苦手意識を抱えていたり、学力向上感が希薄だったりする場合、授業への消極的な取り組みを続けてきた結果、これまで学んできたことがらへの習熟が不十分であることは十分に想定されます。
そのまま単元を進めてしまっては、次の学習目標の一つ一つをクリアしていくことが加速度的に難しくなるのは、当然ながら予想されることです。
実際に、授業評価アンケートの結果を見ていると、前学期に苦手意識が膨らんでいると、次のタームで指導の改善がなされ、伝達技術や活用場面の評価が上がっているのに、生徒の側での学力向上感だけが置いてきぼりになる様子がはっきりしています。
❏ 点数が取れていても安心はできない
仮にテストである程度の点数が取れていたとしても、“昔の貯金”(あるいは、その利息)でなんとかなっているだけで、“新しい学び”をあまり積み上げられていないこともあります。
ここでいう“貯金”は、知識や理解、手順への習熟といった結果学力だけではありません。受験勉強などを通じて、それまでに身につけた“覚え方”などもこれに含まれます。
本当のところがわかっていなかったとしても、記憶力を頼りに答えを覚え込んでしまえば、それを答案の上においてくるだけで点数は取れます。
しかし、学年が上がるにつれて、勉強に求められるものも変わってきます。
新しい学習方策を獲得したり、課題形成や解法立案力を身につけたり、あるいは協働への参加の仕方なども学ばなければなりません。こうしたステップを踏まずに来ても、最終的な結果だけを覚えきることができれば、テストで点数は取れてしまいます。
こんなことを繰り返していては、やがては綻びも出てくるのが当たり前――「学び方そのものを学べていない」 という状態であり、知識以外の部分での学力を前提とした、次の学習で十分な成果を上げられなくなるのも当たり前かもしれません。
遠からずテストの成績も下降線をたどることになります。
❏ 不安が感じられる状態なら
もし、前学期の授業アンケートで「苦手」「どちらかというと苦手」、あるいは「学力や技能の向上が感じられない」という回答が増えていたら赤信号です。
ここから、さらに崩れることがないよう、しっかりと“予防策”を講じて、新しい学期の授業に臨みましょう。
大丈夫だろうとタカをくくってはいけません。これから始まるタームで、学習成果を積み上げられなかったら、そのつけは後にもずっと残ります。
特に2年生は、11月前後に3年次の履修科目選択を迎えますが、そのときに「授業を受けて学力や技能の向上を感じるか」 という問いにYESで答えられる状態にしておかなけば、消去法での進路選択に拍車をかけてしまうことになりかねません。
伸びている実感が、挑む意欲を支える
実際の成績では、C判定まで残りわずか数十点というところに位置しており、「挑む気持ち」と「具体的な行動」さえ伴えば、志望校合格を勝ち取る可能性が十分にあるにも拘らず、簡単に志望を切り下げてしまう生徒を見かけることがあります。
その一方で、生徒による授業評価アンケートで、「授業を受けて学力や技能の向上を実感できる」という質問に対して肯定的な答えを選んだ生徒は、より高い割合で、最後まで第一志望を変えずに難関突破に挑み続けている様子がデータから窺えます。
予防策には、「これだけやっておけば、大丈夫」 という万能薬はありません。幾つかの対策を複合的に講じてはじめて効果を得ます。
次稿では、各地の学校で試していただいたうえで効果が認められたものを含め、いくつかの方法をご提案をしたいと思います。
その2に続く