新課程におけるカリキュラムマネジメントでは、各単元の内容(コンテンツ)を学ばせることを手段に、21世紀の社会を生き抜くために必要な能力・資質(コンピテンシー)を育むという目的を達成していくとの発想を持つことが求められます。
実際のカリキュラム編成や指導計画立案においては、各単元の学習内容を縦軸(行)に、育むべき能力・資質を横軸(列)に配したマトリクスを想定し、行と列の交点にある各セルに適切な学習活動を配列していくことになりますが、どんな学習活動に取り組ませるかは、そこにセットする「生徒が取り組むべき課題」で決まっていきます。
解決すべき課題なき活動は、自己目的化しますので、積極的な取り組みも期待できず、活動を通して得られる成果(能力・資質の獲得)も大きなものにはならないはずです。
2016/07/14 更新の記事をアップデートしました。
学ばせること(=獲得させる知識)は旧課程から減るわけではなく、増やす余地のない限られた授業時間に「知識を生きて働かせるための課題解決の場やそれに取り組む生徒の活動」を組み込むのには、容易ならざるものがあります。特に、これまでの指導/授業にしっかり手応えを得ていた先生には、「これまでのやり方を変える必要が本当にあるのか、変えたことでデメリットは生じないか」という不安もあるはずです。
貴重な授業時間の中に、生徒自身による/あるいは生徒の協働による課題解決の場面を組み込むことの効果を明らかにすることで、その必要性を確認することがまずは重要と考えます。また、必要性を十分に実感しても、実現に向けた具体的な方法を見つけないことには、動きようもありませんし、目指すものも「絵に描いた餅」になってしまいます。
わかりやすく、理解を着実に重ねた授業でも…
獲得した知識を生きて働かせる場を整えることの効果
・学び終えて解を導くべき課題を示すことで
・対話的な学びを展開するにも
・ひと通り学んでから課題に立ち戻ることで
・理解と思考の言語化(=答案の作成)によって
・知恵を使って課題解決に挑む中で
・自分が作った答えは、適切な振り返りのための材料
・周りの生徒が作った答えに触れることで
活用機会は、目標理解や対話などの活動性にも影響
知識活用の機会確保は、学びの成果を得る上で不可欠
知識の獲得を図るフェイズの効率化
・教科書は生徒にきちんと読ませる/副教材を使い込ませる
・問いを与えて、情報を受け止める態勢を取らせる
与える知識の範囲を不必要に拡大しない
生徒が個人で取り組むべきことをきちんと切り分ける
課題作りにおける省力化・効率化
・手応えのあった好適な課題は積極的にシェア
・ターゲット設問はシンプルな作りに
知識の付与と体系化を図ってから、問題解決に進むというこれまで普通であった考え方や手順を見直して、問題解決を図りながら必要な知識や理解を形成していくという発想に切り替える必要もありそうです。
知識の拡充や基礎的な理解の確立を先行させ、それが終ってから演習に進むという「段階を踏んだ指導計画」は、昭和の時代から広く見られたものですが、新課程が求める学びの在り方にはマッチしません。そもそも、獲得した知識を使う場面が用意されてこそ、生徒は「学ぶことへの自分の理由」も見つけられ、その結果、理解や定着も早まるはずです。
新課程では「何を学ばせるか」に加え、「どう学ばせるか」も重要ですので、授業デザイン/指導計画を考えるときの土台の発想を切り替えていくべき時期を迎えているのだと思います。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一