困ったことや悩みを信頼して相談できる相手

困ったことや悩みを抱えたときに、信用して相談できる相手がいれば、問題が深刻化したり、手に負えなくなったりする前に、どうにかできる可能性が高まります。
いじめや人間関係のトラブルなどを抱えたときは言うまでもなく、進路や学習のことで判断に迷ったときにも、信頼に足る相手に助言や支援を求められるかどうかは重要ですし、別稿で書いた通り、周囲から受けた様々な刺激を消化して頑張りの原資にするにも、適切な相手との相談ができるかどうかで、その成否が分かれることが少なくありません。

2015/06/15 公開の記事を再アップデートしました。

生徒意識アンケート⑦ 困ったときの相談相手
困ったことや悩みがあるとき、信頼して相談できる相手がいる

この質問だけで、相談相手が誰で、どの程度まで突っ込んだ相談ができるか、またその頻度はどのくらいかなど、詳細なところまで把握できるわけではありませんが、否定的な答えを選んだ割合などから問題の所在を想定して、適切な対処に繋げることはできます。

❏ 相談する相手がいない生徒はリスクを抱える

繰り返しになりますが、周囲の支援を得れば解決できる問題もひとりで抱え込んでいてはこじれるばかり。SOSを伝える相手がいない生徒がどのくらいいるのかを把握しておくことはリスク管理上も重要です。
アンケートへの回答を点検して、相談相手がいないという声が散見されるようなら、より詳細な質問紙調査/聞き取り調査などを追加して実施することも検討しましょう。
追加調査では、抱えている問題や悩みの種類ごとに、担任の先生、担任以外の先生、保護者、その他の大人などそれぞれの相手に、どこまで突っ込んだ相談ができるか聞いてみたいところです。
また、授業評価&生徒意識アンケートには記名欄があります。
この質問に回答するマーク欄の位置も決まっていますので、回収したマークシートを点検するついでに「相談する相手がいない」にマークしている生徒を把握するのは、そう難しいことではありません。

❏ まずは信頼できる相談相手として認識してもらうこと

悩みにはいろいろなものがあり、こういう悩みはこの人に、という棲み分けみたいなものは誰しも無意識のうちに持っているものです。
学習方法や進路選択といった、学校が提供する教育活動に直接関係する部分では、学校の先生を相談相手として認識しやすいでしょうが、生活上の問題や人間関係などの悩みについてはそうとは限りません。
しかしながら、学習や進路などの相談に丁寧に応じてもらったことを機に、先生を「信頼できる相談相手」として認識するようになると、他のことも相談してみようという考えに変わってくるはずです。
多くの生徒を長きにわたり観察している先生方は、悩みや問題の解決法を広く知り、個々の生徒の状況を相対化して客観的な助言を与えられる貴重な(ときに無二の)存在です。
そんな先生方を相談相手としてすぐに思い浮かべられないのでは、生徒は他に相談相手を求めることになり、相応しくない相手に悩みを相談した結果、間違った助言を与えられて問題を深刻化させることもあるでしょうし、余計な危険に巻き込まれるリスクも高まります。

❏ 相談に明確な答えをすぐに出すだけでは…

教える立場にいると、生徒に相談を持ち掛けられたらその場で最適な答えを示さなければならないと、つい考えがちですが、こちらが常に正解を用意できるわけではありません。良い意味での開き直りが大切です。
そもそも生徒の側でも、自分の悩みの正体をきちんと捉えているとは限りませんし、言葉にする力が不足することもあるでしょう。

聞きかじりでいい加減な答えを返しては、「この人には相談しても仕方ない、もう相談しない」と思われても仕方ありません。
伝えたいことを話しきらないうちに、一方的に先生の考えを「正解」の如く押し付けられてしまえば、「話を聞いてもらえなかった」「指示をされるだけだった」という印象を持たれるのが関の山です。
先生の側ではそんなつもりはなくても、生徒の側での認識がそうなれば結果は一緒です。繰り返しになりますが、生徒が担任の先生を相談相手と認識できないようでは、様々なところにリスクが生じるばかりです。
まずは、しっかりと話を聞き、整理しきれていないところを見つけ、対話の中で掘り下げ、明確にしていくことに意識を集中させましょう。

❏ 日頃から期待を伝え、公平に接することが必須

手元のデータを調べてみると、「期待する行動」 と「公平な指導」 で肯定的に答えた生徒は、この質問にもYESと答える傾向にあります。

(サンプルサイズが15未満の集計区分は換算得点を非表示)

逆に、先生が考えているところがはっきり掴めず、公平に応じてくれるとも思えなければ、大事な相談を持ち掛ける勇気もわかないはずです。
少なくとも生徒意識アンケートにおけるこの項目での改善を図ろうとするなら、如上の2問にYESと答えてもらうのは必須要件のようです。

❏ 相談のきっかけを作る、先生方からの仕掛け

少々古いデータですが、「中学生・高校生の生活と意識調査・2012」によると、以下のような傾向が観測されているそうです。

  • ネット上だけの「友だち」が増えていく
  • 悩みごとの相談は友だちからお母さんへ
  • 父母は「やさしくあたたかい」「よくわかってくれる」「いろいろなことを話す」が過去30年で最多

1982年以来10年ごとに実施されている調査ですが、次回の結果にも注目したいと思います。
その一方、担任の先生を挙げる生徒は少数派。「相談しようにもつい身構えてしまう相手」「重大な選択に臨むときに助言をもらうのが先生」というのが生徒の側での一般的なイメージなのかもしれません。
そんな中、相談のきっかけを作るのはこちらの仕事だと思います。
日頃からの観察、あるいは生徒意識調査アンケートを回収するときの目視点検などを通じて「あれっ?」と感じた生徒には、過剰な構えを見せないように気を付けながら、積極的に声をかけて行きましょう。
担任の先生に声を掛けようとしたけど忙しそうなのでためらってしまったという生徒だっています。また、相談したいと思いながら、学校カウンセラーがどんな人か、どんな相談に応えてくれるのかも見当がつかなければ、「やっぱりやめておこう」ということにもなりかねません。
相談を受ける環境をしっかりと整えた上で、相談を受ける姿勢をきちんと示し、整えた環境を生徒の側にしっかり伝えていく「校内広報」にも力を注ぐ必要がありそうです。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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