復習は間隔をおいた"重ね塗り"で(その1)

理解したことを記憶に定着させようとするときには、間隔を空けて幾度も「薄く塗り重ねていく」のが好適です。短い期間で一気に厚塗りをしようとしても、狙い通りには行かないものと心得ましょう。
授業や副教材で学ばせたことを小テストで確認し、覚えていなかったら再テストまでして定着させたつもりなのに、定期考査で同じ範囲から再出題してみたら期待を下回る結果という経験はないでしょうか。
忘却曲線を引き合いに出すまでもなく、記銘から時間が経つほど記憶の保持率は下がります。学ばせたことは機会あるごとに使わせることで、再記銘を図るような仕掛けを講じましょう。
あらゆる機会を利用して、少しずつ理解と記憶を重ねていくようにするのが肝要です。ペンキだって回数を減らして厚塗りしても、ひび割れたり剥がれたりしますよね。
小テストや定期考査の準備という場面を用意して、「覚える」という意識を前面に出さずとも、使う機会さえあれば再記銘は図れます。

2017/11/21 公開の記事をアップデートしました。

❏ 授業終了時に用意したアウトプットが最初の機会

授業を終えるときに、導入フェイズで示しておいたターゲット設問(cf. 学習目標は解くべき課題で示す)に立ち戻り、その答えを仕上げさせれば、その日の授業で学んだこと全体を見返すことができます。

ひとつのターゲット設問で学習項目を十分にカバーできないときは、授業で扱ったことを箇条書きにして「解答」を用意しておき、それを導き出すような問いを並べて作った「チェックリスト」の併用も好適です。
リストにある「○○が○○する仕組みは?」「○○とはどんなこと/なぜか?」 といった問いに、生徒が自分で答えを作ろうとする中で、教科書、ノート、副教材をひっくり返して見直す光景が観察できます。
ターゲット設問の答え作りにしろ、リストを使ったチェックにしろ、授業終了時(教室を離れる前)に時間を設けて挑ませることが重要です。
ここで1回目の再記銘を図っておくことの効果は小さくありません。授業の序盤や中盤に学んだことは、その後の活動でかなりのところまで記憶が上書きされていますし、気づかぬまま不明点も残っています。
宿題にしてそのままカバンにしまわれたら、家に帰ってカバンを開くまで、その問いのことが意識にのぼらず、その間に授業中に得た知識は想起できなくなっているかもしれません。
授業が終わる前であれば、わからないことがあっても周りに訊けます。教え合えば「理解したことを言語化すること」によって、理解の深化という大きなメリットが教えた側の生徒にも期待できます。

❏ 家に持ち帰っての仕上げで2回目の再記銘と理解の深化

授業終了前の5分間で行う1度目の再記銘の次は、家に帰って/自習室に残って個々に取り組む学習です。
授業を終えるときにターゲット設問やチェックリストに照らして、学んだことのたな卸しをしていますが、きちんとした答案に仕上げないことには、表現力を鍛える機会にも、さらに深い学びにも繋がりません。
理解が早く、終了時の5分で既に答えを仕上げてしまっている生徒がいたら、理解したことを十分に活用できているということなので、それ以上「拡張のない復習」に時間をかけさせる必要はないと思います。
そのような生徒には、さらにその先に知的な探究を楽しめるような任意の課題を用意してあげましょう。興味が芽生えていたら自発的に手を付けてくれるはずです。

教室で学んで得ていた知識や理解を、別の課題(さらに深く広い思考を求める問い)に解を導くのに使ってみる中で、その活用をより深く学ぶとともに、周辺にも理解の及ぶ範囲が広がっていくはずです。
他の科目の勉強や部活で生徒も忙しいからといった「配慮?」で、こうした宿題を課さないでいると、理解の深化と記憶の定着(=深く確かな学びの実現)を図る機会を、生徒は持てないのではないでしょうか。

❏ 次の授業では、持ち寄った答案の吟味で更なる学び

前稿の最終セクションのリストの6番のように、次回の授業では、提出された答案を元に、学びの更なる拡充と深化を図るようにしましょう。
生徒がそれぞれ書いてきた答案には、教える側が想像しなかったような鋭い着想や、面白い間違え方が見つかることもあるはずです。
それらをシェアすることで、ひとりの気づき(あるいは誤り)がクラス全体の学びになるとともに、前時に学んだことの再記銘にもなります。

事前に提出させた生徒たちの答案に目を通し、「公開添削」や「答案の相互評価」に好適なものを選び出しておく手間が増えるのは確かですが、そのコストに見合った分の効果は十分に期待できるはずです。
ICTの利用も進んでいますので、電子的に提出させれば、教室での回収や、再配布のためのプリント作りなどの工数は減らせますし、他のクラスや次年度に用いる「材料」としての保管も用意になります。



前述の「授業終了時に用意したアウトプット」まで待つと、記憶の保持や想起が怪しくなるようなら、「授業内に行う小テスト」も試してみましょう。授業後半の学びの土台を固められると思います。
再記銘の機会を増やすことは、「覚える練習/思い出す練習」を重ねさせることにもなり、覚える力/思い出す力を鍛えるのにも有効ではないでしょうか。(cf. 新しい学びの中で「覚える力」が持つ意義
その2に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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