授業改善での協働のあり方

授業改善行動の実効性を高めるために(その1)

課題形成から改善プラン作りの準備 授業改善を継続的かつ確実に進めていくには、現況把握に基づく課題形成、改善プランの策定、改善行動の効果検証からなるPDCAサイクルを着実に回す必要がありますが、様々な学校の取り組みを拝見していると、正しくサイクルを回せているケースばかりとは限らないようです。模試の成績や授業評価アンケートの集計結果など、改善課題を発見するのに十分なデータが揃っていても、合理的な手順に…

教科会に期待される役割~ちゃんと機能していますか?

教科会が年間スケジュールに組み込まれた定期開催となっている学校ばかりではなく、重要な確認事項があるときにのみ開催するというケースも少なくないようです。教科内の情報共有は主に職員室などでのカジュアルな対話を通じて行われているだけで、議論やすり合わせをしっかり行う場はなかなか確保できないというお話も耳にします。会議はそれ自体が時間という教育リソースを消費する活動ですので、できれば少ないに越したことはな…

自教科以外の授業も参考に「学ばせ方」を見直してみる

授業の進め方や学ばせ方を研究するとき、同じ教科の他の先生の授業を参考にするのが「普通/当たり前」のことだと思いますが、倣うべき実践を探す先は「他の教科・科目の授業」まで広げてみるのも好適です。授業の進め方には、教科ごとに「こういったもの」という固定観念みたいなものがあるのではないでしょうか。ご自身が中高で受けていた授業は思いのほか、意識に深く刻まれており、指導の組み立てを考えるときも、知らぬ間にそ…

大きな成果が出た時にこそ~実践の共有と継承

進学実績にしろ、模擬試験や外部検定の成績にしろ、あるいは授業評価や学校評価のアンケートにしろ、成果が出たときの行動こそが重要だと思います。結果を受けた振り返りというと、どうしても課題/反省点の洗い出しに意識が向きがちですが、成果をあげた好適な取り組みにも、しっかりとスポットライトを当てましょう。失敗に原因があるのと同様に、成功にもそれをもたらした要因があります。それをきちんと分析的に捉え、共有と継…

新たな取り組みを始めるときの鉄則

学校に限ったことではありませんが、新しいこと(学校なら、教科・科目の新設、授業デザインの更新、新しい評価方法の導入など)にチャレンジしようとするときには、きちんと踏んでおきたい「手順」というものがあります。目的とするところの確認や、その達成に必要な事柄の洗い出しもそこそこに、思いつくまま拙速に走り始めては「成果」は不確かなはずです。成果検証の方法も考えておかないと「やりっぱなし」になりがち。次の指…

授業評価アンケートの導入に際して

本年度もまた、様々な学校で新たに「授業評価&生徒意識アンケート」を導入いただくことになりました。改めて、御礼を申し上げます。各校の授業改善がこれまで以上に大きく進むよう、当オフィスも出来る限りを尽くして参る所存です。授業評価アンケートが目的とするところ、実施の方法やお届けする帳票の内容、加えて集計結果を授業改善にどうお役立ていただけるかなど、実施前にお伝えしておきたいことを以下の7項目にまとめてみ…

改善が遅れた授業のキャッチアップを支える

授業評価アンケートの集計結果や、模試や外部検定のデータを拝見していると、改善を重ねてより良い指導を実現している授業/先生/クラスがある一方で、キャッチアップが必要なのに改善が遅れてしまうケースも少なからず見られます。そのままにしては、評価や成果が振るわなかった先生ご自身もお困りでしょうし、そこで学んでいる生徒にもデメリットが及びます。自校に通うすべての生徒に「より良い学び」を約束するために、改善が…

問いのあり方に焦点を置いた授業研究

以前の記事で、教室でしかできない学びを充実させるべく、授業は問いを軸に設計するのが好適と申し上げましたが、これを裏返して考えるとターゲットに設定した問いによって、授業の質/生徒がそこで学べることが大きく変わってしまうということです。先生方が集まって「より良い授業」を目指した研究や研修を行うとき、教え方や学ばせ方に焦点を置くケースが多いように思いますが、学力観が大きく変化した今、問いのあり方をテーマ…

優れた実践を見て言語化する(見取り稽古)

剣道や合気道では「見取り稽古」というのがあります。ほかの人の稽古や試合を見てその技術を学ぶことですが、単に上手な人の技術を真似るだけではありません。上手な人のやっていることを基準に、今の自分の技術を相対化して、より良くなるための課題を明確にすることで今後の練習に方向性や目標を見出すのが、この稽古が目的とするところです。先生方が授業改善への取り組みの中で行う「相互参観」は、言うならば教科学習指導にお…

共通教材を使用していても…効果測定と実践共有を着実に

複数の先生方が同じ教科書・副教材を使ってクラスを分担するケースは少なくありませんが、定期考査の共通化(評価の公平さを保つには不可欠です)に加えて、プリントやワークシートなども共有が図られているのに、教材の使い方などに担当者間で小さからぬ違いが生じていることが少なくありません。指導案の解釈にも差がありそうです。例えば、ワークシートを埋めさせるところでも、説明を聞かせるだけの先生もいれば、問い掛けて生…

