひとつしっかりと覚える努力も大事ですが、学び手の側からすれば、自らの気づきがないものを覚えるだけでは面白みもなく、自分ごととして学びに向かう意欲も維持しにくいかと思います。調べさせたり、考えさせたりして、生徒が自ら気づいてわかったことをどれだけ多く出来るかが問われるところ。調べた…
発言がどこから生じているかを読み取らせる
文章を読み、あるいは発言を聞いて、言葉に表現されている内容を正しく理解することは大切であり、「読むこと」の第一の目的であることに異論を差し挟むつもりはありません。しかしながら、時には直接的に表現されていることの奥にあるもの、主張の根拠や、発言に込めた意図、筆者のバックグランドや根っこの思想まで推し量り、さらには「この場面ならこの人は何と言うか/どう主張するか」まで踏み込んで考えて読むことも必要では…
生徒の意見や所感をシェアする
対話を通じた深い学びを実現するには、ペアやグループでの生徒同士の話し合いに加えて、問答を通じた「先生との対話」や、教科書や資料、副教材を問いを立てながら自力で読んで理解する「テクストとの対話」の充実も図る必要があるのは、昨日の記事で書いた通りです。また、生徒同士の対話にしても、バリエーションは顔を突き合わせ直接的に交わす会話(話し合いや教え合い)だけではありません。先生と他の生徒の間で行われている…
生徒にも学ばせたいファシリテーション・グラフィック
先生方の板書などを通じて、生徒は情報を整理し、構造化する方法を学んでいます。(cf. 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得)結果として残った板書やプリント/スライドなどは、各単元に固有の知識をすっきりと提示し、生徒が覚える上での利便を図るものになっていると思いますが、それらが出来上がるまでの工程そのものにも生徒に学ばせたいことがあります。話し合いなどの場で、メンバーの発言(発想や意見)を拾い上げ、…
学力観の変化は良問と悪問の分け方を変える
資料を与えて読ませる/探させる、そしてその先に
助言や指示は、生徒自身がじっくり振り返ってから
生徒に課題を与えて取り組ませ、上手くいかなかった場合に、的確な助言・アドバイスを行って、次のチャレンジで上手くいくように導くのは指導者の役割でしょうが、生徒が自ら「何をどうすべきか」を考え尽くす前に指導者が「先回り」してしまうと小さからぬ弊害が生じます。新課程の土台にある「21世紀型能力」では、その中核である「思考力」の構成要素のひとつに「メタ認知・適応的学習力」があります。メタ認知・適応的学習力…
プロセスに焦点を当てた問い
教室で発している問いのうち、「結果」を尋ねるものと、「過程(=プロセス)」を訊ねるものの割合はどのくらいでしょうか。新しい学力観の下では「答えを出すにはどのようにすればよいか、どう確かめるか」と解決へのアプローチそのものを尋ねる問いも増えて然るべきです。正解が何であるかを訊ねるときはもちろんですが、「~が~になるのはどうしてか」という理由を聞くときも、実は、思考の「結果」を引き出しているだけです。…