――親の学歴や年収が同じくらいの子どもが通う学校の中で、全国学力調査の成績が良かった学校は、自分で調べたことを文章にさせる指導や授業の最後に学習を振り返る活動などを取り入れていた。――
ご覧になられた方も多いかと存じますが、7月8日の朝日新聞朝刊に掲載されていた記事です。
記事のもとになった平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究を読んでみると、135~136ページに以下のように書かれています。
高い成果を上げている小学校では、基本的な指導方法(授業の最後の振り返りや、分かりやすい文章の書き方の指導)、および発展的な指導方法(思考を深めるような発問、話し合いの時間、探究の過程を意識した指導など)、双方を多面的に行っていることが見てとれる。また個に応じた少人数指導(習熟別やティームティーチングなど)を取り入れていることも分かる。
高い成果を上げている中学校とそうでない学校との指導方法の違いは、「前年度、国語の授業におけるティームティーチング」の1項目でしか見られない。中学校においては、小学校ほど指導方法や学習規律の特徴が学力に対して必ずしも効果を発揮するわけではないのかもしれない。
上記の分析には、下表のデータが添えられていました。
分析では、「中学校においては、小学校ほど指導方法や学習規律の特徴が学力に対して必ずしも効果を発揮するわけではないのかもしれない」としていますが、本当にそうなのでしょうか。
多くの科目を同じ教員が教える小学校に対し、中学校では科目ごとに先生が変わり、同じ生徒が経験する学びは、様々なものが混在し、互いの効果を薄めあっている(時には強め合う?)ことが多いかと思います。
学校単位での集計と、先生あるいはクラスごとに分けて、教え方と当該教科の成績とを照らし合わせた分析を行った場合とでは違う結果が出てくるように思われます。
そんな中でも、「授業の最後に学習したことを振り返る活動」では、中学校でもP値は0.074。有意差が認められる水準をわずかに超えてしまっているだけです。
授業終了の5分間をアウトプットに充て、振り返りの機会とする指導には、試してみるだけの十分な価値があると考えます。
また、学んだことの言語化は、「自分で調べたことや考えたことを分かりやすく文章に書かせる指導」という質問文からイメージできるものと違う形も取れます。
先生の説明を聞いて理解したことをペアで説明し合う(説明学習)や、「〇〇について〇字程度で説明しなさい」といった課題に日々、習慣的に取り組ませているクラスと、そうでないクラスとでは大きな違いが生じます。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一