教科間で行う、課題量の把握と調整(その3)

生徒が抱える課題の総量を適正範囲に収めるように調整するにしても、家庭学習にどのくらい時間を投じさせるべきなのか、合理的に導かれた目安値がないと、増やすか減らすかの判断もつきません。3年間あるいは6年間を見通した学習指導計画において「この時期にはこのくらいの時間を家庭学習に充てさせる」という目安をきちんとした根拠に基づいて決めたいところ。受験学年で単元進行と入試対策を並行することが多い理社に十分な時…

教科間で行う、課題量の把握と調整(その2)

教科間で調整を行いつつ、課題(予復習、宿題など)の総量を適切な範囲にキープするには、いくつかの数字を把握しておく必要があります。ひとつは「生徒一人ひとりが授業外の学習に充てている実際の時間」。一般的には「家庭学習時間」と呼ばれますが、放課後の自習室で勉強をする時間や通学の電車・バスで参考書を広げる時間なども含めるべきですので、呼称は「授業外学習時間」の方が適切かもしれません。これに加えて、各教科の…

教科間で行う、課題量の把握と調整(その1)

家庭学習にきちんと取り組ませるため、各教科が与える課題量を学年内で把握し、調整を図っている学校があります。こなしきれない量の課題(予習・復習、宿題)を生徒が抱えて履行率が下がる/仕上げが不十分になることがないように、逆に、やるべきことが見つからずに個々で取り組む学習活動が不十分になることがないように、というのがその意図するところです。 ある科目を担当する先生の「生徒の学力を伸ばそうとの熱意と善意」…

効果測定は、理解者と賛同者を増やすため

以前の記事「 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)」 をお読みいただいた先生から、「効果測定や成果検証の必要性は十分にわかっているが、作業が増えることに負担感もあり、どうしても二の足を踏んでしまう」とのご感想を頂戴しました。確かに、指導の効果測定を行うには相応の手間がかかります。「足し算だけのビルド&ビルドから抜け出そう」との文脈なのに、そこに無駄な作業を新たに作るようでは、何を目指…

教育手法開発・指導法改善に向けた計画作りは万全?

いよいよ新年度が目の前です。既に新年度の指導体制は整って、生徒向けの指導は年間での計画もほぼ固まっているものと拝察いたしますが、もう一つ計画をしっかり立てておきたいのは、個々の教育活動の成果をどう測りながら、教育手法を開発や指導法の改善を進めていくかです。新課程への移行に伴い、様々な新しい取り組みが始まっている中、万が一にも「やりっぱなし」になってしまっては試行錯誤に生徒を巻き込むばかりですし、先…

自分撮りのススメ~自分の授業を客観的にみる

別稿で申し上げた通り、授業を改善しようと思ったら、伝達スキルより授業デザインに焦点をおいて、その改善を先行させた方が改善の効果が短期間で現れますが、話し方・伝え方、強調の方法などに問題を抱えているなら、その解消も先送りするわけにはいきません。授業デザインは、構成要素の大半が言語化できる外在知ですので、校内/教科内にある優れた実践から学びやすいもの。高い評価を得た授業でのやり方を知れば、まったく同じ…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして #INDEX

授業のあり方について先生方が真剣に且つ楽しく話し合え、授業改善に建設的に取り組める協働の「環境」があれば、先生方の授業力、学校の教育力は着実に高まっていくものと考えます。ここで言う「環境」には、教育目標がきちんと共有され、それに基づく率直な意見交換ができる雰囲気にあることももちろんですが、既に校内に存在している優れた実践の所在を知るための「ツール」や、多忙の中でも知見の共有を図れる「研修手法」の存…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その3)

模試や考査での成績、行動評価の記録、授業評価アンケートの集計結果といった「指導効果や学びの状況に関するデータ」を使って優れた成果を残した実践の所在を特定し、そこでの手法を互いに学ぶことが、学校/教科全体での授業改善を確実でスピーディーなものにします。前稿では、どのようにデータを使って優良実践の所在を知るか、その授業を担当する先生からどのように効率的に発信をしてもらうかに触れましたが、本稿はその次の…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その2)

学校全体で授業改善を進めていく上で欠かせないのが、「データを用いて優れた実践の所在を明らかにした上で、それを教科内外で広く共有すること」であるのは言うまでもありません。文字にすると、(やや長いとは言え)一文に収まる単純なことですが、実現にはいくつもの要件を満たさなければなりません。魅力的に見える実践も、それを取り入れたことで生徒の学びに有意な効果をもたらしているかどうか確かめる必要がありますし、共…

優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(その1)

授業評価アンケートは、校内/教科内に存在している優れた実践(=高い評価を得ている授業)の所在を確かめ、それを広く共有して学校全体あるいは教科全体での授業改善を進めていくためのツールです。校外から持ち込んだ新たな手法が、自校の生徒の学習者特性にマッチする保証はありませんが、校内で既に高い評価を得ている授業でのやり方なら、生徒が身につけている学び方との高い親和性が期待できます。こうした優良実践の共有が…