生徒を指名して発言させるのは、積極的で能動的な学習参加を促すとの意図による部分もあるでしょうが、やり方を間違えると、指名されていない他の生徒が思考と表現を止めてしまったり、発言は引き出せても、対話的で深い学びに繋がらなかったりすることもままあります。
各地の学校をお訪ねして授業を拝見していると、指名には実に色んなパターンがあります。昭和の時代からよくあるこんな方法も、令和となった今でもまだよく見かけます。
- 「今日は27日か。じゃあ、出席番号27の榎本さん」
- 「前回、吉田くんまで当たったね。じゃあ、次の和田さん」
- (ケースから番号札を引いて)「ジャーン、17番、原君かな?」
これらに共通する問題点は、指名する前に問いをクラス全体に投げかけて、そこで考えている様子に目を配り、生徒の頭に浮かんでいる思考を覗き込む「観察の窓」を開けるという段取りを踏んでいないことです。
答えを用意できていない生徒を当てても対話が止まるだけですし、ネットかどこかで手に入れてきた解答を読み上げるだけの「発言」をさせたところで、学びを深める効果はありません。
指名されていない生徒が発言する(=考えたことを言語化する)機会を与えられないことにも問題があります。
素晴らしい着想や思考を得ていながら順番が回ってくるまで黙っているしかなければ、当人も張り合いを欠くでしょうし、他の生徒はその着想や思考に触れることもできません。
学年が進むと発言が減るのを当然のことと考える向きもありますが、同じクラス(=集団が同じ)でも、次の時間に別の先生が授業を行うと、発問への反応も発言の出方もまるで違うもの珍しくありません。
学年が上がったこと、発達段階が違うというだけではその違いに説明がつかず、誤った指導を通じて発言しない姿勢を「学習」させてしまった可能性も疑ってみる必要もありそうです。
2015/11/05 公開の記事インデックスをアップデートしました。
指名順を決めると、ほかの生徒は学びを止める
発言したくても、順番が回ってくるまで待つ?
問いはクラス全体に投げかけ、反応をみて指名する
生徒に発言させることで得られる効果
指名→発言のパターンだけでは効率も悪い
生徒相互の刺激を狙うなら、プリントや掲示も活用
全員を発言の主体にするのが対話的な学びの前提
声が上がらないのは、そう学習させてしまった結果
指名されて答えられなかった生徒へのフォロー
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生徒の発言を拾い上げてこそ、キャッチボールに
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一