宿題や課題は、生徒の力を伸ばそうという先生方の気持ちの現れであるため、ときとしてあれもこれもと与えてしまい、膨張の一途を辿りがちです。こなしきれないほどの宿題には、生徒から「仕上げきることの喜び」を学習する機会を奪うなど様々なリスクがありそうです。
知識の拡張は、生徒の興味や進路希望によって必要となる範囲が異なるはずなのに、最大限の網をかけて全員に課しては、効果を上回る弊害を招きます。定着を図ることだけに目を向けては、インプットの不備に気づく機会や学びを深める機能を損ねる可能性も生じます。宿題や課題のタイプを認識した上で、バランスの最適化を図ることが重要です。
与えた宿題・課題は、それ自体がもたらした効果をきちんと測定し、選別していく必要があるのではないでしょうか。履行率と所期の目標達成という二つの観点でデータを取れば、作戦ミスと実行ミスの切り分けも容易になります。
2017/10/04 公開の記事をアップデートしました。
ニーズの違いを見極めず、最大限の網を掛けると…
知識の拡張範囲は進路希望に応じて複線的に
宿題には3タイプ~どれを中心に宿題を構成するか
副教材ベースの宿題は必要最小限に
授業で学んだことを使うタイプの宿題を中心に
必達、上位、挑戦の段階に分けた課題付与
学習時間の延伸を自己目的化しない
「やりかけ」の状態を作って履行率アップ
宿題・課題の履行状態×目標の達成状態
同じ課題を与えても事前指導によって結果は違う
作戦ミスと実行ミスの切り分けを
やらせたことはきちんと効果を測定する
アップデートに際しての追記:
これまで課してきた宿題・課題を引き上げることにはためらいもあろうかと思います。与えるものを減らしたことで生徒が受験に不利になったらという不安もあるでしょう。
しかしながら、ある時期に与える課題が過重になれば、仕上げ切らずに放置せざるを得ない生徒が出てきます。学びが次のステージに進んだ時にレディネスが整っていないのでは新たな問題を抱えます。
宿題・課題の一つひとつについて、きちんと効果を確かめることを習慣にして、生徒の学力/コンピテンシーの増大、学習方策の獲得、学ぶ意欲の向上といった実りのあるものを選び出していきたいものです。
卒業までの期間に与える課題の総量が同じであっても、配列や時期、取り組ませ方を工夫するだけでも、無駄を減らし生徒の負担を抑えることも可能です。カリキュラムのスパイラルを念頭に、どのように重ね塗りや拡張を図るかを念頭に置くべきです。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一