活動の配列/授業デザイン

学びの場での「問いの活かし方」

学びの過程で「問い」が担う役割は極めて大きいものです。「思考」は問いに触れて初めて発動するものであり、適切な問いが設定されないところでは、思考力を鍛えることも評価することもできません。深い(=思考を十分に掘り下げた)学びの実現にも、問いを重ねることが不可欠。「学びの深さ」はどれだけ問いを重ねたかで決まります。また、単元の導入からまとめ(次に向けた新たな起点)に至るフェイズのすべてで、問いはそれぞれ…

学びの個別化と授業者に課される役割の変化

昨日(8月26日)の朝刊に、今春に本格導入となったデジタル教科書で教室に起きた変化を紹介する記事が載っていました。(デジタル教科書使うほど「主体的学習」に、授業が課題)生徒がそれぞれ自分のペースとやり方で勉強を進められ、学びの成果や過程を端末を通じてシェアできることは「主体的・対話的で深い学び」の実現を容易にすると同時に「学びの個別化」も加速していきます。最初の利点(自分のペースと方法)で、説明を…

学力層に応じた「指導の力点」

クラスの中には様々な学力(獲得済みの結果学力のみならず、学ぶ意欲も含む)の生徒がいますが、学力層ごとに、指導の力点/獲得させるべき能力や資質の「重みづけ」には違いがあって然るべきかと思います。各単元の内容を学ばせながら、様々な能力や資質(21世紀型能力で言えば、基礎力、思考力、実践力を構成する要素群)を獲得させるのはどの層でも同じですが、卒業後の人生で引き受ける「主たる役割」によって、各要素の獲得…

大きな問いに挑ませるとき~問いの分割と準備の学習

与えられた問題が大きすぎて、どこから手を付けていいものやら見当もつかないときがあります。そのまま何の手立ても打たず、問題の加工もせずに教室に持ち込んで生徒に挑ませたとしたら、生徒の手と頭は止まったまま、貴重な時間を失います。下手をすれば「わからない、できない、手に負えない」という印象だけを残すことにもなりかねません。別稿「入試問題を授業の教材に使うときに」でも申し上げましたが、こうした場合、いくつ…

大学入学共通テストの出題研究で持つべき視点

大学入学共通テストから一週間あまりが経過しました。出題分析を終えて、次年度以降の指導の計画を描き始めておられることと存じます。生徒の進路希望を実現する授業を目指すには、当然ながら、テストへの対策(≒どう学ばせ、解かせるか)を考える必要もありますが、先ずは個々の問題がどんな学力を測っているか正しく捉えるところからです。入学者選抜という場でわざわざ課した以上、その問題が測定している力は、進学後の学修を…

伝達スキルと授業デザイン

新しい学力観に沿った学ばせ方を実現し、生きる力としての能力や資質を育むためには、獲得した知識や技能を活きて働かせる(=活用する)機会や、対話や協働などの学習活動をきちんと配列した授業デザインが不可欠なのは言うまでもありません。(cf. 活動の配列/授業デザイン)しかしながら、その一方では、伝わりやすい話し方、指示や説明の組み立て、効果的な板書といった「伝達スキル」の完成度が、授業の成否を大きく分け…

活動を配列するときに考えるべきこと #INDEX

主体的・対話的で深い学びの視点での授業改善が図られる中、各地で授業を拝見していても実に様々な活動が授業の中に組み込まれています。途切れることなく配列されたアクティビティに、生徒がノンストップで取り組んでいる光景もすでに珍しいものではありません。しかし、多彩なアクティビティの中で生徒同士の対話が増え、活動性が高まっても、それが主体的で深い学びになっているかどうかは、また別の話ではないでしょうか。学習…

活動を配列するときに考えるべきこと(その4)

個人で取り組ませる活動、教室外に設ける活動 授業内外に配列する学習活動には様々なものがありますが、いくつかの分類軸を設けてみると整理がつきやすく、すべての活動について配列上の考慮を十分に巡らせているかの点検に抜け落ちを減らせます。ひとつめは「個人で行うか、ペアやグループで行うか」での分類です。個々に行う活動というと、練習や問題演習がすぐに思い浮かびますが、教科書や資料を読むことにも、基礎力(言語、…

活動を配列するときに考えるべきこと(その3)

活動を通じて目指すはコンピテンシーの増大 授業内にアクティビティ(活動)をどのように配列するかを考えるときには、その前に「できるようにさせたいこと」(到達目標)をはっきりさせておくことが大切です。ここでの到達目標には、学習内容の理解だけではなく、内容(コンテンツ)を学ぶことで獲得する能力や資質(コンピテンシー)、加えて学びの姿勢と方法なども含まれるはずです。目標をしっかり見据えて、その達成に必要な…

活動を配列するときに考えるべきこと(その2)

チェックポイントを意識した練習や作業 授業中に配列する活動は、くれぐれも自己目的化させないようにしたいもの。漫然と活動したところで成果は大きくならず、目的を達成できたとの実感を得なければ次へのモチベーションも生まれません。活動の一つひとつに目的意識を持ち込ませるというのは、「できるようになること/気を付けるべきこと(チェックポイント)」をあらかじめ生徒にしっかりと認識させることにほかなりません。チ…

