学習効果が期待値を下回るとき(その1)

目標提示が十分になされ、且つ習ったことを活用して課題を解決する機会をしっかりと経験していれば、学力や技能の向上を生徒が実感することがデータからわかっています。公式のように表現するなら、こんな感じでしょうか。
学習効果∽目標理解☓活用機会
しかしながら、活用機会と学習効果の間に極めて高い相関が見られるとはいえ、近似線から遠く離れるケースも少なくありません。そんな場合に考えられるのは他の要因の介在です。
❏ 期待値を大きく下回る授業
下図は、授業評価アンケートの集計結果を用いて作成したものです。目標理解で75ポイントに達している授業だけを抽出して、横軸に活用機会の得点、縦軸に学習効果の得点を取った散布図です。マーカーの一つひとつが評価の対象となった授業を現しています。

画像

散布図中の黒い実践が、対象サンプルの近似線です。近似線からマイナス3以上、下方にずれている授業を赤で、その他の授業をブルーで色分けしました。
学習効果の得点が、近似線から導かれる「期待値」を3ポイント以上下回っている授業は、3割弱(647件中178件、27.5%)を占めています。
❏ わからないことには、できるようにならない
このうち、「話し方」「板書や資料」「指示と説明」といった伝える技術で明らかに問題を抱えている授業は103件(58%)ありました。これらの授業は、生徒にしてみれば「わからない」わけであり、できるようになった実感が伴わないのも自明の理。まずは、理解の確認をこまめに行って、伝達技術の不備を一つひとつ解消していくことが先決でしょう。
問題は、残りの75件(42%)です。
目的もしっかり示し、活用機会も十分、わかりやすさは十分に備わっていながら、期待されるほどの学習効果を感じさせることができない。そのような場合にまず疑ってみるべきは、「当座の目標を達成した先をイメージできているかどうか」ということです。
少々長くなりそうな気がしてきました。この続きは次稿に回すことにして、その前に一つ問題提起を。
❏ 肯定回答率や平均との比較だけでは、課題形成は難しい
このように考えてくると、生徒による授業評価アンケートの集計を行うとき、
・項目別に肯定的な回答率を算出するだけ
・その結果を学校全体での平均値と比べてみるだけ
という手法では、より良い授業の実現を目指す課題形成を、高い精度で行うことは難しそうです。
クロス集計を行ったり、散布図上で近似線を描き、残差を求めたりするのは、問題の切り分けに有効なときがあります。校内でアンケートを行うときも、データを取る段階から、こうした処理を想定しておかないと、せっかく手間をかけても十分に活用することが出来なくなってしまいます。
マークシートで読んで、加工前のローデータを必ず保管しておいていただければ、後で分析をお引き受けすることも可能です。
その2に続く

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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