体育、芸術、家庭などの実技実習系教科でも、講義座学系の教科と同様に「学習を通じて自らの進歩や成長を実感できること」は学びを継続する意欲の原資に外なりません。各評価項目の質問文は学習効果を実感できる授業が備える要件を記述したものですので、どこかにボトルネックが生じていないか、集計結果を用いて常に点検しておきましょう。
2015/05/25 公開のまとめページを再アップデートしました。
実技実習系で、学習効果に最も大きな寄与度が観測されているのは下の散布図で横軸に配した「振り返り」です。両者の間の相関係数は、0.9 を優に超えます。的確な振り返りなしには学びは成果を結びません。
学習目標を正しく認識させた上で、取り組みのたびに新たにできるようになったことをたな卸しさせ、次の機会でのより良いパフォーマンスに向けて何をすべきかを考えさせること(=課題形成)が重要です。
実技実習系の教科群における標準的な評価項目は以下の通りです。目的変数である【学習効果】とそれを支える要素群で構成されています。
それぞれについて、満たすべきポイントや改善のために押さえるべき点を各記事にまとめましたので、お時間の許すときにご高覧ください。
評価項目と質問文
【ポイント説明】 | 先生の説明を通じて、練習や作業のポイントがよくわかる。 | |
【行動指示】 | 授業中の約束事や先生の指示は明確で、戸惑わずに行動できる。 | |
【生徒理解】 | 先生は生徒の状況をよく把握しながら授業を進めてくれる。 | |
【目標理解】 | 作業や練習の目的や到達目標を先生ははっきりと示してくれる。 | |
【振り返り】 | 振り返りや先生からの助言を通じ、次に向けた課題が意識できる。 | |
【発表の場】 |
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【学習効果】 | 授業を受けて、知識や技能が身につき、自分の進歩を実感できる。 |
上記以外の【難易度】【学習方策】【目的意識】、旧バージョンで用いた【意識姿勢】【話し方】の各項目は、講義座学系の教科と共通です。
適正な負荷をかけることで、既にできるようになっていることの一歩上に挑ませることが成長を促すのはどの教科も変わりません。学習方策と目的意識が向上してきたら、それに合わせて負荷を大きくしましょう。
評価項目はいずれも生徒側の認識を尋ねるものです。集計結果からは先生方の見立てと違う姿が垣間見えることもしばしばです。特に新しいことに取り組ませているときは、こまめに生徒の意識を確かめましょう。
実技系の各教科では、協働で課題に取り組むときの姿勢やそこで必要とされる能力や行動様式を獲得させるのに好適な場も多いかと思います。
先生から細かく指示するだけでなく、生徒にグループ内での役割をそれぞれ考えさせたり、練習法や作業手順を自分たちで考え、協力し合って成果を目指す姿勢を求めたりする機会を逃さないようにしましょう。
協働の中では、リーダーとフォロワーという関係についても、実体験を伴う学びを経験するはずです。教室というコミュニティの中で、何らかの役割を引き受ける時の姿勢と方法を学ばせていきましょう。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一