生徒が互いに刺激し合い、共に成長するクラス

相互啓発が働き、互恵意識で結ばれたクラスの中でこそ、生徒は様々な活動に生き生きと取り組むことができ、その中で主体性や多様性、協働性などを獲得していきます。
別稿「教科学習指導の土台はホームルーム経営」でもお伝えした通り、生徒が互いに刺激し合い、共に成長するクラスを実現できるかどうかは授業の成否(学力向上など)にも大きな影響を与えます。

 

2015/06/12 公開の記事を再アップデートしました。

生徒意識アンケート⑥ 刺激し合い共に成長するクラス
私のクラスは、生徒が互いに刺激し合い、ともに成長している

良好な人間関係は自然発生するものではなく、コミュニティのメンバーが共通の目的に協働で取り組む中で築かれるものだと思います。
係や当番の仕事、あるいは授業内外でのグループワークなどの充実を図り、生徒が互いをよく知り、自分の役割を見つけ、その担い方を学べる環境を整えることこそが、この質問への肯定的な回答を増やす鍵です。

❏ 課題解決への協働が、良好な人間関係を作る

共通した目的をもって協力し合う場面があるからこそ、生徒は自分の果たすべき役割を見つけて主体性を獲得しますし、意見の異なる相手との相互理解を結ぼうとする努力の中で多様性を学びます。
クラスでの活動と言えば、係の仕事や生徒会活動などがすぐに思い浮かびますが、それだけではありません。生徒が最も長く過ごす時間は、言うまでもなく各教科の授業です。
如上の質問は、クラス単位で集計される「生徒意識調査アンケート」に含まれるものですが、回答分布を決めるのはクラス担任の先生の努力や工夫だけではなく、ホームルーム単位での授業を担当されている各教科の先生方にも期待されるところが小さくありません。
教え合い・学び合いなどのグループ学習、あるいはチームで取り組む調べ学習とその発表などは、協働で課題解決に取り組む場面として、様々なバリエーションをもって多く用意できるものだと思います。
互いの考えを理解し、より良い解決策を見つけようとする努力の中で、自らの考えを表現する力、他者の意見に耳を傾ける力も育まれます。
また、様々な場面を経験する中で、そのときの役割に応じた行動様式やリーダーシップ、フォロワーシップの獲得も進むものと思われます。

❏ 協働の場をどれだけ創出できるか~関係性構築のカギ

良好な関係なしにはペアやチームでの活動は成立しませんが、活動がなければ関係を構築することも協働の資質を獲得することもできません。
何やらニワトリと卵のようですが、指導に当たる側で手を付けられるのは「どんな活動の場を作るか」に限られるのではないでしょうか。
生徒同士に限らず、人間同士の関係性に外から直接働きかけるのは容易ではありません。「仲良くしなさい」と言われて、簡単にそうできるなら誰も苦労しないはずです。
学級担任であれば、学校行事や係や生徒会活動を通じて、教科担当者なら授業の中に協働と対話の場面を積極的に作り出すことを通じて、学びのコミュニティ作りを図っていくことになります。
人間同士のことなので、生徒にもそれぞれ苦手な相手がいますし、どんなに仲良しでもずっと同じ相手ばかりでは刺激も薄れてくるはずです。
ペアや班は固定せず、頻繁にフォーメーションを変更していくのが好適です。様々な相手と組むことで、場に応じたふるまい方を学び、状況に合った行動を選択する力を身につけられるのではないでしょうか。

❏ 相互啓発を働かせる仕掛けは十分か

生徒が協働で課題解決に取り組む中でこそ、互恵意識が育まれたり、主体性・協働性・多様性の獲得が進んだりするのは、既に申し上げた通りですが、もう一歩踏み込んで、生徒同士の刺激(相互啓発)をより強く働かせる工夫も取り入れたいところです。
協働を経験させても生徒一人ひとりが重ねていける気づきや学びは断片的なものになりがちです。クラスのメンバーそれぞれが気づいたこと・学んだことをシェアすれば、それが全体の学びを膨らませ、より多面的なものになるはずです。
ポートフォリオに残されたリフレクション・ログから好適な記述を抽出して、クラス内でシェアすることなどは、指導に当たられている先生方にしかできないことですが、そこには生徒一人ひとりのより大きな成長が期待できます。
学校行事や体験学習のたびに、生徒には気づきをきちんと言葉にさせ、揮発させないようにするとともに、内省を深めさせていきましょう。
ホームルーム単位で行われている日々の授業では、答案やレポートといった個々の生徒の思考の結果も、積極的にシェアしたいもののひとつ。周囲の考えに触れて、学びを深くし、視野を押し広げることは、「互いに刺激し、共に成長する」ことの実現に他ならないはずです。

❏ クラスや学年間に見られる違いからも多くの知見が

冒頭の質問でアンケート調査を行っていると、当然ながら、クラスごとの集計値や学年ごとの回答分布に違いがあります。
最も優れたクラスでは肯定的な回答が9割を超えるのに対し、最も低いクラスは5割がやっとということも少なくありません。
高い肯定回答率を示した学年やクラスには、そのような結果を得るだけの指導ノウハウや取り組みがあったはずです。
継続的に調査を行っているなら、集計値や回答分布における前回からの変化で、そこに至るまでの指導の効果も測定できます。
大きな改善/指導成果を得たクラスを抽出し、そこでの実践を着実に共有・継承する一方で、期待ほどの成果が上がらなかった取り組みを整理していけば、学年/学校全体での指導改善は着実に進んでいきます。
授業改善の場合(cf. 優良実践の共有~授業評価の結果を活かして)と同様に、高い評価を得た集団(学年やクラス)をデータを使って見つけ出し、なぜ高い評価を得られたのか、その理由を探っていくことから、改善に向けた先生方の協働を始動させましょう。
共有されたノウハウは、先生方の協働で更なる高みにブラッシュアップしていくこともできるはずです。

授業のこと以外にも尋ねておくべき“生徒の意識”
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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