活動を配列するときに考えるべきこと(その1)

活動の一つひとつに目的を持たせる 主体的・対話的で深い学びの視点での授業改善が図られる中、各地での授業を拝見していても様々な活動が授業の中に組み込まれるようになりました。途切れることなく配列されたアクティビティにノンストップで生徒が取り組んでいる光景もすでに珍しいものではありません。しかし、活動性が十分に高まっていても、それが主体的な学びになっているか、深い学びになっているかはまた別の話のようにも…

宿題を課すときに(再考)

先週末から、朝日新聞で「宿題が終わらない」と題する連載がありました。新課程への移行による学習観の変化や、一人一台の端末が普及したことなどで、新たなタイプの宿題が増えたことが、生徒一人ひとりの学びに様々な形で、好ましくない影響を及ぼしている様子が窺えます。 連載「宿題が終わらない」:朝日新聞デジタル (asahi.com) ❏ 新しい学力観に応じたタスクを加えるだけでは… 各単元の学習内容を学ぶこと…

基礎力不足の生徒にどう学ばせるか

当たり前のことですが、どの教科の学習指導を行うときも、「基礎」が固まっていない生徒がその先に学びを進めるのは容易ではありません。新しい単元を学ばせようにも、関連する既習単元の内容を理解していない/知識として定着していないのでは、それらを土台とする新たな知を積み上げることはできず、勢い、復習や学び直しに終始しがちです。こうした状況を前に、基礎が身についていない生徒に教えるとき、「わかりやすさ」「ポイ…

入試問題の「長文化」を指導者としてどう考えるか

大学入学共通テストをはじめ、大学入試、高校入試の「長文化」が話題になることが少なくありません。問題冊子のページ数はますます増え、本文や資料、設問文、選択肢を合わせると膨大な文字数になり、これに図版やデータも加わり、読み通すだけでも大変です。こうした出題傾向の変化(いわゆる「読解力重視の方向性」)がどこから来たのか、改めてしっかり考えてみる必要もありそうです。本当の狙いを曖昧にしたまま、生徒に読解ス…

問いそのものを深化、拡張する練習の場

授業を受けている中でも、日々の生活の中でも、何かしら疑問が思い浮かぶことがありますが、多くの場合、スマホでググってちょこっと調べてみたりするところに止まるのではないでしょうか。ときには何の行動も取らず、そのまま放置してしまうことも少なくないかと思います。疑問が逼迫したものでなければ、それでも実害はないかと思いますが、そこに潜む問題の実態を探り、その解決策を考え出していく力(姿勢と方法)を獲得するチ…

観察をタスクに「問題発見力」を育てる

21世紀型能力(現行学習指導要領の土台)の中核をなす「思考力」の構成要素の一つに「問題発見力」がありますが、問題を見つけるには、まずは「対象をじっくりと/精緻に観察」することが欠かせません。 グラフやデータテーブルは言うまでもなく、写真や動画、絵画や図版、文章で書かれた資料なども「観察」の対象になりますが、生徒一人ひとりにこうした対象をきちんと観察させる機会は十分でしょうか。 ❏ 問題は「観察」し…

資料を与えて読ませる/探させる、そしてその先に

新課程の土台となった21世紀型能力では、その中核となる「思考力」を構成する要素に「問題解決・発見力・創造力」が挙げられています。cf. 全教科でコミットすべき能力・資質の涵養思考力には、これ以外にも「論理的・批判的思考力」「メタ認知・適応的学習力」といった要素が含まれますが、それぞれに応じた「獲得のための学習活動」を適切に配置したカリキュラムが必要です。 カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計…

新課程が求める「学ばせ方」~学年間の円滑な接続

前稿「授業評価アンケートの集計結果を相対的にみる」でも少し触れましたが、Ⅴ活用機会やⅥ対話協働は、教室でどのような「学ばせ方」がなされているかを集計結果から推測できる項目です。 活用機会:習ったことをもとに考える機会が課題などで整っている  対話協働:話し合いなどの協働で気づきや学びの深まりが得られるこれらの項目で、校種間あるいは学年間の差が大きくなっている(円滑な接続がなされていない)箇所では、…

答案のシェアや発表で相互啓発を正しく働かせる

生徒に考えさせたり調べさせたりしたことを、答案やレポートとしてシェアしたり、発表を行わせたりするときには、できることならすべての生徒に「成果発表の機会」を与えたいもの。 生徒の答案をシェアして作る学び(相互啓発) プレゼンテーション/成果発表を機につくる成長の場 それぞれの生徒が考えたこと/気づいたことを介した相互啓発はクラス全体に大きな学びをもたらしますし、頑張ったことを認めてもらえることも「繰…

論点(イシュー)を使った単元導入

学習目標を生徒に把握させるのに最も手早く確実で、且つ広範に使える方法は、別稿でお伝えした通り、「学び終えて解を導くべき課題を導入フェイズで与えること」ですが、単元の内容やその日の授業の目的によっては、賛否の分かれる問題(=論点、イシュー)から入る「ディスカッション型の導入」も効果的です。 2018/08/07 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 賛否を違える意見に触れることで やり方には幾つ…