授業評価の事前指導と結果のフィードバック

生徒による授業評価アンケートを行うときに、生徒に対してどんな事前指導をしておくべきか、アンケートの後、結果をどう伝えるべきかとのご質問をいただきました。
結論だけ言うなら、授業評価アンケートの目的を先生と生徒が共有した状態を作ることが事前指導であり、結果への所感をあれこれ言葉にするのではなく、結果を活かした「より良い授業」を生徒の眼前に実現して見せることが正しいフィードバックだと思います。

❏ きちんと答えるのは、より良い授業を受けるため

当たり前のことですが、生徒による授業評価アンケートを行う目的は、より良い授業の実現です。
より良い授業が実現すれば、生徒はそれまで以上に意欲的に学び、力をつけていくことができるので、生徒はアンケートの回答者であると同時に、結果の受益者でもあります。
そのことをしっかり伝えた上で、より良い授業を実現し、生徒に成果を享受してもらうには正確なデータ(=生徒がアンケートに真面目に答えること)が必要であるときっちり理解させていきましょう。
アンケートを行うときにその目的と結果の活用に関する学校の方針や覚悟をきちんと生徒に伝える必要があるのは、授業評価に限りません。学校評価やいじめ調査などでも同様です。
朝礼や学年集会などで学校/学年全体にアンケートの趣旨を説明した上で、HRに戻ってアンケートを配布するときにも、担任の先生から同じことを伝え直すなど、繰り返して意図を理解させることが重要です。

❏ 教員側でもアンケートの意図をしっかり共有

授業評価アンケートの目的は、生徒に伝えるだけでなく、先生方の間でもしっかり共有しておくべきです。
読み取りデータを精査してみると、マークミスが限りなくゼロに近いクラスもあれば、そうでないクラスもあります。その差は生徒の注意力の違いだけでは説明がつきません。
アンケートの意図を生徒に伝える際の先生方の行動に、何らかの違いがあったものと思われますが、その背後にあるのは、「授業評価アンケートを実施することの意義」に関する理解の違いかもしれません。
授業改善に向けた課題形成に役立てようと思えば、信頼に足る正確なデータを集めることが大前提。
アンケート用紙を配って回収するという単純な作業かもしれませんが、そこには「自分のHRの授業を担当してくれている先生方に正確なデータを届ける」という目的があります。

❏ アンケートに答えても、授業が少しも変わらないのでは

定期的に授業評価アンケートが行われ、そのたびに回答を求められるけど、不満を伝えた部分でも先生の授業に変化が感じられないとしたら、生徒は真面目に答える気持ちを維持できないのではないでしょうか。
板書がわかりにくい、目的がよくわからないといった集団の声に触れたら、その部分で工夫を重ねて改善していくのは当たり前です。
そのために時間とコストをかけて行っている授業評価アンケートです。
1学期の授業評価アンケートの結果で改善すべき点を見つけ出すことができたら、2学期のアンケートまでにはその課題をある程度までは解決して見せる必要があります。
校内には優れた実践があるはずなので、それを採り入れるだけでも一定の効果はありますから、万策を尽くしてなお、まったく改善が図れないというのは稀なはずです。
アンケートに答えるたびに自分が受けている授業が改善されていくのを実感できることが、真剣な回答への動機づけになります。
自分たちの声がきちんと届き、先生方がそれに応えようとしてくれていると感じられることは、信頼関係の構築と維持にも繋がります。

❏ 集計結果に授業内で言及する必要はない

アンケートの集計結果を生徒に伝えるべきかとのご質問もいただきましたが、集計結果そのものに言及した生徒へのフィードバックは「得るもの少なく、リスクが大きい」ような気がします。
結果を伝えられたところで、生徒は何らかの行動を起こす必要があるわけでもなく、「解決するのは先生の仕事でしょ?」と思うのが関の山ではないでしょうか。
集計結果に言及するときに、少しでも感情が混じってしまうと、生徒の側では「先生の言い訳、弁明」と受け取ってしまい、誤解や不信を膨らませてしまうだけの結果にもなりかねません。
アンケートを通して伝えられた生徒の声には、授業改善という行動で答えるのが最善です。
改善課題を抱えた事柄については、日々の授業で改善を図って一定期間を経てから、同一文言で再アンケートを取りましょう。
生徒から指摘された改善課題を気にかけていたことを間接的に伝えられる上、既に改善が図られていることを生徒は改めて認識し、自分たちの声が届いたことを知ります。

❏ 誤解を解くには、指導の目的や方針をきちんと説明

自由記述意見などで生徒の誤解が見て取れたときにも「誤解を解く直接的な説明」を行うのはあまり奨められません。
生徒の側は「自分たちが誤解している」とは思っていないので、せっかくの説明も「言い訳」に受け止められがちです。
入学時や進級時から行ってきた、指導方針の説明に不足があったことを省みて、改めてその背景にある意図を含めた丁寧な説明を試みる方が好適な結果を引き寄せることが多いようです。
アンケートの質問文を生徒がきちんと理解していない様子が見られるなら、授業中にそのワーディングへの言及が十分であったか振り返ってみましょう。
例えば、「習ったことを活用して」という部分に生徒がピンと来ていないようなら、普段の授業でも宿題を提示するときに「この問題が解ければ、〇〇について学んだことが活用できていることになる」といった一言を添えてみるようにしましょう。
それだけでも、質問文の理解は進み、生徒はより正確にアンケートに答えることができるようになっていきます。指導の中で意図するところを伝えることは大切です。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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