生徒と信頼関係を構築する

生徒から信頼される存在でありたい、というのはすべての先生の思いだと思います。信頼関係は、築くには相手と共に過ごす中での様々な積み重ねが必要な一方、些細なことで崩れてしまう「脆さ」もあります。
生徒は、学校生活を送る中で大小様々な問題を抱えますが、そんなときに必要なのは、信頼して相談できる相手(=先生)の存在です。
また、周囲から受けた刺激を正しく消化し、「より良い自分/より良い未来」への道筋を描くにも、適切な助言が得られる相談相手は欠かせません。(cf. 先生方との相談で、周囲からの刺激を上手に消化
もし、「困ったことや悩みがあるとき、信頼して相談できる相手がいるか」と質問したときにYESと答えられない生徒がいたら、問題の解決や刺激の消化に「頼れる助っ人」がいないということになります。

❏ すべての生徒が等しくアクセスできるのは学校の先生

生徒の相談相手には、保護者などの家族、先輩や友達などもいるでしょうが、どの生徒も等しくアクセスできる相談先は学校の先生です。
先生方は教育に関する専門的な知識に加え、多くの生徒を指導する中で得た、生徒の状況を「相対化」して捉えるための広い視野という、他の主体が到底敵わないアドバンテージを備えています。
如上の質問にNOと答える生徒は、実際のデータを見ても多くはないものの、(学年やクラスで割合は異なりますが)どの学校にもいます。
データをそのまま解釈すると、通っている学校の中で「信頼できる」と「相談できる」を同時に満たす先生とまだ出会っていない生徒が(少数ながら)存在しているということになろうかと思います。
学校には、クラス担任、教科担当、部活顧問もいる中で「信頼して相談できる先生」が一人もいないとは思えませんが、相談の内容と相手の役割の「組み合わせ」で、適切な相手が見当たらないことはあり得ます。
先生方は、それぞれの立場において、目の前にいる生徒に「信頼して相談できる相手」と認識してもらう必要があるということだと思います。

❏ それぞれの立場で生徒の相談を受け止める協働と連携

万が一、生徒からの信頼を得られておらず、相談しにくい相手と認識されていたとしたら、冒頭でも書いた通り、生徒は問題の解決や、刺激の消化と課題形成の場面で、適切な支援を得られない状況にあります。
生徒の生活環境を調べたり、学校評価を行ったりするときに、「悩みや問題を抱えたとき、信頼して相談できる相手がいるか」を、学校や家庭での生活、学習、進路などの領域ごとに尋ねてみたいところです。
もしかしたら、いずれかの領域に「NO」の割合が高いところが見つかるかもしれません。
様々な立場で生徒の指導に当たる先生方が、スクラムを組み、それぞれの領域を分担して、どこでも生徒の悩みを受け止められる態勢を整えたいところ。一人で(例えばクラス担任だけが)被るのも不合理です。
生活は生活、学習は学習と線引きしては、同じ根っこから様々に生じた問題に対処できません。必要な情報が共有され、個々の生徒が抱える問題の解決に協働で/連携して臨めることが大切です。

❏ 信頼を得るためには、確固たる指導方針

生徒からの信頼を獲得するには、共に過ごす時間の中で、様々なものを積み上げていく必要がありますが、その中でもとりわけ大切なのは、
「生徒に期待するところ(行動や態度)を、予め根拠とともにしっかり伝えた上で、それと矛盾のない指導者としての言動を常に心がける」
ということではないでしょうか。学校評価アンケートでも、教育目標や指導方針をちゃんと伝えることが他の評価項目に影響を与えています。
目標や方針をしっかり伝えることが、個々の指導に込めた意図を生徒により良く理解してもらう前提であると同時に、明確な言葉にしたことで先生方ご自身の言動もそこからブレにくくなるためと考えられます。
普段言っていることと、いざ何か問題が生じたときの言動が一致しないようでは、「ダブルスタンダード」とのそしりも受けかねません。
年度初めや学期の切り替わりには、学年の指導に関わるすべての先生で指導の方針/こだわるところを共有し、目線をしっかり合わせた上で、生徒にもわかりやすく伝え、ブレのない指導を行いましょう。

❏ 不用意に信頼を失わないよう、日々の言動に細心の注意

一方、ちょっとしたことで信頼を損ねることもあります。以下はいずれも「善意」から出たものでしょうが、結果は意図に反したものです。
生徒を指導していて、心理的な距離を詰めようと/共感を示そうと思ってつい口にした言葉が、それまでの発言と矛盾を含んでしまうこともあります。「そう考えていたのか」と理解を示すのと、伝えていた期待と相反する行動まで安易に肯定してしまうのは、全く違うことでしょう。
また、他の生徒や先生のことを(客観的で建設的な批判ではなく)悪しざまに言うのを耳目にした生徒は、「自分のこともどこかで悪く言っているのでは?」と疑いの気持ちを持つかもしれません。
相談に対し、先生として「答え」を示さなければと、生徒の話を十分に聞く前に結論を出してしまうようなことも、相手に「話をしても真剣に向き合ってくれない」との印象を持たれる恐れがあります。
生徒は自分の悩みや問題を正しく言葉にできるとは限りません、問いを重ねて耳を傾け、悩みの根っこを一緒に探すという姿勢も大事です。

❏ 指導の成果がすぐに出ずとも、生徒の成長を期待する

信頼関係は、言葉の通り、2者間の相互関係です。こちらが相手を信頼していなければ、そうした関係は結べないかもしれません。
これまで幾度も指導してきたのに、行動がなかなか改まらない生徒をみると、ガッカリしたりイライラしたりすることもあろうかと。
相手の言葉や雰囲気から、自分への批判や失望ばかりが伝わってきて、期待が向けられていないと思ったら、相対しても居た堪れない気持ちが先行し、素直に自分の内を伝えるのが怖くなってしまいそうです。
どの生徒にも成長の可能性があり、正しい指導で学びを重ねさせれば、より良い選択ができる主体になってくれると期待して接し続けることが成長を目指す場での良好なコミュニケーションの土台だと思います。
問題を抱えていた生徒が、一度の指導で別人のように変わるのは稀でしょう。先生からの指導を消化し、行動にできるようになるには時間もかかるはず。行動の変容は少し長い目で見てあげましょう。



生徒が悩みや問題を抱えたときに、本人の言葉だけで状況を正しく把握できるとは限りません。他の先生の目を通した所感、ポートフォリオや手帳に残した言葉、周囲の生徒が漏らしている言葉など、あらゆる情報を活用し、生徒が置かれている状況のより正確な理解に努めましょう。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一