年が明けていよいよ「ゼロ学期」です。期間が短いわりにこなすべき校務が多く、どうしても慌ただしくなりがちですから、春に向けた課題/タスクのたな卸しを行い、優先順位をしっかり定めた工程表に落とし込みたいところ。先ずは「To Do リスト」を作るところからでしょうか。
4月からの教育活動を振り返って、シラバスや進路の手引きなどに朱を入れる必要もありますし、年間行事予定の見直しや学校広報の年間計画作りなども、期限を決めて着実に進めていかないとアッという間に年度末を迎えて時間切れになってしまいそうです。
計画に沿った教育活動を始めたあとに、想定以上にリソースが必要になったり、所期の成果が得られず、計画の修正が必要になることもあり得ます。「調整の余地」も組み込んで指導計画を起こしましょう。
2019/12/10 公開の記事を再アップデートしました。
❏ シラバスや進路の手引きなどへの朱入れ
シラバスや進路の手引きは、ときとして「記載されている内容」と「実際に行われていること」が一致しなくなっていることがあります。
年次更新が重ねられる中で生じる現象ですが、生徒はもとより、異動転入してくる先生方にとっても、書かれていることと実際とが違っていては、混乱を招くばかり。全体を正しく見渡せる状態を保ちましょう。
生徒への指導を行いながら、様々な工夫を凝らしたり、手順の変更を行ったりするのは当然ですが、目の前の教育活動に集中するあまり、書面が置き去りにされては、「実際と記載のズレ」は拡大の一途です。
生徒や保護者が目にしたり、ホームページに掲載されている情報は特に念入りな点検が必要です。
来年度版の起草作業に取り掛かる前に、現行版への朱入れを先行させましょう。教育活動は、分掌、学年、教科といったそれぞれの組織が独立して進めている部分も大きく、当事者でないと変更がなされたことすら知らない箇所もあるはずです。
現行版への朱入れという第1工程を経て、来年度の教育活動で新たに計画していることを加筆(第2工程)していくと、あちらこちらに矛盾や不整合が生じていることに気づくものです。
第2工程を経た「来年度版(案)」を改めて通読し、グランドデザインに沿ったものになっているかの点検(第3工程)を行い、組織内/組織間での再調整(第4工程)を行うことになりますが、それぞれの工程にはけっこうな手間と時間(工数)がかかるはずです。
各工程の所要時間を余裕をもって見込み、ガントチャートに落とし込んでみると、進行スケジュールにはあまり余裕がないかもしれません。
❏ 個々の指導の関連付けと目標の確認
様々な工夫を凝らした教育活動も、相互の関連付けが弱く、個々の指導が単独で完結してしまっていると期待した通りの効果は得られません。
それぞれの指導機会で目的とするところ/期待される効果を踏まえて、指導の内容と配列に改めるべき部分がないか点検しておきましょう。
生活、学習、進路の三領域で、指導の経過の中で段階的に到達を目指していく状態をきちんと書き出しておかないと、個々の指導の位置づけが不明確になりがちです。先生方の目線合わせもできませんし、分掌、学年、教科の各立場からの指導もちぐはぐなものになります。
足りないものは加えなければなりませんし、カレンダーに落としてみて指導時間という枠からはみ出すようなら、優先順位に基づく思い切った取捨選択が必要になります。走り始めてからでは切り落としが全体のバランスを欠く要因になりますので、計画時点での判断こそが命脈です。
個々の指導の目標は、定期的に、学校の教育目的や指導方針、校是、さらに建学の精神に立ち戻って、見直しと再設定をすべきです。
今年は新課程の完成年度。新課程への移行前に行った新しい設計が妥当だったか検証を行い、今後の教育活動の土台を固めるべき局面です。
また、計画が狙い通りに成果を得るには、実際の指導に当たる先生方のレディネスを調えることも不可欠です。指導機会の前には目線合わせや指導ノウハウの共有を図る必要がありますが、年間計画/行事予定に、教科会や研修会の日程がきちんと組み込めているか確認しましょう。
❏ 校内外に向けた広報/WEBサイトの更新計画
年度末を控えて学校評価アンケートも行われていると思いますが、その結果をどう生かすかも、しっかり考えておきたいことの一つです。単に実施するだけならコストの無駄遣いかもしれません。
集計結果を用いて、これまでの教育活動が所期の成果をどこまで収めたか、校内外の声に学校がどこまで応えられたかを見極めたら、遅滞なく次の行動を起こしましょう。集計完了から来年度の計画確定までをどのような手順で議論を進めていくか、後手を踏まずに行きたいものです。
並行して、学校ホームページの年間更新計画もこの機会に再点検しておくことをお奨めしたいと思います。
せっかく意欲的な取り組み/教育活動が行われ、十分な成果も得られていたとしても、学校広報を通じてその姿や実りを伝えられなければ、学校の教育活動に対する理解と共感は膨らんでいきません。
受験生やその保護者に届かなければ、生徒募集の改善にも繋がらないでしょうし、学校の教育活動への協力者になり得る、地域や在校生保護者にも、しっかりと成果を伝えて、理解と共感を得るべきです。
また、学校広報は生徒募集のためだけでなく、「校内に向けて」もしっかりと行うべきものです。校内の先生方が他の分掌/学年、独立して動いているプロジェクトチームの取り組みを良く知らなければ、相互の連携や協力を欠いてちぐはぐな動きになり、相乗効果の発現も妨げます。
ゼロ学期を迎えた今、そこで行うべきタスクの数々が、きちんとリストアップできているか、まずはしっかりと点検しましょう。To Do リストの作成、工程の洗い出しとガントチャートへの落とし込みという手順を踏まないと、大事なことが実行から漏れてしまう可能性が膨らみます。
もう一つ忘れてならないのは、生徒にもこれまでの学びを振り返らせ、新しい年度に向けてどのように自分をリビルドしていくかを考えさせることです。ゼロ学期のうちに、進級後/進学後の学びへの備えを整えさせる指導も着実に進めさせたいところです。
- 生徒が学んできたこと、経験してきた学び方の確認を
- 現2年、現1年に対する、進級を見据えたゼロ学期指導
- 志望理由を言葉にしてみる~ゼロ学期の始まりに
- 卒業を前に改めて考える、大学に進んで学ぶ理由
- 年末に行わせる「4月からの学びの振り返り」
- 模試の結果を正しく振り返る(学習行動の改善)
- 生徒は何ができるか~指導計画立案の前に確認
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一