学習評価は多様なツールを組み合わせて多面的・総合的に行わなければなりませんが、そこで用いる様々なツールの内、授業評価アンケートが測定を担うのは、「学習の主体である生徒の認識」についてです。
とりわけ、確実に把握しておきたいのは「授業を受けて、学力の向上や自分の進歩を実感できているか」です。この質問にYESと答えた生徒は、その科目を学ぶことへの自己効力感を保ち、興味関心膨らませることがデータで明らかになっています。
2018-05-07に更新した記事を再更新しました。
授業評価アンケートの質問設計において、目的変数とするのは如上の質問文であり、肯定的な回答が占める割合や回答分布から算出した得点率の変化を以て、これまでの授業改善の取り組みが望ましい変化を生徒の学びにもたらしているかが検証できます。
他の評価項目は、学力向上や進歩の実感に対して統計的に有意な寄与が確認されている項目を配置して構成します。このような質問設計を行うことで、学力向上感の獲得を妨げている要素(=ボトルネック)がどこにあるかが推定でき、授業改善の方向性が得られます。
以下の各記事では、これまでに各地の様々な学校で行われた授業評価アンケートのデータを解析し、改良を重ねてきた現時点において最善と思われる授業評価項目(質問設計)をご提案いたしました。
各々の質問文は、日々の授業実践において実現すべき要件を示します。新課程への移行を前に「新しい学力観に沿った授業のあり方」を校内で共有するのも、適切に設計された質問文を通して行うのが好適です。
国語、数学、社会(地歴公民)、理科、英語、保健などの講義・座学を中心に進める教科における質問項目
体育、芸術、家庭(技術家庭)、情報など、実技・実習を核に授業が構成される教科における質問項目
学級の経営や好ましい資質・姿勢の獲得、学びの場での互恵/相互啓発の働き方などを確かめるための質問群
各インデックスページに設けたリンク先には、評価項目別に以下の内容からなる記事を設けてあります。ご参考となれば幸いです。
- それぞれの項目を授業評価アンケートに設定する理由と意図
- 評価が目標水準に達しない場合に採るべき行動
- 必達目標をクリアした後、さらなる優良実践を目指すときのヒント
また、より良い授業の実現、学校全体での授業改善といった実りを得るには、評価項目を正しく設定することに加えて、結果データの正しい活用への考え方、実施方法などにおいて満たすべき要件などもあります。
以下の記事に考えるところをまとめましたので、お時間の許すときにご高覧いただければ光栄に存じます。
- 授業評価アンケートを行うときの最小要件
- 授業改善行動の実効性を高めるために(全3編)
- 授業評価の事前指導と結果のフィードバック
- 授業評価の結果に基づく「改善行動の効果検証」
- 授業評価アンケートの結果の見方、活かし方
- 授業改善をより確実にするためのデータの見方
- 生徒の特性に合わせた教え方・学ばせ方のアジャスト
- 授業改善での協働のあり方(記事まとめ)
- 授業評価の結果から(記事まとめ)
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一