先月の中旬に、大学入試センターから「大学入学共通テスト」における問題作成の方向性等と本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨についてとの発表がありました。
発表資料の冒頭には、
各教科・科目における問題のねらいや実施方法等については、これから11月に実施さ れる試行調査の分析・検証を経て、来年度初頭に正式に公表される予定(攻略)
とありますが、現時点での検討状況は把握しておきたいものです。
昨年11月の試行考査での出題には、作問技術上の問題点が指摘される部分はありますが、これらはあくまでも技術的な問題であり、出題方針そのものについては、上記の発表を見る限り、ぶれることなく議事が進んでいるように見受けられます。
❏ 知識に頼らずとも、読んで考えれば解ける問題
先生方にも試していただきたいのですが、ご自身の専門以外の科目を解いてみると、教科・科目に固有の知識に頼らずとも、問題文をきっちり読んで考えると正解できる問題がかなりの割合を占めるとお感じになると思います。
ところが、平成29年度試行調査で設問別の正答率をみると、思いのほか低い数字が並んでいます。
生徒にとって「見慣れないタイプの問題だった」から正答率が低くなったとの見方もあろうかと思いますが、テクストを自力で読んで理解したことに基づいて考えるという、当たり前のことを日々の学習の中でやらせていなかったという捉え方が妥当に思えます。
❏ 自力で読んで理解する力を養うことにもっと注力
教科書をきちんと読ませることや、参照型教材を徹底して使い倒すことで、テクストを自力で読んで理解する力の育成に、これまで以上に力を入れていく必要があると思います。
説明してあげないと生徒は理解できないと不安がる先生もいらっしゃいますが、本当でしょうか。
できない?やらない?やらせてない?でも申し上げましたが、「やらせていないからできないだけ」という可能性があるとしたら、余計な斟酌が生徒の成長にブレーキをかけているかもしれません。
上記報告書のなかには「 問題の中では、教科書等で扱われていない初見の資料等が扱われることもあります」と明言されています。
この一点を考えただけでも、教え込むより、調べさせて気づかせるというアプローチへの転換が必要なことは明らかではないでしょうか。
❏ 疑問を持ち、ひとつひとつ確かめていく姿勢も
大学入学共通テストでは、「正しいもの/誤っているものをすべて選べ」という設問が出題されそうですし、高大接続改革以降の入試では正解が一つに決まらない問題も増えてきそうです。
現代社会の第3問にあった「資金の需要と供給の変化に関する説明として適当なものを(5つのうちから)すべて選べ」という設問では、正答率はわずか17%です。
普段の授業から、教科書を読むときにも「どうしてこう言えるのか」と問いを立てて、自明なことでも一つひとつ確かめながら読ませる習慣があれば、多少入り組んだ記述でもしっかり正誤判定ができるはずです。
正解がひとつでない問題では、どこに着目し、どんな問いを立てるかで、解答の方針が決まります。
教科書など「正しいことが確かめられている」ような文章だけでなく、様々な意見や論評に触れさせて、「疑ってみること」「自分なりの問いを立ててみること」を学習させていくことが必要ではないでしょうか。
■ご参考記事:
新テストが何を求めるかを踏まえた授業を行うことは、生徒の進路希望を叶えるために必要であるのは言うまでもありませんが、この記事を書きながら感じたのは「ここで求められている力は、社会を生きていくために必要とされるもの」ということです。
如上の発表資料にしっかり目を通して、これからの授業設計と指導計画にどう反映させていくか、改めてしっかりと考えてみる必要があると思いました。