整理整頓、教室の環境整備

教室が学習に適した環境に保たれているかどうかで、学びの成果が大きく左右されるのは言うまでもありません。生徒の私物が通路をふさいでいたら机間指導の邪魔になりますし、グループワークへの切り替えなどフォーメーションの変更にもひと騒動。こんなところで貴重な授業時間を無駄にしたくないものです。
掲示物にしても、余計なものが目に入っては、肝心な連絡やメッセージが埋もれて伝わらなくなってしまい、生徒が整えるべき「次の学びへの準備」にも漏れが生じがちになるのではないでしょうか。

2015/06/10 公開の記事を再アップデートしました。

生徒意識アンケート④ 整理整頓、教室の環境整備
教室は、いつも整理整頓され、勉強に集中できる環境が保たれている

この質問を投げかけること自体も「より良い環境の創出と維持に当事者として関わる意識」を生徒の中に喚起する効果が期待できます。
また、この項目に肯定的な回答が多いクラスほど、生徒間の人間関係も良好な状態にある傾向があることもわかってきています。詳細は、過日の記事「教室の環境整備と生徒の人間関係との相関」をご参照下さい。

❏ 各教科の授業を担当する先生も環境のチェックと指導

教室の環境整備は、その教室に立つすべての先生が責任をシェアするものだと思います。
クラス担任の先生が教室内の環境を点検できるのは、朝と帰りのSHRを中心にせいぜい一日数回でしょう。
一方、教科担当の先生方は毎日何名もの先生方が入れ替わり立ち代わりその教室を使います。教室を使わないのは、実技や実習の授業に加え、理科の実験や少人数の展開/選択授業くらいでしょうか。
各教科の先生方に教室の環境に目を配る意識と習慣があれば、教室内の整理・整頓が乱れている箇所にはすぐに気づけるでしょうし、その場で指導する(近くの生徒にちょっと声を掛ける)こともできるはずです。
注意すべきところで注意をせずに看過/放置すると、生徒はその状態が許容されたものと認識し、「乱れたままで問題なし」と受け止めます。
先生が口をつぐんていることが、生徒に誤ったメッセージを伝え、好ましくない姿勢を学習させてしまうということです。
細かく指示する先生、点検が厳しい先生の方が「口うるさい」となっては、目線を合わせた指導の土台も崩れかねません。

❏ 整えておくべき状態は「学年共通の規準」として明示

なんでもかんでも共通ルールを決めればいいというものではありませんが、先生ごとに考え方が大きく違っては生徒も戸惑うばかりです。
教科の先生にしても、クラスごとに担任が打ち出しているルールが違ったら、「このクラスはこういうルール、隣のクラスはこう…」と二枚舌を使わなければならなくなりますし、判断が煩雑になる分、見落としも生じやすくなります。
教室が整理整頓されている/常に維持されるべき状態について、学年内で「スタンダード」を確立して、きちんと共有しておいた方が、生徒も先生もハッピーです。
学年団だけでなく、教科担当の先生方にも参画してもらい、教室の環境をどう整えるかきちんと話し合ってみてもよいのではないでしょうか。
私物がきちんとロッカーにしまわれず通路に散在していては、机間指導やフォーメーションの変更を頻繁に行う先生は困りますし、張り出してきた掲示物は板書を充実させている先生にとって邪魔です。
教科学習指導を行う上で好ましい環境は、教科担当の先生からも積極的に発言すべきものだと考えます。学年の指導を担当される先生方すべての視点を採り入れた、合理的な「指導方針」を作りましょう。

❏ ルール作りや履行点検は生徒自身の活動に委ねる

教室をどのような状態に保つべきかは、先生方で話し合って決めるだけでなく、生徒自身にもしっかり考えさせる機会を持ちましょう。
決められたルールだから守るという段階に止まらせず、コミュニティ全体の利益をどうやって最大化させるかを、考え出していけるところまで求め/育てていくべきだと思います。

美化委員会などの議題にして、生徒自身の手によってルールを考えさせてもいいのではないでしょうか。委員会活動は、社会性を身につける大切な教育の場ですからどんどんチャンスを与えましょう。
掲示物の管理なら、広報委員にもちょっと手伝ってもらいましょうか。
自分たちで作ったルールをきちんと守り、ルールに不備があれば話し合ってそれを改めることを繰り返す中で、当事者として物事を考える姿勢も養われるでしょうし、協働性や社会参画力の涵養にも繋がります。
ルールを守らない生徒がいたとき、整備が遅れるクラスがあったときに生徒間でのコンセンサスをどのように作り直していくのかも、生徒に解決を求めていくべき課題のひとつだと思います。
様々な考え方を持ち、必ずしも利害が一致しない相手を巻き込んでいく経験は、生徒たちにとって社会に出るための貴重な練習と学びの場になります。(cf. 協働場面における個々の生徒の評価をどう行うか

❏ 掲示の乱れを気にすることがなくなったら黄信号

各地の学校を訪ねて、教室で授業を拝見するたびに、少し見回すようにしているのが「教室内での掲示物」です。

  • 掲出期限が過ぎている掲示が放置されていないか
  • 掲示物の内容に応じて貼り出すべき場所が考慮されているか

などには特に注意を向けて観察させてもらっています。
期限を過ぎてボロボロになった掲示物が残っていたり、黒板脇からはみ出して板書のスペースを「侵食」していることも少なくありません。
そんな光景が「普通」になってしまい、生徒が気にしている様子もないというのは、かなり問題が進んでしまっているのではないでしょうか。
普段から、先生方が掲に気を留め、生徒に指示して直させることを習慣にしたいもの。授業で教室に入る各教科の先生方も、問題意識と指導責任を学級担任とシェアするくらいのつもりで臨むべきだと思います。

授業のこと以外にも尋ねておくべき“生徒の意識”
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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